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第25話:言葉にならない差
練習が終わったあとも、美咲はその場を離れられずにいた。
さっきまでの玲奈の動きが、頭の中で何度も繰り返されている。
同じ振り付け。
同じ音。
同じ空間。
それなのに、どうしてあんなにも違って見えるのか。
一つ一つの動きだけを切り取れば、大きな差があるようには思えない。
むしろ、自分だって同じようにやっているはずだった。
けれど、流れが違う。
繋がりが違う。
そして何より、“見え方”が違う。
玲奈の動きには、迷いがなかった。
次に何をするかを考えている様子すらなく、ただ自然に体が流れていく。
対して自分はどうだろう。
一つ動くたびに確認し、間違えないように気を張り、次の動きを頭の中でなぞっている。
その差はほんのわずかなはずなのに、積み重なることで決定的な違いになっていた。
技術だけではない。
経験だけでもない。
もっと曖昧で、けれど確かに存在している“何か”。
それが分からないことが、何よりも悔しかった。
言葉にできない差は、埋め方すら分からない。
それでも、美咲は目を逸らせなかった。
分からないままでもいい。
理解できなくてもいい。
ただ、あの場所に近づきたい。
その想いだけが、静かに胸の奥で燃え続けていた。




