康稀の大冒険②
私と真由子、そして店長と社長夫婦が康稀の無事を祈っている頃、康稀は電車で康介の家に向かっていた。
降りる駅の名前もちゃんとメモに書いている。
康稀は【完璧に準備】している。
急に思いついたのではなかった。
随分前から幼いながら計画していたのだ。
降りる駅に着いた。
⦅ここだ! 降りなくっちゃ!⦆と康稀は降りた。
それから、乗り換えた。
完璧に乗り換えられて、康稀は自信に満ち溢れていた。
それまでは不安で仕方なかったのだ。
乗り換えて次に降りる駅が⦅お父さんの駅だ!⦆と注意して車内放送を聞いていた。
ただ、急に目の前のベビーカーの中の赤ちゃんが大声で泣き出した。
康稀は驚きながらも赤ちゃんを泣き止めさせようと、変顔を繰り広げた。
すると、何故だか赤ちゃんが泣き止んだのだ。
それからは、康稀が変顔する度に笑うようになった。
電車の中は、微笑ましい光景を見た人たちから「可愛いわねぇ~。」「いいお兄ちゃんね。」などという声が聞こえて来ていた。
康稀は恥ずかしかったけれども、少し誇らしいような気持ちになっていた。
その間に降りる駅を過ぎていたのだが、康稀は気付かなかった。
康稀は赤ちゃんが降りた駅まで、自分が降りる駅のことを忘れてしまっていた。
それから、駅名を注意して聞いていたが、その駅名は放送されなかった。
そして、終点の駅に着いてしまったのだ。
その時、初めて康稀は涙が出そうになった。
⦅ここ、どこ? 怖い!⦆
終点で社内に残っている康稀を駅員が見つけた。
「僕、どうしたの?」
「お父さんの駅……分からない……うわぁ~~~ん。」
康稀は怖くて泣き出した。
駅員は駅長室へ連れて行った。
康稀が完璧に準備した物の中にスマホがあり、首から下げているのに気付かないほど不安が募っていたのだ。
その頃、私も不安で押し潰されそうになっていた。




