15 救世主!
「アンジェリカ様、騒ぎを起こしてしまって申し訳ございません。
途中までは我慢していたのですが、アンジェリカ様まで侮辱してきたのがどうしても許せなくて…。」
「レティシア様…。私のためにありがとうございます。」
テーブルから少し離れたところでレティシア様が謝罪してくれた。
優しいレティシア様のことだ。
あの子爵令息が嫌味を言われている時も助けたかったに違いない。
でも私のお茶会で事を荒げてはいけないと我慢してくれていたのだろう。
ただ、私のことまで悪く言われて我慢の限界が来てしまったのだ。
ここまで私を思ってくれるなんて、本当にいい友達を持ったわ。
「私もすまなかったな。
もっと早くに助けに入ればよかった。だが、この後どうするつもりだ?」
「殿下には感謝こそすれ、謝っていただく必要はございませんわ。
ただ、この後については私もどうすればいいか考えあぐねていまして…。
騒ぎの元凶とはいえ、アンドレ様を追い出すわけにも参りませんし…。」
3人でこの後どうするべきか考えていると、オスカー様とそのご友人のロデリック・ジャスマン侯爵令息がこちらへやってきた。
「やっぱりやらかしたようだな。
良かったらこちらの卓でアンドレを引き受けようか?
同じ卓に公爵家令息が2人固まってしまうのはあまり良くないだろうが、
今回は誰が見てもあいつのせいだし、アンジェリカ嬢の采配不足にはならないさ。
それに、俺が直接目を光らせておけるからな。」
オスカー様!かっこよすぎます!!
クレール王国の公爵家はドレノワール家、アルジェント家、キュイーブル家の三家しかない。
三家はそれぞれ別派閥に属しているものの、公爵家同士のつながりはそれなりに深く、
私たちは幼いころから一緒に遊ぶことも多かった。
その中でもアンドレ様は昔からオスカー様に頭が上がらない。
私を敵視して嫌がらせをするたび拳骨を食らっていたからだ。
そのためアンドレ様もオスカー様の前だけは大人しくしているようになったのだ。
さっきオスカー様も言ったように、公爵令息が2人も同じ卓にいるのは良くないと思い、別卓にしていたが、本音を言うと最初からアンドレ様の横にオスカー様を配置したかったぐらいだ。
オスカー様に続き、ロデリック様が
「俺が『久しぶりに幼馴染のレティシア嬢とお話したい』と言ってアンドレ様と席を代わってもらいます。
それなら他の方々もご理解いただけるでしょう。
一緒に来た僕の婚約者にもすでに事情は説明して納得してもらってるので問題ありません。」
と申し出てくれた。
「オスカー様、ロデリック様!ありがとうございます…!
本当に助かりますわ!」
まじ救世主…!
お言葉に甘えてお二人にアンドレ様のところへ行ってもらい、
「ロデリック様がレティシア様とお話ししたいから」という建前でアンドレ様とロデリック様の席を入れ替えてもらった。
ちなみにアンドレ様は席を移られる際、オスカー様に首根っこを掴まれていたので、
みんな事情は察したようだった。
オスカー様とロデリック様のおかげで演奏後もつつがなく会は進み、
無事お開きの時間となった。
アンドレ様には無視されながらも全員のお見送りが完了し、
何とかお茶会が終わって安心したところ、後ろから声がかかった。
「アンジェリカ、少しいいだろうか。」
「…アルベルト殿下!レオン様も!まだお帰りになっていなかったのですね。
お待たせしてしまい申し訳ございません。どうされたのですか?」
「今日は本当に大変だったな。
オスカーたちの助けがあったとはいえ、君も本当によくやったと思う。
だから…。その…。今度2人で慰労会でもやらないか?
きっと今後二人で合同で開催することも増えるだろう?
その時のための打ち合わせなんかも必要だと思ってだな…。
王城や君の家だと仰々しくなってしまうだろうから、王都のカフェとかでも構わないが…。」
「殿下、そんな言い訳しなくても『デートしよう』と言えばいいじゃないですか。もうアンジェリカ嬢は婚約者なんですから。」
まさかのデートのお誘い!
ゲームでもこの頃は婚約者として私に寄り添おうとしてくださっていたのかしら?
だとしたらヒロインに心変わりをしたのはやっぱりアンジェリカにも原因があったのかも…。
とにかくこのチャンスは逃すべきではないわ!
「はい。ぜひご一緒させてください!
お店は私の方でお探ししてもよろしいでしょうか?」
「あぁ。頼む。ではまた。」
「すみません、アンジェリカ嬢。
僕は次お会いするのは学園の新学期でしょうか?またよろしくお願いいたします。」
そう言ってお二人は帰っていった。
一難去ってまた一難。次は殿下とのデート。
次こそ何事も起こらないように準備しないと!
そう考えながらも私の心は思いのほか弾んでいた。




