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虹の彼方  作者: yukko
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父と子……そして母

私が駅長室に入ると、康稀が康介と手を繋いで楽しそうに話していた。

無事な姿を見られて私はホッと胸を撫で下ろした。

駅長に「この度は息子がご迷惑をお掛け致しまして、誠に申し訳ございません。」と深く頭を下げた。


「いいえ、これも業務のうちです。

 お気になさらずに………。」

「本当にありがとうございました。」

「………お母さん……。」

「ひろちゃん………無事で良かった………。」

「お母さん、ごめんなさい。」

「ばぁばも、社長さんも、店長さんも……皆、心配したのよ。」

「………ごめんなさい。」


泣きながら「心配した。」と言った私に康稀は俯いて「ごめんなさい。」を繰り返した。

その時、康介が私に話し掛けた。


「もう帰らないと、ご迷惑になるから………。」

「あっ! そうね。」

「駅員の皆様、今日は本当にありがとうございました。

 また、お礼のご挨拶は後程させて頂きます。」

「いえいえ、これは業務の一環ですので、どうかお気になさらず。

 康稀君。

 これからはチャンとお母さんに話して、出来れば家族で電車に乗って下さい。

 いいかな?」

「はい。」

「じゃあ、元気で!」

「駅長さんも!」

「康稀君、ありがとう。」

「うん。」

「ありがとうございました。」

「ありがとうございました。

 ひろちゃん、ご挨拶は?」

「ありがとうございました。さようなら!」

「さようなら。」

「失礼致します。」


駅長室に出て直ぐに康介が私に言った。


「ひろくんを今日、僕の家に泊めてもいいかな?

 今日は僕に会いに来てくれて……。

 泊まりたいらしいんだ。

 学校へは明日、僕が責任を持って連れて行くから……。

 どうだろうか………。」

「……………………………。」

「お母さん、僕、お父さんちにお泊りしたい!

 お願い。お泊りさせて!」

「ひろちゃん、今日を出て行ったのは、何故?」

「………あのね………えっとぉ……怒らない? お母さん。」

「怒らないわよ。お話しして頂戴。」

「………お父さんちに行きたかったの。」

「行きたかったの、ね。

 お父さんの家にお泊りしたかったから?」

「………うん、そうだよ。」

「…………そうなのね。」

「お母さん、お願い!」

「…………分かったわ。」

「いいの?」

「仕方ないでしょう。でも、二度と一人で出掛けないで!

 そのお約束、出来る?」

「出来る!」

「じゃあ、今日は急だけど………木元さん、お願いします。」

「ありがとう。ひろくんと一緒に居られるのは、両親も喜ぶよ。」

「明日の準備………はっ!…………明日は遠足だったよね。」

「うん、そうだよ。だから、水筒持って来たよ。」

「お弁当が要るじゃないの。」

「それは僕が用意するから………。」

「貴方が?」

「作れるよ。キャラ弁は作れないけど……。」

「キャラ弁?」

「ポケモンとか海苔を切って作るらしい。

 キャラ弁でなくてもいいかな?」

「いいよっ! うわぁ~~~っ、お父さんが作ってくれるお弁当!」

「期待するなよ。」

「うわぁ~~~っ!」


康介と康稀の会話を聞いた私は、ほんの少し嫉妬を感じた。

康介が私を見て「これから家に来ないか? そっちに帰るより、うちの方が近いし、ひろくんと一緒に晩御飯、食べないか?」と言った。

康稀は「お母さん! 一緒がいい!」と何度も言う。

私は拒否出来なくなった。

真由子に電話した。


「ひろくん、無事に………。」

「そう……良かったわ。」

「今晩、ひろくんは木元さんの家にお泊るすることになったの。

 私も晩御飯を頂きます。

 頂いたら、直ぐに帰るから……。」

「分かったわ。晩御飯は今日は寂しく一人で食べるわ。」

「あ…………私、今から帰るわ。」

「帰らなくっていいわよ。冗談よ。

 実は隣に社長さんご夫妻がおられますのよ。

 だから、3人で食べるわ。」


真由子はスピーカーにした。


「そうだぞ! こっちは大人3人で晩餐だ!」

「社長の声が聞こえるわ。」

「そうよ、心配して来てくれたのよ。だから安心して。」

「分かったわ。」

「もうね、ひろちゃんの無事を知って、今、祝杯だとか言ってるもの。

 夫婦二人で………。」

「加納君、君もお泊りしてきていいぞ。 許可する!」

「社長、もう酔っぱらってるんですかぁ~?」

「既に嬉しさで酔ってるのかもしれないわね。」

「社長! 専務! ご心配をお掛けしました。康稀は無事です。」

「今度、ひろちゃんにお詫びして貰うわ。」

「伝えておきます。」

「うふふっ……本当に良かった………。」

「ありがとうございます。」

「じゃあ、こっちは祝杯を挙げるから、そっちはそっちでやっておいてね。」

「お養母(かあ)さん……心配掛けてばかりでゴメンなさい。」

「今回は私の責任が遥かに大きい! ごめんね。」

「ううん………ありがとう……お養母さん…。」


康稀の嬉しそうな声が聞こえて来た。


「お母さん! 行くよぉ――っ!」

「待って!」


社長の嬉しそうな声が聞こえた。


「おお―――っ! ひろちゃんだぁ―――っ!」

「本当にひろちゃんの声が聞こえたわ。」


真由子がその声を聞いて安堵の息を洩らす。


「良かった……行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」


私は康稀と康介の元へ駆け寄った。

康稀は生まれて初めて父・康介の家に母・私と向かうのだ。

嬉しそうな様子を見た私は罪悪感が募っていきそうだった。康稀に対する罪悪感が………。

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