11 お茶会当日
今日はついにお茶会当日。
正直、お茶会の準備がこんなに大変だと思わなかったわ…。
準備って言っても、招待する人を決めて、どんなお茶とお菓子を出すか決めるだけでしょ?と思っていたけどとんでもない。
茶葉ひとつ選ぶにしても
「このお菓子にこの香りの茶葉は合わないからこういう香りのものに変えたほうがいい」とか、
「この産地のものは〇〇家と仲が良くない✗✗家のものだから出せない」とか。
子どもにお茶の味の違いなんて大してわからないんだから、これはどこの産地かなんて考えながら飲んでないわよ!って口に出かけたけどグッと飲み込んだ。
どこにだって粗探しのためのネタを常に探しているやつがいる。
そんなやつに足を引っ張られないようにするためには慎重に慎重を重ねなければならないのだ。
お茶やお菓子だけじゃない。
当然席図もホストが考えなければならないのだが、これが一番大変だった。
これに関してはお母様にも手伝ってもらったけど、
ただ単に派閥や爵位ごとに分ければいいというものでもないらしい。
派閥や爵位を越えた交流をするのが本来のお茶会の目的なので、ある程度ごちゃまぜにする必要はあるのだが、そこにも繊細な配慮が必要となるのだ。
過去にも、とある武官派閥の侯爵家令息が同じテーブルになった文官派閥の子爵家のご令嬢に一目惚れしてしまい、親の権力を使って無理やり婚約を決めようとした結果、派閥同士の揉め事に発展してしまった、ということがあったらしい。
かと言って、爵位が近い者同士で固めると「新しいパイプが作れなかった」と文句を言われてしまう。
基本的によほど親しくない限りは、自分より1つ上の爵位までしか招待できない。
男爵位なら子爵位まで、伯爵位なら侯爵位までといった具合に。
そのため下位貴族の子女が上位貴族のお茶会に呼ばれた際には、自分から招待できない家門との新たなつながりを求めて参加することも多いので、そういう配慮ができるホストのお茶会は人気が出る傾向にあるのだ。
王太子の婚約者ともなれば、その程度の配慮は当然のように求められる。
そのため身分を傘にゴリ押ししそうな子女についてはある程度身分の高い者のテーブルで固め、
それでいて派閥や家格の垣根を超えて上手く交流できるように調整するなどパズルのように組み立てなければならない。
今回はお母様にどこの家とどこの家は一緒にしない方がいいかなどを教えてもらえたけど、次からはもう少し自分でも情報収集を頑張りなさいね、とダメ出しされてしまった。
そんなこんなであーでもない、こーでもないと準備に追われていたらあっという間に当日になっていたのだ。
「お嬢様、そろそろお客様がお見えになりますよ。
玄関でお出迎えしましょう。」
マルグリットに呼ばれ、玄関へ出てしばらくすると続々と招待客が到着した。
学園の級友や年上の幼馴染、親のつながりでお呼びした初めてお話する方など、様々なお客様にご挨拶をする。
一旦来客が途切れ、ひと息ついたところに2組の馬車が到着した。
「やぁ、アンジェリカ嬢。
この度は招待してくれてありがとう。
これからも長い付き合いになると思うけどよろしくな。」
「私も招待していただきありがとうございます。
派閥は違いますが、あなたのことは個人的にとても尊敬しています。婚約者と側近同士、王太子殿下を一緒に支えましょう。」
「オスカー様、トーマス様。
本日はお越しいただき誠にありがとうございます。
こちらこそ、今後もよろしくお願いいたします。」
側近に決まったオスカー・キュイーブル公爵令息とトーマス・アンジョーヌ侯爵令息。
お二人とも親同伴のお茶会で顔を合わせる機会が多く、幼い頃からの顔見知りだ。
オスカー様は幼い頃から一緒に遊んでくれて、懐が深いお兄様のような存在だ。学年が違っていればきっとゲームの攻略対象になっていただろうと思うほど容姿も整っている。
公爵家の跡取りで好青年だとアーサーとキャラがかぶっちゃうけど、どちらかというとやんちゃタイプのアーサーとは違って、頼れるお兄様キャラっていうのもアリよね。
トーマス様とは派閥の関係でそこまで親しくお話する機会はなかったけど、とても頭がいいのに偉ぶることがない優しいお人柄なので必ず側近に選ばれると思っていた。
くまさんみたいなぽっちゃり体型だけど、これはこれで愛嬌があって好感が持てる。
乙女ゲームの攻略対象にはならないかもしれないけど、現実世界では引く手あまただ。
お二人とはこれからも仲良くやっていけそうで安心した。
「そういえば、今日はアンドレも招待したんだろう?
あいつ、側近に選ばれなくてあちこちに八つ当たりしてるみたいだから注意して見ておいたほうがいいぞ。」
「えぇ。私の耳にも入っています。
『武官派閥筆頭のあいつが婚約者に決まったせいで、文官派閥筆頭の僕が側近に選ばれなかった』なんてことも言っているそうなので、アンジェリカ嬢自身も気をつけた方がいいかと思います。」
「…ご忠告ありがとうございます。
特に注意しておきますわ。」
はぁ…。
始まる前から不穏な空気だわ。




