休日参観①
小学生になった康稀は沢山友達が出来たようだ。
毎日、嬉しそうに学校へ行っている。
土曜日に「休日参観」が行われる。
康稀は「お父さんとお母さんに来て欲しい。出来ればお祖父ちゃんお祖母ちゃん、それからばぁばにも来て欲しい。」と言った。
ただ、そんな大人数では無理だと康稀に話した。
すると、「じゃあ、お父さんとお母さん、来て!」と言う。
私は出来るだけ康介に会わないようにしてきた。
それを覆さないといけないのだ。
悩んだ。
梨華に相談した。
「二人で行って来たらどうかな?」
「でも……会うのが怖い。」
「それって、好きだからでしょう。今も……。
あ………ずっと、か。」
「………………。」
私は私の心の奥底を曝け出されてしまった。
言葉も出なかった。
「行ってきなよ。現地集合でもいいからさ。
ひろくんの為、でしょ。
それに、もう自分の心に蓋しなくてもいいんじゃないの?
梓が亡くなって三回忌も終わったんでしょう。
あの家を出て、実家で暮らしてるんでしょう。
だったら、もういいじゃん。
二人は、ひろちゃんの両親なんだからさ。
それは、産まれた時から最後の時まで変わらないよ。
勇気を出しなよね。
あの親に言えたんでしょう。縁を切ったって!
あの時の勇気を、ひろくんの為に、ね。
まぁ……何よりも自分の為に勇気を出しなよ。
参観だけで、即復縁じゃないんだからさ。」
「…………………。」
「自分の気持ち、いい加減認めたら?
その上で、どうするかは、あちら次第でしょう。」
「無理なこと言わないでよ。捨てられたのよ。復縁なんて有り得ないわ。」
「それは……分からないわよ。
まぁ、あの当時は腹が立って絶対に許すまじ!って思ったけどね。
でも、今のあの人見てるとさ。
大切にしてるじゃん。ひろくんのことも、杏のことも……。
そうでしょう。
会いたくないって言った杏の気持ちを大切にしてるでしょ。
会わないようにしてくれてるでしょう。」
「……うん。」
「だから、もう一度って有りだと思ったのよ。
色々言ったけど、参観は両親が揃うだろうから、他の子達……。
ひろくんも両親が揃って欲しいのよ。
それは叶えてあげたら?」
「他の子……そうよね。そうだわ。
ありがとう、梨華。」
「いいえ、うちも子どもが産まれましたし……。
これから、色々アドバイスをお願いね。」
「こちらこそだよ。ありがとう、梨華。」
梨華は思った。
⦅元の鞘の戻ったら、杏もひろくんも幸せだと思うんだけどな。
あ……でも難しいか……寝取ったのは妹だもんな。
「mariage blanc」だったけ?
白い結婚………。
あの妹との結婚、白い結婚じゃないし、な。
でも、後悔してそうなんだけど……あの寝取られ康介くん。
梓と結婚したこと……。
私は……杏が、ひろくんと幸せになってくれればいいんだけど……
いつか父親と一緒に暮らせないこと話すんだよね。
それが怖いなぁ………。⦆
私は康介に休日参観をメールで伝えようとしたら、その前に康稀が電話で伝えていた。
「うん、そうなの。お父さん、来てくれる?」
「お母さんと相談するね。」
「………絶対に来てね。」
「分かった……お母さん、居るかな?」
「居るよ。」
「電話代わってくれる?」
「うん。」「お母さぁ~~ん、お父さん、電話だよ。早く早く!」
「はいはい、今行くから……。」⦅深呼吸して……。⦆「………もしもし。」
「杏?……さん、ひろくんから聞いたんだけど。」
「休日参観のこと?」
「うん、僕に来て欲しいって言うんだけど……いいのかどうかって思って……。
駄目だったら、仕事だって言うよ。」
「ううん、来てあげて。あの子、喜ぶから……。」
「そう? ありがとう。
………あのさ……ひろくん、最近、僕のことお父さんって呼ぶんだけど……。」
「教えたのよ。
小学生になったらお兄さんになるから………。
お父ちゃんじゃなくてお父さんって呼ぼうね、って。」
「そうなんだ。ちょっとお兄さんだよね。」
「ええ、ちょっとお兄さんなの。
詳しくは、メールを送るわ。」
「真由子さんから送って貰えばいいよ。」
「………私から直接送るわ。」
「えっ? いいのかな?」
「……ええ、送るから………。」
「じゃあ、僕のアドレスは……。」
「お養母さんに聞くわ。」
「お養母さん?」
「あ……私、叔母の養女になったから……。」
「それは知ってたけど、呼び方変えたんだね。」
「ええ、私の養母ですから。」
「そうだね…………あっ、僕のメールアドレス、変わってないから……。」
「そう……なのね。」
「削除してなかったら……そのまま……だよ。」
「………うん、分かった。」
「ねぇ! お母さん、まだぁ? お父さんとお話するんだから、早く代わって!」
「はいはい、あの」
「聞こえたよ。」
「代わるわね。」
「うん。」
「もう! お母さんったら! 早く代わってって言ってるのに!」
「ごめんね。」
「ひろくん、もしもし?」
「あっ! お父さん! あのね……参観日来られる?」
「行くよ。」
「本当?」
「本当だよ。」
「やったぁ―――っ!」
康稀はそれから長々と父親との電話での会話を楽しんだ。
真由子が私の耳元で「両親が揃って参観へ行くのね。」と言った。
そして、「ひろちゃんにとって、それが一番だわね。」とも言った。




