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虹の彼方  作者: yukko
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梓の葬儀

梓の葬儀が執り行われた。

ひっそりとした葬儀だった。

梓の結婚披露宴に来ていた友人は一人も来なかった。


「……お葬式に行かないのは良くないかもしれないけど行かない。」

「友達じゃないし……梓のこと嫌いだし。」

「披露宴にも行きたくなかったけど、行かないと後が大変だから……。

 お葬式、行く義理も無いし……。」


一人だけ高校の時の同級生が来た。

その女性が石谷直樹と百恵に言った。震えながら蚊が泣くような消え入りそうな声で………。


「わ……私、梓さんに虐められてたんです。

 怖かったけど、今日来ました。

 今日は本当に亡くなったか知りたかっただけです。」

「何だとぉ―――っ!」

「出て行け! 私の大切な梓を悪く言う奴は出て行け!」

「わ……私、女です。奴じゃないです。」


終始、小さな震える声だった。

――奴じゃない。――その一言を残して梓に虐められていたと言った女性は帰って行った。

石谷家で一番年長である直樹の伯父が「儂らも来たくなかった。」と言い、直樹は激怒した。


「なんてこと言うんだ! 伯父さん!」

「お前は変わらんな。梓ばかり可愛がりおって……あの子を真面に育てられんで!

 姉の婚約者を盗るような子に育ておって!」

「伯父さん!」

「あんな結婚式、親族の誰が行った?

 誰も行かなかったのだろう。

 誰も心から『おめでとう。』とは言えん。杏は泣いておるのに……。

 今日は葬式だから来た。

 せめて、お前はこれ以上恥をかかんようにしなさい。

 あんな風に人様を怒鳴りつけるもんじゃない!」

「伯父さん! 帰ってくれ!」

「帰るに決まっておる!……真由子、話がある。付いて来なさい。」

「はい。」


康介の両親は来なかった。

既に康介とは疎遠になっていたからだ。

親族も帰ると、木元梓の初七日も何もかも、直樹と百恵、そして康介だけだった。


**********


伯父の後を付いて行った真由子は、伯父から「車で送るから乗りなさい。」と言われて、伯父の家の車に乗った。

車は叔父の孫が運転した。


「真由子、お前、杏の行き先を知っているんだろう。」

「伯父さん、お見通しでしたか。」

「今まで何度、誰が聞いてもお前は口を割らなかった。

 急に話す気になったのは、直樹か? あれの態度か?」

「いいえ、兄さんは全く関係ありません。

 第一……杏が何処に居ようが、何をしようが、気にも掛けない兄です。

 梓だけ居たらいいんです。」

「そうだな、お前が何度も訴えていたが……。

 まさか、自分の子を……姉妹間で差をつけるとは思わなんだ。

 だから、梓の挙式披露宴には行かなんだ。

 親族は皆同じ思いよ。」

「そうでしたら、心強いです。」

「それで、どうして言う気になった?」

「杏は私の養女になりました。」

「養女!……良かったのかもしれんな。

 それで、杏は元気か?」

「はい、元気ですし、母になりました。」

「!………今、なんと言うた?」

「母になりました。」

「結婚したのなら、何故、教えてくれなんだ!」

「未婚で子どもを産みました。」

「未婚!」

「伯父様、血圧が上がります。」

「上がるようなことをお前が言うたのだぞ。

 何処のど(・)い(・)つ(・)だっ! 杏を身籠らせて逃げた奴は!」

「杏は婚約していたでしょう。」

「まさか………。」

「そうです。木元康介さんの子どもです。」

「それなら、あやつに責任を取らせれば良かったのに!」

「杏は一人で産むと決めました。

 私は、あの子を支えたい、それだけです。」

「……杏が決めたことか………真由子、杏の子の名前は?」

「私の養女になったので、杏の名前は加納杏、子どもは男の子で康稀(ひろき)。

 加納康稀(ひろき)です。 

 それはもう! 可愛いのよ。伯父様。

 見て見て! ひろちゃん……可愛いでしょう。

 これも見てよ。もう可愛いんだから……。」

「!……可愛い! 可愛すぎるくらい可愛い。」


それからの車の中はスマホに保存されている康稀(ひろき)の写真を見せる真由子と、見て目尻を下げる伯父の歓喜の声で満ち溢れていた。

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