05-夢のお告げ
夢を見た。
それも、かなり懐かしい夢だ。
「勇者の遺産?」
あれは幼き日の私か?
隣にいるのは……。
「…………………」
きっと、今、空からその光景を眺めている私は悲しげに見ている事だろう。
嬉々として、昔の私に語り掛けている彼は、昔から《初代勇者様のお話》になると、興奮気味に、夢中で語ってくれたものだ。
今も身を乗り出す程の勢いで、まるで自分の事のように熱く語っている姿が見える。
そういえば、私の持つスキル《変身アイテム》も、彼から教えて貰ったんだっけ……。
魔王を討ち滅ぼす為に、初代勇者様が、異世界の知識を用いて作られたとか――――
《変身アイテム》保有者には、専用の魔道具を作られていたとか―――――
そんな魔道具は、天空に浮かぶ城に眠っているとか――――
どれも、眉唾な話ばかりだったが、私にとって、彼が隣で、嬉々として話してくれている事が幸せだった。
あの阿保な王子が、彼を殺すまでは―――――
きっかけは、あの第三王子が、彼が語っていた《勇者の遺産》―――――その一部を発掘した事が始まりだった。
私達が滞在する王都に運び込まれる事になった魔道具の噂を聞きつけた彼は、当然、その姿を一目に見ようと、私に誘いを掛けて来た。
だが、その時の私はどうしても外せない実家の所要で、一緒に行く事が出来なかった。
だから、彼一人で見に行く事になった。
それが、私の見た彼の最後の姿だった。
予定の日、第三王子の発掘した《勇者の遺産》が、王都に運び込まれた。
話によれば、伝説の勇者様の残した魔道具、見たさに、数多くの住民が集まっていたらしい。
派遣された警護の騎士団に守られながら、街道を順調に進んでいく魔道具。
悲劇は、碌な調査も終えていないまま、第三王子が魔道具の一つ―――――《巨人》と呼ばれる物を起動させた時に起きた。
起動した巨人が、第三王子の制御を離れて暴走。
その魔道具の暴走によって、王都が半壊する大惨事となり、多くの死傷者が出した。
その中には、彼の名前もあった。
彼と共にいた生き残りの一人と運良く面会する事が出来た私は、当時の状況を聞き出す事に成功した。
その者は、酷く怯えていたが、勇気を出して、私に当時の状況を語ってくれた。
巨人の魔道具が起動した瞬間、その巨体が起き上がるなり、彼のいた地点に強烈な光が放たれて――――――気が付くと、地面が陥没しているかのように、大きく抉られており、少なくとも、その光で、数百人以上の人々が、気付かぬ内に、消え去っていたそうだ。
その後も、周辺の村や町を蹂躙する巨人。
巨人を起動させ、この大惨事を招いた第三王子は、何とか、巨人を停止させようと試みていたようだが、結果は、死傷者を増やし続けるばかりで、止める事は出来なかったようだ。
事態を重く見た国王陛下は、第三王子を拘束。
王位継承権を剝奪した上で、暴走事件の際、何とか、破壊されずに残っていた残りの魔道具の解析を指示した。
しかし、阿保な第三王子は、国王陛下の決定に納得せず、悪びれもせずに、地下牢から脱走。
功を焦り、破壊を免れた魔道具を勝手に持ち出して、単騎で、暴走中の魔道具へと立ち向かっていった。
だが、碌に魔道具を扱う事が出来ず、そのまま敗退。
偶然、その戦いの場の近くにいた私は、魔道具に乗っていた第三王子を引きずり出して、顔がボコボコになるまでに殴り倒した。
そして、巨人の過ぎ去った村の惨状を見せつけてやった。
なのに、あいつは、悲しみに暮れる村の人々を見ず、私にこう言い放った。
「私は王族だぞ!! こんな事をして、ただで済むと思っているのか!!?」
それを聞いて、心底、失望した。
このクソ野郎は、自分の事しか考えていなかったのだ。
ふざけるな!!!
こんな奴の所為で、彼は死んだのか!!?
こんな奴を守る為に、私は努力して来たのか!!?
その時、私の中で、何かが切れたような音がした。
私は、あの阿保王子の髪を乱暴に掴むと、その顔面に膝蹴りを食い込ませた。
当たった瞬間、鼻が折れるような感触があったが、関係ない。
寧ろ、こんなクズにはお似合いだと思った。
鼻が折れ、痛みにもだえ苦しむクソ王子は、憎々しげに私を睨んでいたが、立場を分かっていないのはお前だ。
こんな大惨事を引き起こしていて、何が王族だ。
見てみろよ。
お前に突き刺さる村人達の憎悪に染まった視線を―――――
その手に持った農具で、お前に何をしようとしているのかを―――――
それに気が付いた時、阿保王子は、私に助けを求めて来たが知るか。
自分の蒔いた種だ。
自分でどうにかしろ。
自己中野郎。
私は生き残った村人達に、タコ殴りにされるクズ王子を放置して、クズ王子の乗って来た魔道具に乗り込んだ。
あのクソ王子と巨人の戦いを見る限り、空を飛ぶ魔道具だと推察した私は、手探りながら、何とか、魔道具を再起動させ、巨人を追い掛けた。
巨人との戦いは熾烈を極め、魔道具を巨人に勢い良くぶつける事で、巨人を倒す事は出来た。
その後、巨人を倒した事で、国が、私を英雄として、担ぎ上げようとして来たが、王家を信用出来なくなった私は、治療が終わるなり、行先も告げずに、国を出た。
もう、あんなクソ王子にも会いたくなかったし、何もかも、馬鹿らしく思えたからだ。
「…………………」
何で、こんな胸糞悪いものを、私は思い返さないといけないのだろう。
あのクソ王子に対する憎しみが沸々、湧き上がって来るの感じる。
これも、あのクソ王子に再会した所為か?
そう思っていたら、突然、頭の中に、声のようなものが響いた。
『王都に危機が迫っている。すぐに王城へと向かって』
懐かしい声だった。
まるで、彼が、私に勇者様のお話を語って聞かせてくれた時のような………穏やかで、澄んだ。
そんな声---------
気が付くと、私は、見慣れた寮の部屋のベットで目が覚めた。
日が暮れ、月明かりが部屋を照らしている。
どうやら、もう夜中らしい。
確か、帰るなり、倒れるようにして、ベットの上で倒れ込んだんだか。
記憶が曖昧だが、妙に、先程、夢で聞いた声が頭から離れなかった。
「王城に向かえ………か………」
何故か、酷い胸騒ぎを感じる。
先程の夢みたいに、巨人の魔道具が暴走した時のような嫌な感じがする。
「まさか!!」
《ジュエル・コンパクト》
《ダイヤ・スタイル》
私は、すぐ様、起き上がると、スキルを使用して、王城へと急ぎ、向かう事にした。
まさかとは思うが、あのクソ王子の顔が、やけに頭から離れなかった。
もし私が考えている通りなら、あの阿呆王子は---------
『早く。もう時間がない』
また、あの声が頭に響いた直後、空から何か、流れ星のようなものが、王城へと落ちて、凄まじい地響きと共に空気を………大地を揺らした。
「急がないと………!!!」




