第1話 神様、赤ん坊を拾う
雨の日、春日は赤ん坊を拾った。
正確には店の前に置かれていたダンボール箱の中に、赤ん坊が入っていた。
「社長、店の前にダンボールがあります」
「なんだ? 不法投棄か?」
声を掛けられ、春日は軒先へ顔を出した。
「うちはネットショップであって、廃品業者じゃねぇぞ。さっさと片付けて仕事に戻ろう」
「はい」
撤去しようと手を伸ばしたら、濡れたダンボールから微かな音が聞こえた。
猫だろうか。
猫だったら看板猫にするのも面白いな。そう思いながら箱を開けた春日は、しばらく動けなかった。
「社長?」
「赤ん坊だ」
「は?」
「店長、ダンボールの中に赤ん坊がいる」
「け、警察ーー!」
店長がバタバタと店の中に戻っていく。
その背中を見送ったあと、ダンボールへ視線を戻した春日は、ようやく一つのことに気付いた。
「……お前、こんなところで何してんの?」
それはよく知っている魂の色だった。
とても懐かしい綺麗な色。
「社長、何やっているんですか! 早く赤ちゃんを店内に入れてください!」
懐かしい魂との再会に呆然としていたら、社員の一人に滅茶苦茶怒られた。
「毛布持ってきました!」
「ミルクあるー?」
「コーヒーで使った!」
「社長、早く!」
「おう」
社員たちに急かされ、春日はようやく赤ん坊を抱き上げた。
「ふぇ……うぇぇ……」
「よしよし、酷い社長ですねぇ」
腕の中で泣き出した瞬間、目に見えない速さで赤ん坊を奪われ、普通にけなされた。
「社長、警察に連絡しました! ……社長?」
「移転しよう」
「いきなりどうしました?」
「子育てに必要なのってなにかな? 幼稚園? 遊び場も大事だよな」
「は?」
「知り合いに医者を紹介してもらわないとな」
横で店長が何か言っていたが、春日の耳には入っていなかった。
「子育てするなら、必要なのは戸籍と……あと名前か」
「社長、いったんそこまでで。警察が来ました」
問題ない。
警察に話を通せるだけの人脈なら持っている。




