第9話 神様、息子の成長を見守る
その日は何だか、理央が「あぅあぅ」と声を上げながら奮闘していた。
もちもちの足を持ち上げ、体をひねるような動きを繰り返している。
「こ、これは」
『もう少しです!』
「キェッ!」
「ぷるるん!」
むーっと体をひねろうとして、パタン。
何度も頑張っては失敗する理央の隣に、マンドラゴラとスライムが並んだ。
あまりの可愛さに春日は一瞬気が遠くなり、地縛霊はうっかり成仏しかけた。
「キューー」
「ぷるる」
マンドラゴラは横になったかと思うと、理央の隣で何やら指導を始めた。
「あぅ~~」
「キェ!」
そして――
ころり。
理央が初めての寝返りを打った。
『動画は! 動画は撮りましたか!』
「当然録画している!!」
大人組がやんやと騒ぐ横で、理央は自分が何をしたのか分からないのか、不思議そうに瞬きをしていた。
ただ、嬉しそうに葉っぱを揺らすマンドラゴラと、ふるると震えるスライムにつられ、理央も楽しそうに笑った。
「理央~、もう一回できるかなー?」
「あぅ!」
「キェ!」
春日のリクエストを理解したかのように、理央と二匹が仲良く並んだ。
今度は揃ってころり。
「……もしかして理央って天才か?」
『寝返りの才能がおありです! 天才! 一生推せる!』
しばらく二匹ところころ遊んでいた理央だが、突然ぱたりと動かなくなった。
「理央ぉ!?」
『電池切れですね』
慌てて駆け寄ったら爆睡していた。
スライムが理央の体の下へ入り込み、そっと持ち上げる。
そのまま、リビングの一角に敷かれたベビーマットまで運んでいった。
そこには理央のお昼寝コーナーが用意されており、清潔に保たれているのはもちろん、肌に触れる部分も常にふわふわだ。
大きさだって特注品だ。
『寝ている間にオムツを確認してしまいましょう』
「やっぱりさ、いちいち確認するのって手間じゃないか? 魔法のオムツでいつでもサラサラにしてあげたい」
『親である貴方のオムツ替えの腕が、いつまで経っても上がらなかったら不自然でしょう』
魔法なら一秒なのに……。
ブツブツ言いながらも、起こさないようにオムツ交換をする。
妥協ポイントとして、家の中で過ごす時は蒸れない素材のオムツを履かせている。
マンドラゴラから採れる繊維で作るため、大量生産には向かないし、家の外には持ち出せないのが難点だった。
「キュ~~~」
「ぷるる!」
マンドラゴラが悲鳴を上げたので、何事かと振り返れば、寝ぼけた理央に葉っぱをはむはむされていた。
可愛い。
『マンドラゴラの葉に毒性は……』
「あの個体にはないよ。ただ、何の効能も持たせないのは難しかったから、別の効能はあるけど」
『別の効能とは』
「ビタミンサプリとかあるだろ。あの程度」
『大丈夫、なのですか?』
「万能薬よりはマシだろう」
本来はマンドラゴラをすり潰して作るらしい万能薬。
その効能を葉っぱ一枚で発揮する個体が、春日の周りにはわんさかいた。
何なら群生していたし、一番得意なのはダンスだった。
春日はいまだ、普通のマンドラゴラというものを見たことがない。
「選抜戦、大変だったんだぞ。葉っぱに毒がなくて、叫び声にも即死効果がない個体なんて滅多にいないから」
『即死』
「マンドラゴラの特性スキルなんだよ」
「キュッ」
選び抜かれたマンドラゴラが、誇らしげに葉っぱを揺らした。
『あのスライムは……?』
「何ができないか聞いた方が早い」
少なくとも子育てスキルなら春日より上なのは確かだった。




