04-第三王子(王子サイド)
~王子サイド~
『………………………』
とある王城の寝室。
悲痛な面持ちの面々が、目の前で魔法による治療を受けている一人の少年に対して、様々な思いを巡らせていた。
ある者は怒り、ある者は悲しみ。
そして、ある者は憎んだ。
「くそっ!! あの女!!」
その内の一人、《コング・イエロー》こと、ナムエルが、血の滲む強く握り締めた拳を背後にあった壁へと叩き付けた。
衝撃で、背後にあった壁の一部が吹き飛んで、隣の部屋の様子が露わになるが、気にする事なく、ベットで横たわる自分達のリーダー。
《ドラゴン・レッド》こと、クルトをこんな目に合わせた元凶に、煮えたぎるマグマの如く怒りをふつふつと募らせる。
「落ち着け、ブルー。そんな事をしても、何の解決にもならない」
そんなイエローを見かねて、冷静に彼を宥めようとする《ドルフィン・ブルー》こと、カエサル。
だが、薬指で、掛けている眼鏡を押し上げつつ、冷静を装ってはいるが、内心、この場の誰よりも、怒り狂っていた。
もし、ここに、変身したフィンがいたなら、八つ裂きにしかねない程の迫力のある殺気を放っている。
「分かってる!! 分かっているんだが………」
「納得は出来ないか………。それは、私とて同じだよ。だがね………それを、レッドが喜ぶのかい?」
「それは………」
ブルーの問い掛けに、イエローが言い淀む。
その代わりに答えたのは、先程まで、悲しみに暮れていた《タイガー・ホワイト》こと、アカリであった。
「そうですよ! きっと、レッドが、今の私達を見たら、きっと、悲しみます!」
彼女は、両足を抱えながらも、涙を拭き、頬を叩く。
気合を入れ直して、その上で、勢い良く立ち上がり、皆へと視線を向けて、言い放った。
「だから、私達は、次、彼女とまた、相対した際、どうするのか考えましょう! いつでも、レッドが戻って来ても大丈夫なように!」
「その通り………。レッドなら………そうする………」
ホワイトの言葉に、今まで、影の薄かった《グリフォン・グリーン》こと、クロノが、引き攣ったように、頬を緩ませながら、肯定する。
きっと、レッドなら、こういう時、仲間達、皆を鼓舞するように、明るく振る舞おうとする筈だ。
そして、次は負けないと決意を込めて、宣言する。
恥ずかしげもなく、しっかりと前を向きながら………。
その光景が、容易く目に浮かぶ面々---------
皆の自然と頬が緩む。
「そうだな………」
イエローは、漸く、拳を緩めると、レッドの方へと視線を向けた。
「俺達は、もっと、強くならないといけないよな!?」
「そうだ」
「その通りですよ!」
「同意………」
皆、決意を新たに、心を一つにして、頷き合った。
そんな時だった。
「皆、いるな?」
寝室のドアが開かれる。
皆が、ドア側の方へと視線を向けると、そこには、レッドの実の兄であり、この国の第三王子、シュラウドの姿があった。
その顔は、著しく険しく、皆すぐに、何か、問題が起こった事を悟る。
「殿下。どうかなされたのですか?」
皆を代表して、ブルーが、シュラウドに尋ねる。
シュラウドは、この場の皆に言うべきか、一瞬、躊躇うように口を噤んだが、意を決して、話し始めた。
皆、王子であるシュラウドの話に耳を傾けて---------驚愕した。
「それは事実なのですか!?」
間違っていて欲しい。
そんな気持ちを込めて、ブルーが、シュラウドに確認を取るが、答えは、肯定としか受け取れない答えのみだった。
皆、信じられない気持ちでいっぱいだった。
「皆は、急ぎ、北東方面に展開中の第二、第五騎士団達と合流して欲しい。私の方も、例の件を終えた後、志願者を集め、王都を出立するつもりだ」
「異彩承知しました。その際は、殿下がお話しされていた彼にも、声をお掛けすると考えてもよろしいでしょうか?」
「そのつもりだ。だが、彼の事だ。すんなりとは、頷いてはくれないだろう。それでも、やるしかない」
「………………分かりました」
ブルーは、しばし、シュラウドの目を見つめ---------諦めて、仲間達を引き連れて、寝室から退出して行った。
ブルー自身も、彼の事はよく知っている。
彼が、もしこの問題に助力してくれるのなら、正直、心強いものはない。
しかし、彼が、シュラウドの依頼を素直に受けてくれるかと言うと、答えは否だ。
何せ、彼と第三王子であるシュラウド殿下には、相容れない確執がある。
だとすると、恐らく、この後、噂に違わぬ事態が引き起こされるだろうと予測し、思わず、大きなため息を吐いた。
これから、彼に可愛がわれるであろう者達の冥福を祈って………。




