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12 婚約者と御茶会

開始時刻の直前、最後にアルベルト殿下が到着した。

身分の高い方を長時間お待たせる訳にはいかない、ということで下位貴族ほど早く、上位貴族ほど遅く来るのがマナーだ。



「アルベルト殿下、本日はお越しいただきありがとうございます。」


「こちらこそ、招待ありがとう。

他の招待客を待たせてはいけないから、早速行こうか。」


そういうとアルベルト殿下はサッと腕を出してくれた。

正式に婚約者になったのでエスコートしてくださるようだ。

お礼を言い、殿下と腕を組み会場へ向かう。



会場となる庭園へ向かう途中、殿下がおもむろに尋ねてきた。


「そういえば、今日はアンドレも呼んだんだって?

君たちはあまり仲が良くないのに大丈夫なのか?」


「えぇ…。でも今日は初めてのお茶会ですもの。

例え仲が悪かろうと、同級生の公爵家ご子息をご招待しないなんてことがあれば、外聞が悪いですし。」



そう。アンドレ様は文官派閥筆頭・アルジェント公爵家のご令息。イザベラ様の兄上にあたる。

彼とは公爵家同士、幼い頃から付き合いがあるが、まぁ反りが合わない。

ことあるごとに突っかかってくるし、時には陰湿な嫌がらせもしてくる。

それに比べると嫌味を言うだけのイザベラ様は可愛いものだわ。


どうやら私に成績で勝てないのが気に入らないらしい。

「女のくせに男を立てるということを知らない高飛車な女」と言ってくるが、

「なんで婚約者でもないお前を立てないといけないんだよ、バーカ。」

と言い返してやりたい。

そんな品のないことは言えないので無視しているけど。

ちなみに殿下の金魚の糞のリーダーだ。



「それもそうだな。

だが、今日は私が君の側にいる。あからさまなトラブルは起こさないだろう。」


「…えぇ。そうだといいんですが…。」



仮にも婚約者なんだから、そこは「何があっても私が君を守ろう」とか言って欲しかったわ。

まぁ、恋愛感情のない婚約者にそこまで求めるのは酷かしら。



「あと、聞きたかったんだが、この前の約束とはどういう意味だ?」


「え?」


「『君以外に私を支えてくれる人が現れたら教えてほしい』というやつだ。

それは側近も含まれるのか?」


「えっと……。」



全然意味伝わってなかった…。

よくわかってなさそうな顔をされてたけど、殿下からしたらわからないわよね、と思ってあの場ではスルーした。

でもそこまで理解されてないとは思ってなかったわ…。

あの文脈で側近が含まれるわけないでしょう…。


答えあぐねてるうちに会場についてしまったので、「それはまた今度」と言って話を切った。



会場に入ると、殿下と一緒なので臣下の礼を取られた。

殿下を席にご案内したあと、口を開いた。


「皆様、本日はご参加いただき誠にありがとうございます。

初めてなので至らないこともあるかと思いますが、精一杯おもてなしさせていただきますので、ぜひお楽しみください。願わくば、皆様に新たな出会いや絆が生まれますようお祈りいたします。」


軽くカーテシーをし、自分の席についた。


私の席は上座に位置する6人がけのテーブル。

婚約者同士は同じテーブルに配置しないといけないため、当然殿下は私の隣だ。

その他のメンバーは、

テオドール・オルセイユ子爵令息とヴィオラ・ベル伯爵令嬢、

ロラン・ボルドー伯爵令息とセシリア・エクルラート子爵令嬢

の2組のカップルだ。

ヴィオラ様はオリバー様のお姉様、ロラン様はコンラート様の1番上のお兄様ということで、

側近に選ばれた方のご家族を殿下と同じ席にした。

…オリバー様とコンラート様の情報が欲しいからじゃないわよ?

あくまで殿下のためです。



「さすがアンジェリカだな。

私が側近の家族とも交流を深めたいと思っていたのを汲んでこの席にしてくれたんだろう?

皆、今日はご兄弟のことももちろんだが、いろんな話をして楽しめたら嬉しいと思ってる。」


席につくと、殿下が皆が喋りやすいよう、最初に言葉を発してくれた。

こういう気はきくのよね。

それにしても今「アンジェリカ」って……。

今までは「アンジェリカ嬢」だったのに…。

チラッと殿下を見ると少し頬が染まっているように見えて、つられて恥ずかしくなってしまった。


その様子をみてオリバー様のお姉様・ヴィオラ様が微笑みながら言った。


「ふふっ、アンジェリカ様、アルベルト殿下。

私もこちらのテーブルにしていただけて光栄ですわ。

ヴィオラ・ベルと申します。我が愚弟、オリバーがお世話になります。

こちらは私の婚約者のテオドール・オルセイユ様です。」


「はじめまして。テオドール・オルセイユです。

本日はお招きいただきありがとうございます。」


「テオドール様、無難すぎますわ!

他にももっとありますでしょう!」


「いや、しかし初めてお会いするのに最初からそんなにお話することは…。」


「それを考えるのが社交で重要なのですわ!」


…このやりとりだけでこのカップルの力関係がわかった気がする…。

そして、なぜオリバー様が控えめなご性格なのかも…。



続いてコンラート様のお兄様、ロラン様が苦笑いしながら自己紹介をはじめた。


「アンジェリカ嬢、お久しぶりです。

殿下におかれましてはお初にお目にかかります。

殿下の側近に選ばれたコンラートの兄、ロラン・ボルドーと申します。

こちらは婚約者のセシリア・エクルラート嬢です。」


「お初にお目にかかります。セシリア・エクルラートと申します。

このような席にお招きいただいたこと、大変光栄に思います。」


こちらのカップルは普通だ、とホッとひと息ついた。

せっかくだから私も仲良くさせていただこう。

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