不倫相手
木元梓が亡くなってから、弁護士を通して康介は羽佐間翔也に合って話を聞きたいと頼んでいた。
羽佐間翔也の怪我が癒えてから弁護士事務所に「会います。」と連絡があった。
弁護士同席の上で弁護士事務所で康介は翔也に会った。
「は……初めまして。羽佐間翔也です。」
「初めまして、今日はわざわざ来て下さり誠にありがとうございます。
お身体は如何ですか?」
「あ! はい、もう仕事に行ってます。
あの………。」
「はい?」
翔也は急に土下座した。
「申し訳ありません。結婚されてたと知らなかったんです。
本当です! 嘘、吐いていません。」
「羽佐間さん。
私は貴方を責めたくてお会いしたいとお願いしたわけではありません。」
「えっ?」
「どうか、頭を上げて下さい。
お願いです。ソファーに座って下さい。」
弁護士が翔也を立ち上がらせて座らせた。
「お伺いしたいことがあります。」
「はい。」
「何時、どんな風に妻と知り合われたのですか?」
「マッチングアプリです。2ヶ月ほど前に知り合いました。
あ……あの事故から2ヶ月ほど前です。」
「マッチングアプリ……。」
「はい。」
「羽佐間さんの前での妻は、どんな感じでした?」
「どんな感じ?」
「あぁ………そうですね。楽しそうだったとか、強請ったりとか……。」
「買いたい物が多いと言ってました。
強請られることは多かったです。
プレゼントしたら、その時は凄く可愛いんです。
ずっと微笑んでくれて、凄く嬉しそうで……楽しそうでした。」
「そうですか……。」
「本当に済みません。事故のことだけじゃなくて…もう全て済みません。」
「………いいえ、多分、羽佐間さんも僕も妻にとっては同じだった。
それが分かって良かったです。ありがとうございました。」
「あ………いいえ、そんな……本当に申し訳ありませんでした。」
羽佐間翔也に会ったことで、康介は梓という女性を選んだことの後悔を深めた。
⦅梓、君って人は……こんな人間だったんだ。
男は羽佐間翔也だけか? 他にも居るんだろうな。
梓のスマホの中にその答えはある。⦆
康介は自宅に帰った。
残されたスマホから何も確認出来ない。
画面が割れて壊れた梓のスマホを見た時に思い知らされた。
結局は何も知ることが出来ないのだと……。
そして、ふと浮かぶ。
あの別れの日の杏の顔が、涙が、去っている後姿が……。
もう取り戻せない。
⦅僕は君の本質を見抜けずに腑抜けになった。
腑抜けになって………杏を捨てた………。
僕は僕のことを一番許せない。⦆
杏との日々は穏やかだった。
あの日々が、どれほど大切な日々だったか……今、心から幸せだったと思う。
「杏……君は幸せだろうか。 あれから、どうしてた? 今どうしてる?」
思わず口から出た康介の言葉だった。




