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第35話 最終決戦!

 将也が突進を開始したのと同時に、魔王が吠える。青色の膨張部が一層強く光り、魔王の周囲に無数の水塊が浮かび上がった。


「水魔ウィシュチェルの力か!」

「でしたら、わたくしの力を使ってください!」


 将也の頭にアイリスの声が響く。


 次の瞬間、彼の体内に地属性の魔力が充填された。周囲に大量の土と葉が現れ、それらは風に乗って将也の周りを激しく動き回る。


 その直後、魔王が翼を大きくはためかせ、水塊を一斉に放った。


 莫大な数の水弾は空中で集まり、ひとまとまりの激流となる。その巨大な黒水槍は空中を突き進み、将也に襲いかかった。


 魔王と水魔の力が合わさった、凄まじい威力を誇る攻撃だ。

 しかし、将也はそれを避けなかった。


 彼は黒い激流に真正面から衝突する。


 その莫大な衝撃で周りの空気が揺さぶられ、黒い海には白い波が湧き立つ。しかし、彼自身はほとんどダメージを受けていなかった。アイリスから授けられた地属性の力が、彼を守っていた。


 将也は水槍の中に割り込み、激流をかきわけて突き進んでいく。

 それからわずか数秒後に、彼は黒流の中から飛び出した。


 明瞭になった視界の中で、魔王の姿が大きく映る。彼は標的のすぐそばまで来ていた。


 周囲に水を散らしながら、将也は右拳を振り上げる。風と地の力に聖者の魔力が重なり、水魔を一突きで撃退できる力がその手に込められた。


 将也はそのまま空中を翔け抜け、黒竜に接近。

 そして、青い腫れに向けて右拳を突き出した。


 拳は目標に激突し、青瘤に大きくめり込む。強大な魔力がそこで渦巻き、青色の腫れは盛大に破裂した。


「グギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 魔王は多大なダメージを受け、苦悶の絶叫を上げる。

 黒竜の体は水魔の支えを失い、大きくよろめいた。


 だが、このまま追撃を許すほど魔王は甘くない。青瘤の爆発とともに、衝撃波が発生した。将也はその直撃を受け、為す術も無く後方に吹き飛ばされる。


 百メートルほど飛ばされたところで、将也は風を使って体勢を立て直した。


 魔王はそこで再び吠える。今度は赤い膨らみが強く光り出し、巨竜の周囲に無数の炎が浮かび上がった。


「次は火魔ベルブティか!」

「では、わたしの力を使うといい!」


 将也の頭にリーシャの言葉が響く。


 彼女の力強い声を受け、風聖の体に水の魔力が漲った。聖なる水が彼の周囲に現れ、風に乗って龍のように舞い踊る。


 そのとき、魔王が両翼を大きく振り下ろした。


 黒い炎が幾多にも分散し、それぞれが巨大な火炎旋風へと姿を変える。炎の竜巻は、半分が魔王を守るかのようにその周囲でうごめき、もう半分は将也に向けて動き始めた。


 大量の火炎渦が、風聖に迫る。


 海から立ち上る黒炎によって、この場は灼熱地獄と化した。あの魔炎に少しでも触れてしまえば、体が焼け崩れてしまうだろう。


 それでも、将也は臆することなく翔け出した。


 魔王に向かって宙を進み、炎巻を軽やかに避けていく。今の彼にとって、これらの炎は緩慢で、障害物にすらならなかった。


 たった数秒のうちに、将也は魔王に接近。

 彼は水のバリアを張り、速度を緩めることなく炎壁に突入した。


 とてつもない熱が将也を襲うが、水聖の力によってその身は守られる。彼は密集した火炎旋風を次々と突き破り、黒竜へと向かっていく。


 そして、彼は最後の炎巻を突き抜け、魔王に突撃した。


 将也は右肘を突き出し、そこに風と水と聖者の魔力を集中させる。そのまま飛翔速度を上げ、腹部の赤瘤に激突した。


 膨張箇所の皮が大きくへこむ。

 その直後、轟音とともに赤い膨らみが爆発した。


 火魔の力を失い、魔王はまたも苦悶の咆哮を上げる。


 巨竜の全身から衝撃波が生まれ、将也は再び百メートルほど吹き飛ばされた。


 風聖が体の自由を取り戻すのと同時に、魔王が獣のような叫び声を放つ。茶色の腫れが強く光り、魔竜の周囲に無数の巨岩が浮き上がる。


「この力はブロスのやつか!」

「だったら、あたしの出番だな!」


 メディの言葉が将也の頭にこだまする。


 騒々しい声に押され、将也の体は火の魔力で満たされた。彼の周囲に炎が現れ、風と合わさって蛇のように渦を巻く。


 それと時を同じくして、魔王が翼を大きく振った。


 巨岩が動き出し、魔王の前で合体して分厚い防壁と化す。そこから岩が浮き離れ、将也に向けて撃ち出された。


 岩の砲弾は一つでは終わらない。岩の壁から次々と放たれていく。その一つ一つが超重量を誇っていて、直撃を受ければ人の体など瞬時に潰れてしまうだろう。


 それでも将也は翔け出し、真正面から魔王に向かっていった。襲いかかってくる岩群を見切りながら、風聖は突き進む。


 そして、彼は一つも砲弾を受けることなく魔王の防壁前に到達した。


 将也は火の魔力を最大限に高め、体を聖炎で包み込む。そのまま神速で猛進し、右肩から岩の壁に突撃した。


 魔王のバリアがわずかに砕ける。しかし、彼の体はここで食い止められた。

 だが、留まってなどいられない。


 将也は魔力を振り絞り、風と炎を増大させる。そのまま強引に岩を焼き崩し、堅牢な防壁を突き破った。


 強い抵抗を受けていたこともあって、将也はバランスを崩してしまう。体が空中で回転するが、彼は体勢を整えようとはしない。


 将也は突破の勢いを殺さず、回転しながら魔王に近づく。防御する暇も与えぬ速さで迫り、茶色の瘤に右足での強烈な回し蹴りを食らわせた。


 風と火と聖者の魔力が乗った、強大な一撃。これを受け、膨張部分はあっけなく爆発四散した。


 魔王は三度目の絶叫を上げ、衝撃波で将也を吹き飛ばした。


 将也はまた百メートルほど引き剥がされてしまう。だが、魔王の力が弱まっているのか、彼はダメージをほとんど感じなかった。


 空中で体勢を立て直し、将也は黒竜に目を向ける。

 そのとき、魔王が腹の底から吠え出した。


 次の瞬間、腹部にたった一つ残った緑色の腫れが強烈に光を放ち、魔王の周囲に暴風が巻き起こった。


「この力はヤシロか! だったら、皆の魔力を風に使うぜ!」


 将也は仲間に託された力を自らの属性魔法に使い、全身に強力な風を纏わせる。


 その直後、魔王が両翼を激しく薙いだ。それとともに破滅的な威力を持った風が、魔竜を中心に全方位へと放たれた。


 その力は風魔ヤシロを遥かに超える。並の物体ならば、この黒風を受けただけで消滅してしまうだろう。


 だが、将也は風の聖者。この魔風に対抗できる存在だ。

 将也は勇んで翔け出し、黒い暴風と正面衝突した。


 最初は煽られそうになった。それでも将也は向かってくる風を打ち消し、黒風に割って入った。


 魔風の威力は凄まじい。消去が追いつかない。風聖が全力で張っているバリアでさえも、次々と剥ぎ取られていく。


 そんな状況でも将也は物怖じせず、暴風の中を針のように突き進んだ。

 風のバリアが崩れるのと同時に、彼は黒風の中から抜け出す。


 そこは無風だった。

 魔王の巨体が、ただ静かに空中で佇んでいた。


 将也は加速した。彼は両手を握り合わせて大きく振りかぶる。拳に強力な風を纏わせ、聖者の魔力を集中させる。


 再び光を強める緑瘤に、将也は視線を突き刺した。


「ワンパターンなんだよテメエは!」


 将也は怒鳴り声を上げ、魔王の懐に入り込む。

 そして、緑色の腫れに、全力で両拳を叩きつけた。


 強大な風の力と聖者の魔力を乗せた、渾身の一打。これを受け、最後の膨張部はあっけなく破裂した。爆発音が空気を激しく震わせ、黒い霧が周囲に撒き散らされる。


 風魔の助けを失い、魔王は苦しみ悶えた。その巨体が暴れ、長い手足と尻尾が何度も空を切る。


 衝撃波は起こらなかった。

 将也は打撃の勢いのまま、回転しながら魔王の下へと落ちていく。


「は!? 吹き飛ばさねえのかよ!?」


 将也は思わず困惑してしまった。

 そんな彼の頭に、ルシアの言葉が響く。


「今の魔王にそんな力は残っていません! 三魔将とヤシロの力を失った今、魔王は姿を保つことすらできないはずです!」


 彼女の声は興奮を隠し切れていなかった。

 将也は風を使って空中で静止した後、体ごと上を向いて魔王を見た。


 ルシアの言う通り、魔族の首領はもはや動くことすらままならない状態だった。巨竜の至るところから黒い霧が吹き出し、全身の輪郭がさらにぼやけていく。だが、このまま消えてくれそうな気配は無い。


 将也は胸の前で両拳を合わせ、声を張り上げる。


「だったら、早く封印しようぜ! 力を貸せ! ルシア! 俺がトドメを刺してやる!」


「ええ! 最後の一撃、盛大にやっちゃってください!」


 ルシアの弾けるような声とともに、将也の体が強い白光に包まれる。途方もない量の浄魔の力が彼の全身を満たした。


 魔王が将也に視線を向ける。危機を感じているのか、その黒い目は大きく見開かれていた。


 将也は下に風を放ち、魔王に向けて大きく舞い上がった。

 迫ってくる風聖を薙ぎ払おうと、黒竜は両腕を振る。


 超硬質のかぎ爪を備えたその一撃を受ければ、今の将也であっても大ダメージは免れない。


 将也は冷静に、その攻撃を目で捉えた。

 振り下ろされた魔王の右手を、彼は体を左にずらして回避する。


 魔王は間髪入れずに左手を横に振った。


 その刹那、将也はその場に急停止した。魔王の目測が誤り、その殴打は空振りに終わる。


 ここで、魔王に隙が生まれた。


 将也はこれを好機と見て再び急上昇する。大竜に最接近し、腕の間をすり抜け、その頭を飛び越える。


 倒すべき敵を眼下に収め、将也は束の間そこに滞空する。

 そして、魔王の額に向けて急降下した。


 将也は両手を突き出し、目標に向かっていく。空を突き抜けるその姿は、まさに矢のよう。


 魔王は顔を上に向け、その白い矢を見た。


 それはあまりにも速かった。魔王は何もできなかった。世界が止まったかのような錯覚が、魔王と風聖に訪れた。


 一瞬の静寂。そして、時が動き出した。

 将也の両手が、魔竜の額に激突する。


 硬い鱗が粉砕され、皮膚が突き破られる。両腕が深々と突き刺さり、そこから大量の黒い霧が噴き出した。


 将也はありったけの魔力を魔王の体内に流し込んだ。


 四聖と、彼女らを束ねる大魔法使いの魔力が、魔王の体に浸透していく。ほんの数秒で、黒竜の全身が白い光に包まれた。


「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 魔王の断末魔が黒い空に響き渡る。

 その直後、巨竜の体は崩壊し、白い光とともに弾け飛んだ。


 魔竜は黒い霧へと姿を変え、爆散する。大量の霧が撒き散らされ、将也の周りは黒一色に染められた。

 魔王の残骸粒子は数秒ほど空中を漂った後、吸い込まれるように魔族島へと向かっていった。





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