人から怪物へ
これはどういう事だ?
さっき、私はあなたを撒いたのに、何で、何で?
そう思える程、目の前の状況を飲み込めない私。
何せ、目的地である城門前に、何とか、辿り着いたは良いのだが………………。
事態は、私の予想の斜め上に、進行していた。
何故なら---------
「奴を取り押さえろ!!」
「………………」
先程、撒いた筈のシズクが、何やら、四メートル程ある巨大な魔物? と戦っていたからだ。
「くっ!! この!!」
「右から回り込め!!」
よく見たら、シズクが指示を出しているのは、いつも学園で連んでいる生徒会のメンバーだな………。
城門の衛兵や街の防衛にあたっている筈の騎士は何処だ?
「「「「………………………………」」」」
あ………………察した。
みんな、あの魔物みたいな怪物にやられた訳ね。
でも、騎士達はやられただけで、死んでいる訳でもなさそう。
それに、シズク達は、何故、あの怪物を倒そうとしていないんだ?
見るからに、殺さないまでも、周りの騎士を簡単に制圧する強い魔物。
だが、私の知るシズクの実力なら、あっさりと倒してもおかしくないレベルの奴に見える。
それなのに、何故か、防戦一方という感じで、シズク達は手を出せずにいた。
「………………」
物陰から恐る恐るあの怪物を暫く観察してみる。
そして、ある事に気付いた。
「………………なるほどね………」
あれは魔物じゃない。
あれは、人だ。
よく稀に、人が魔物のような異形な怪物へと変貌する事件がある。
その場合、怪物へと変貌した者の特徴として、顔か、胸や腹の中心に、数センチくらいの球体が、肌を晒すような形で埋め込まれている。
それで、あの怪物の顔にも、例に漏れる事なく、その球体が見える。
それに、転がっている騎士---------その周りで、スクラップ同然に、壊されているあの馬車の紋様には、見覚えがあった。
そりゃあ、あの怪物を倒せる訳ないわ。
あれは、我が国のとある家の紋章だ。
しかも、描かれているのは王家のもの。
私の知っている限り、あの怪物に変貌している人物は、恐らく、この王国の第三王女殿下辺りかな?
確か、隣国の学園から王都へ帰還されるって話だったから、城門に辿り着いた瞬間に、怪物に変貌って所?
「………………はぁ………」
思わず、ため息が出る。
基本、怪物になった者は、人の姿に戻す事は不可能だ。
これまでも、怪物になった者を人へと戻そうと多くの研究者が、試みたが、失敗している。
なので、その者の為、殺してやるのが、せめてもの救いになるとか、なんとか………。
「………………」
だが、私は、そんな選択はクソくらいだと思っているので、仕方がない。
手を貸しますか。
《ジュエル・コンパクト》
《スタイル・ダイヤ》
私は、スキルを発動するなり、駆け出すと、シズクに向かって放たれた怪物の拳を片手で受け止めた。




