13 噂の真相
自己紹介も終わり、雑談が始まった。
テオドール様は滅多にない王族との接触に緊張し、
少し口数が少なめだがヴィオラ様が上手くフォローしている。
完全にかかあ天下になる未来しか見えないけど、
案外いいバランスなのかもしれない。
ロラン様とセシリア様は相思相愛でご婚約されたそうだ。
貴族の結婚はどうしても政略結婚が多くなってしまうが、
お二人のような例もないことはない。
今お二人は高等部3年だが、卒業したらご結婚されるらしい。
幸せそうなお二人を羨ましく感じ、チラッとアルベルト殿下を見てみたら目が合ってしまった。
恥ずかしくなってお互いに目をそらしたが、
他の4人からは生温かい目で見られているのを感じさらに恥ずかしくなった。
…今さら殿下に恋愛なんて期待してないはずなのに…。
婚約者に決まったばかりだからなんだか意識しちゃうわ…。
私達のことを微笑ましく見ながらロラン様が言った。
「そういえば、最近愚弟についてとんでもない噂があるようですね?
私も聞いたときは大笑いしてしまったのですが、皆さんはご存知ですか?」
……来た!一番知りたい話!!
ロラン様が大笑いしたってことは、やっぱりプロポーズは嘘だったのかしら?
「あぁ。私が聞いたのは『コンラートがとあるご令嬢に跪いて愛を語っていた』という話だ。
ありえない話だとは思ったけど、やはり嘘だったんだな。」
「あら。私が聞いたのは『コンラート様がとあるご令嬢を壁に押し付けて迫っていた』というお話でしたわ。見かけによらず少し強引なところもあられるんだと見直しておりましたのに。」
「私が聞いたのは『コンラート様が「君のためなら死ねる!」と大勢の前でプロポーズしていた』というものでした。ロラン様に確認して大笑いされたので嘘なんだと気がつきましたけど。」
「僕は『裏庭でご令嬢を押し倒していた』と聞いてびっくりして…。嘘だったようで安心しました。」
…めちゃくちゃ誇張されちゃってるじゃない。
そしてロラン様大爆笑。
これだけ笑ってられるってことは、やっぱり真相は違うのよね?
「私は『おとなしそうなご令嬢に熱烈にプロポーズしていた』と。
そのご反応からすると、事実とはかけ離れてるのですか?」
笑いすぎて涙を流しながらロラン様が答えた。
「いや、その中ではアンジェリカ嬢が聞いた話が一番近いかな。少なくとも『ご令嬢に結婚を申し込んだ』というところは本当ですから。
うちのコンラートが剣術の稽古をしてる時、力み過ぎて相手の持っていた木刀を思いっきり弾き飛ばしてしまったんです。
それがたまたま近くを通ったグリヴェール家のご令嬢の足もとに落ちて躓いてしまって。
すぐ治るようなかすり傷程度だったんですが、
あのバカは『怪我をさせてしまった以上は責任を取る』と言って結婚を申し込んだんですよ。
それがあちこちで尾ひれがついてこんなことに。
もっと面白い話になりそうなので、しばらく真相は広めないでくださいね。」
説明したあとも「思ったより面白くなってた」と笑いが止まらず、ケラケラ笑うロラン様を見て心底コンラート様に同情した。
だけど一番知りたかった情報はわかった。
グリヴェール家のご令嬢。
グリヴェール家といえば確か子爵家だったかしら?
残念だけどお名前を聞いてもわからないわ…。
考えていると、ヴィオラ様がロラン様に尋ねた。
「それで、結局本当に婚約することになりましたの?
確かグリヴェール家は文官派閥ですわよね?
武官派閥のボルドー家とのご結婚は難しいのでは?」
「ヴィオラ、グリヴェール家は現在の当主が文官だから文官派閥に所属しているだけで、代々というわけではないんだ。確か前当主は武官だったから武官派閥だったと聞いたことがあるよ。」
「たまにそういう家があるな。
王家としては派閥関係なく協力してほしいところだから、グリヴェール家のように柔軟な家門が増えるのは望ましいことだ。」
へぇ。そんなこともあるのね。全然知らなかった。
こういうところがお母様から「情報不足」って怒られちゃうポイントなんでしょうね。気をつけよう。
話がそれちゃったけど結局婚約はどうなったのかしら?
セシリア様も同じように気になっていたようで、
「それで、結局婚約はどうなったのですか?」
と再度質問してくれた。ナイス!セシリア様。
「それがさ、『結婚しない』って豪語してたコンラートがその気になってくれたって母上が大喜びしちゃって。
今がチャンス!と言わんばかりにグリヴェール家にすっ飛んで行って、その場でご当主を説得して婚約を決めてきたよ。」
…コンラート様のお母様、すごい。




