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神様、息子が可愛くて仕方ない  作者: ゆめ@マンドラゴラ
第一章 神様、父親になる

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第7話 神様、子守りを雇う

 子守りアルバイトを雇うことになった数日後。


「アルバイト候補、見つけてきたぞー」

「社長、普通は求人を出して、応募してきた人を面接するものです」

「それだと仕事が増えるだろ。ほら入って、入って」

「失礼します」


 入ってきたのは、少しぼさついた髪の青年だった。

 身なりはくたびれているが、不潔な印象はない。


「あれ、君」

「小野寺さん、知ってる人?」

「家の近くにあるスーパーでレジをやっている子です」


 面接用のお茶を用意しようと立ち上がった事務員さんが、青年の顔を見てそう教えてくれた。


「ここに座って待っててくださいね」

「ありがとうございます」


 店長に問い詰められる社長から青年を離し、事務員さんが面接のために休憩スペースへ案内してくれている。

 普段は昼食や作業台代わりにしか使われていなかった休憩スペースが、初めて来客用として活用された瞬間だった。


「社長、どこで拾ってきたんですか?」

「履歴書を持ってスーパーの前で呆然としてたから、拾ってきた」

「どこのスーパーですか」

「ここ」

「下のスーパーの応募者を横取りしないでくださいよ」

「まだ応募前だったからセーフだろ」


 軽く話を聞いたところ、新しくできたスーパーへ応募しに来たらしい。

 ただ、実際に来てみたら建物がいかにも高級マンションで、入るのをためらっていたところに声を掛けたのが春日だった。


「ほらほら、待たせたら可哀想だろ、面接しようよ」

「分かりました」


 ため息を付きながら店長がやっと動き出してくれた。


 休憩スペースへ移動すると、店長が青年の向かいに腰を下ろし、春日も当然のようにその隣へ座った。


「お待たせしました。店長の佐伯です。まず、仕事内容は社長から聞いていますか?」

「店長、これ履歴書ね」

「……なんで社長が持っているんですか」

「来る途中で読んだ」

「……」


 店長が春日の言葉に軽く眉間を揉んだ。


「……本人の許可は取りましたか?」

「見せてって言ったら渡してくれた」

「はい」

「ならいいですけど……」


 店長は春日から履歴書を受け取り、改めて目を通した。


「工芸専攻……?」


 ガタリ


 聞き耳を立てている社員たちが一斉に動く音がした。

 だがこの程度を気にしていたら、この会社で店長は務まらない。


「改めまして、仕事内容は社長から聞いていますか?」

「はい。小学生を学童へ迎えに行って、こちらで面倒を見る仕事だと聞きました」


 迎えの時間は決まっているため、大学の予定とも調整しやすそうだと判断したらしい。


「運転免許は持っていますか?」

「いいえ」

「では、迎えは徒歩ですね。社長、悪天候の日はどうしますか?」

「そもそもそんな日は仕事しないで帰ろうよ」

「歩ける程度の雨なら傘か雨合羽で迎えに行ってもらい、豪雨の時は小野寺さんに早く帰ってもらうということで」


 春日の主張をそのまま採用せず、店長が現実的な条件に整えてくれた。


「出勤できないほどの悪天候の際は会社から連絡をします」

「はい」

「それ以外の日は出勤していただき、お迎えがない日は会社の雑用をしてもらうのはどうです?」

「それいいねー」


 春日が軽く採用し、そういう事になった。

 三バカのキャッキャした空気が伝わってきたが、全力で無視しつつ店長は話を続けた。


「じゃあ、気配がうるさいから社員を紹介しちゃおうか」

「ひゃぁぁ後輩!!」

「しっ、先輩としての威厳ってやつを」

「梱包に興味はないだろうか」


 店長はこの時密かに思っていた。

 あいつら黙ってくれないかな、と。

 せっかく真面目そうな人材を採用できそうなのに、「先輩が気持ち悪いので辞退します」などと言われたら、普通に泣ける。


「まず、こちらが社長の春日になります」

「基本的に何でも相談していいぞ!」


 お金も人脈も人知を超えた力も持っているので、あながち冗談ではない。


「私が店長で、先ほどの女性が事務員の小野寺さんです。他の三人は……紹介しなくてもいいんじゃないですか?」

「それもそうだな、今日って面接だけだし」

「他にもHP、制作、発送をそれぞれ担当する社員がいますが、紹介はまた後日にしましょう」


 後ろから声なき悲鳴が聞こえたが、二人とも無視した。

 それより仕事をしてほしい。


「修ちゃん並みにお金がないらしいからさ、なんかいい感じの支援ない?」

「そうですね……」

「彼専用のカードを作って経費で落としていい?」

「作りません。社員割引を使えるようにしましょう、他の社員と同じ条件で会社が補助するんです」

「じゃあそれで」


 時給か月給かで少し揉めたものの、店長がその分だけ条件を良くすることで、春日も納得した。


 青年の時給は周辺の相場より少し高め。

 会社の仕事で必要な物はその都度経費で購入。

 手が空いている時間なら、大学の課題を進めても構わない。

 そんな感じで話はまとまった。


「では、こちらの条件で採用ということでよろしいですか?」

「はい。お願いします」

「そろそろ小学校も終わる時間かな。ちょうどいいから、学童へ顔合わせに行っちゃおうか」

「小野寺さん、書類はどうですか?」

「すぐ終わります」


 こうして青年は明日から正式に働くことが決まった。


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