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7 最後の攻略対象

王城のお茶会から数日後、私の周りは一気に慌ただしくなった。


家族には帰ったその日にアルベルト殿下から直接婚約の打診があってお受けしたことを伝えていたが、正式に公表されたのはその3日後だった。


公表されるまでは普通に過ごしていたけど、

公表されるやいなや、お茶会の招待状が山ほど届いた。


招待状を見てみると同世代の子女からのお誘いももちろんあるけれど、

子どものうちに知己を得ておいて、便宜を図ってもらおうとする大人からの招待がほとんどだった。


ふっ、甘いわね。

こっちは人生経験25年+12年=37年のいい大人なのよ。

しかもゲーム世界の悪役令嬢に転生というあり得ない修羅場を経験してるんだから。

子どもだから簡単に丸め込めるなんて思わないことね。


なんて、頭の中でふざけていると、

コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。


「失礼いたします。

アンジェリカお嬢様、奥様がお呼びです。」


侍女のシエラが呼びに来た。


…来た。

「私の」お茶会についてだろう。


実は私も今月初めに12歳の誕生日を迎えていた。

普通なら誕生日を迎える前から招待客の選定などの準備を始め、

12歳になったその日に招待状が届くようにするのだ。


しかし、先日王太子殿下のお茶会があったため、

同じ時期にお茶会を開こうとしていた者たちは、

誰が招待されるのか、ひいては誰が婚約者や側近に選ばれるのかを見極めてからお茶会を開く必要があった。

特に私はお茶会が開催される前から婚約者に選ばれる可能性が高いと言われ、

招待客について慎重に考えなければならなかったので、

まだ招待状を送っていなかったのだ。


王太子の婚約者がどの家の子女を招待するのかーー

それは、未来の王太子妃がどの分野を大事にしようと考えているのか、に繋がるからだ。



婚約者に選ばれることはある程度想定していたので、

お茶会までにすでにおおよその招待客は決まっていた。




しかし、レオン様以外の側近については正直予想がつかなかったので、追加検討が必要になったのだ。


実際に側近に決まったメンツはこうだ。


オスカー・キュイーブル公爵令息

トーマス・アンジョーヌ侯爵令息

レオン・ブルージュ子爵令息

オリバー・ベル伯爵令息

コンラート・ボルドー伯爵令息



結果的に上級生2名、同級生1名、下級生2名だった。


上級生から選ばれるなら、まずオスカー様とトーマス様だろうと思っていた。これは予想通り。


下級生についてはエドワード殿下との兼ね合いもあるから予想できなかった。

マーガレット様の婚約者オリバー様とコンラート・ボルドー様のお二人になったのね。

どうやらアーサーは仲良しのエドワード殿下の側近候補として残すため、アルベルト殿下の側近からは外されたみたい。


あとやっぱり同級生ではレオン様だけね。金魚の糞たちからは選ばれなかったわ。


想定外だったとはいえ、下級生のお二人については今回のお茶会にお呼びできないから招待状リストの大幅な作り直しは避けられそう。

でも同級生・上級生については念のため王太子殿下のお茶会に招待された令息・令嬢とその関係者をリストに入れていたから、その辺りの取捨選択は必要になりそうね。お母様に相談しなくては。



また、

文官派閥からアンジョーヌ侯爵家とブルージュ子爵家。

武官派閥からはボルドー伯爵家。

中立派からはキュイーブル公爵家とベル伯爵家。


家柄、年齢、派閥の全てがバランス良く押さえられている。


側近だけで見ると武官派閥が伯爵位1人で少し弱く見える。

けれども、婚約者には武官派閥筆頭であるドレノワール公爵家の私が選ばれた。

それも踏まえると申し分ないバランスだ。

選考から漏れてしまった令息達も納得せざるを得ないだろう。



ちなみにレオン様以外の側近たちはその場で決まったのではなく、

お茶会での印象を踏まえた上で翌日の会議で総合的な評価を協議して決まったらしい。

本人たちには公式発表する前日、当主を通じて伝えられたんだそうだ。


レオン様はすでに側近のようなものだったから例外として、

婚約者だけ当日に王太子殿下自ら決定を告げられるってどんだけ特別扱いなのよ。

ちゃんとプロポーズしていただかなかったぐらいで拗ねたり怒ったりしないわよ、子どもじゃないんだから。

…今は子どもだったわね。



まぁ、歴代の王があの庭園でプロポーズをしたと言っていたし、

よっぽど候補者争いが拮抗している状況でなければ、お茶会の途中で呼び出してプロポーズする決まりになっているのかもしれない。

そうでないと、あの愛のないプロポーズはありえないわ。

言葉を失うほど美しいバラのトンネルの中というシチュエーションに騙されそうになったけど、

意訳すると

「お前ぐらいしか俺に釣り合うやつがいないから、これからも仕事のパートナーとして一緒に国を支えてくれ。」

ですもんね。

相手が殿下に恋してるご令嬢だったらその場ではロマンチックなムードに騙されて舞い上がってしまうだろうけど、

家に帰って言われたことを冷静に思い返したら「あれ?私のことを大切にするとは言われてない?国のために一緒にがんばろうって言われただけ?」って泣いちゃうわよ。


…もしかしたらゲームの中のアンジェリカもそうだったのかもしれない。

努力して勝ち取った婚約者の座はハリボテで、

ただの国を守るためのパートナー以外の何者でもない。

それでも国のため、殿下のため、と努力を続けたのに、急に現れたヒロインが自分の欲しかったものを全て奪っていったのが許せなくて…。


そう思うと、悪役令嬢にも同情する余地はあると思うのよね。

きっと他の悪役令嬢にもそれぞれの事情があったに違いない。

断罪ルートのないレティシア様は別にしても、今のイザベラ様やマーガレット様がただの嫉妬だけでヒロインをいじめるような愚かな真似をするとは思えないもの。

…いえ、イザベラ様なら嫌味ぐらいは言うかもしれないわね。



ともかく、ヒロインのためにも、悪役令嬢たちのためにも、作戦を練らないと。



話を戻して、最後の攻略対象はおそらくコンラート・ボルドー様だろう。

騎士ルートだからてっきり騎士爵のご令息が攻略対象だと思っていたけど、

コンラート様のお父様であるボルドー伯爵は当主を継ぐ際に騎士団長を引退された元騎士だ。

現在は軍部における重要なポジションを任されているけど、騎士団に所属している頃は一騎当千の優秀な騎士だったとお父様が言っていた。

そんなお父様に憧れて騎士を目指していたとしてもおかしくない。


それにヒロインは私と殿下が高等部3年生の時に、新入生として入学してきたはず。

そう考えると今回選ばれた側近の中でも、私より年上のお二方は学園を卒業してしまっているから、そもそも対象外なのだ。

消去法から言ってもコンラート様以外にはありえない。


となると、コンラート様についてもっと情報収集しなくては。

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