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神様、息子が可愛くて仕方ない  作者: ゆめ@マンドラゴラ
第一章 神様、父親になる

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9/11

第8話 神様、息子を病院に連れて行く

 アルバイトが初出勤する日。

 春日は理央を抱き、朝の庭を歩いていた。


「理央、今日は定期健診の日だな」

「あー」

「注射かぁ、前回も派手に泣いたよなぁ」

「キュ~」


 一緒に散歩していたマンドラゴラが、心配そうに声を上げた。

 スライムも声なく震えている。


「鎮静魔法とか習得しとけば良かったなぁ」

「キュ!」

「促進系なら得意なんだが……ごめんなぁ、理央」

「あぅ」

『神とは何でもできると思っていました』

「異世界にはそもそも予防接種なんてないんだよ」


 受ける予防接種の多さに、思わず理央を抱きしめて震えたほどだ。


『病気になった時はどうしていたのです?』

「薬草とか組み合わせて頑張ってたよ」


 その辺の詳しいことは分からない。

 だって春日が滞在していた国では疫病は秒殺されていたから。


『そろそろ時間ではありませんか?』

「まだ八時前だぞ」

『何時に打っても泣くことに変わりはありませんよ』

「はぁぁ、理央、頑張ろうなぁ」

「あぅー」

「キュッ」

「分かったよ。行けばいいんだろ」


 マンドラゴラの声に背中を押され、春日は渋々庭をあとにした。

 スライムも全身を弾ませながら見送りについてきた。


『診察券はお持ちですか?』

「大丈夫。現金も確認した」

『ハンカチは』

「理央専用の柔らかい素材だろ、大丈夫」


 いっそ病院が遠ければ猶予もあるのに、理央のために同じ建物の中に誘致してしまった。

 病院のある階まで下りると、病院の入口はすでに開いていた。


「おはようございます。お待ちしていました」

「おはよう。できれば待っていてほしくなかった」


 自分で予約しておいてこの言い草である。

 しかし相手の看護師は三児の母。

 ここで同情してくれるような人ではなかった。


「はいはい、そのまま先生のところへどうぞ~」

「待ち時間とか」

「九条さんはないですよ、さぁどうぞ~」

「やっぱり、ほら、世間体とか、他の患者との兼ね合いとか」

「まだ診療時間前なので、九条さんしかいません。早く行きましょうね?」

「はい」


 三児の母は強かった。


 診察室に通され、体重を測るために服を脱がせる。

 脱がせたら寒いだろうと抵抗したら、追い出されそうになったので素直に従った春日だった。


 身体測定が終わり、おむつ姿の理央をタオルで包んだところで先生が現れた。

 直前まで寝ていたのか、顔に書類の跡が付いている。


 この医者、腕はいい。

 以前は大病院に勤めていたほどだ。

 ただ、それ以上に研究が好きだった。


 勤務時間を守ったり、他の医者と足並みを揃えたりするのが面倒。

 そんな理由で大病院を辞めたがっていたところを、春日が勧誘して現在に至る。


 本当に腕はいいのだ。

 ただ……集団行動を面倒くさがるだけで。


「前回よりしっかり体重は増えていますよ」

「本当?」

「もう少し増えても問題ないくらいです」

「そっかぁ、理央もっと大きくなれるってよ」

「あう」


 足をばたつかせる理央が可愛い。

 リアル天使よりずっと可愛い。


 先生の触診がくすぐったいのか、いつもより手足のバタバタも多めだ。


「そう言えば先生、研究の方はどうよ」

「腰を落ち着けたばかりですからね、そう簡単に進まないですよ」


 この先生、原因の分からない症状や、既存の診断に当てはまらない症例を研究しているが、本人の目的は患者を救うことではない。

 ただ、自分が答えを知りたいだけだった。


 移転したばかりの病院なので、患者はまだ多くない。

 逆にいえば、決められたシフトも、定期的な会議も、面倒な派閥もない。


 診察のない時間は集めた資料を好きなだけ調べられる。

 先生にとっては、まさに理想の環境だった。


「そういえば、会社の皆さんはインフルエンザの予防接種を受けますか?」

「そんな時期かぁ。……スーパーの従業員にも声かけていい?」

「いいですよ。はい、終わりました」

「え?」

「理央君、いい子でしたね」


 いつの間にか、理央の腕には小さな絆創膏が貼られていた。


「え、いつ打ったの?」

「インフルエンザの話題を出した直後ぐらいですね」

「健診は?」

「その前に終わっていますよ」


 本当に腕がいい。

 もう天才と呼んでもいいレベルで。


 理由が「診察を手早く終えて研究に戻りたい」だろうとも。


「打ちますよと言うと、親御さんが身構えてしまうんですよね。そこから察してしまうお子さんも多いので」

「詐欺師になれるよ」

「そこは手品師と言ってください」


 聞けば、研究の合間の息抜きとして、趣味で手品を嗜んでいるらしい。

 そちらもやっぱりプロレベルだった。



なんと!

『日間ヒューマンドラマ〔文芸〕・連載中』ランキングで3位をいただきました!

読んでくださった皆様、評価やブックマークをしてくださった皆様、本当にありがとうございます!

これからも春日と一緒に、理央の可愛さを存分に堪能していきたいと思います。


引き続き、九条一家をよろしくお願いいたします!


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