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第26話:見ているだけでは
次の練習の日、美咲は何度も玲奈の方へ視線を向けていた。
今までと同じように遠くから見るだけで終わるのか、それとも何かを変えるのか。
自分の中で答えは出ていない。
それでも、今日は少しだけ違っていた。
何度も迷いながら、ゆっくりと距離を詰めていく。
足音がやけに大きく感じられ、周囲の視線が気になって仕方がない。
あと数歩。
それだけで、声をかけられる距離。
なのに、その一歩が踏み出せない。
何を言えばいいのか分からない。
急に話しかけて、不自然に思われないか。
迷惑に思われたらどうしよう。
そんな考えが一気に押し寄せ、足を止めた。
玲奈は変わらず練習を続けている。
その背中は遠くないはずなのに、手の届かない場所にあるように感じた。
結局、美咲は何もできなかった。
来た時と同じように、静かに距離を取る。
胸の奥に残ったのは、どうしようもないもどかしさだった。
見ているだけでは届かない。
そんなことは、ずっと前から分かっていたはずなのに。
それでも動けなかった自分が、何より悔しかった。
その感情だけが、じわじわと心の中に広がり続けていた。




