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第29話 強襲、魔族島!

 大魔法使い一行の五人は魔族島の南端に到着した。


 転移魔法の黄色い光が消え、少女たちは敵本拠地に足を着ける。その直後、ルシアが右手で頭を押さえながらよろめき、地面に片膝をついた。


「おい! 大丈夫か!」


 将也はルシアに駆け寄り、その体を支える。


 彼女は苦しそうな表情を浮かべながら頭から手を離し、いつも通りの気の抜けた笑顔を将也に見せた。


「ええ、大丈夫です……魔力が少し乱れただけですから。やっぱり、この島に来ると調子が狂いますね。転移魔法も使えませんし」


「それについては、わたくしも同じです。魔族島の空気は独特ですから、遠くへ行こうとすると転移先がずれてしまいます。近くならば問題はありませんが」


 ルシアに続いてアイリスがため息を漏らす。


 しかし、主人と違って地聖に不調は見られない。その両手には大斧が携えられていて、早く戦いたいと言わんばかりに全身が小刻みに揺れている。


 将也はメディとリーシャに目を向ける。

 この二人には、特に変わった様子が無かった。


「あたしは特に感じねぇけどな。火の魔法も治癒魔法もいつも通り使えそうだぜ」

「わたしもだ。いつもと変わらない」


 二人はそう言って首や肩をゆっくりと回し、これからの戦闘に備えている。彼女たちの手に武器は無い。その落ち着いた姿が、将也には頼もしく見えた。


「ふぅ、ちょっと慣れてきました。いけそうです」


 ルシアは大きく息を吐きながら、両足を踏み締めて立ち上がる。

 そして、彼女は遠くに見える巨大な城を指差した。


 その西洋風の黒い城が、彼女たちの目的地だ。城の上空は真っ黒な雲で覆われ、黒雲の中で赤い雷が轟いている。とてつもなく強大で禍々しい魔力がそこに渦巻いているということを、将也は感じ取った。


「では、行きますよ! 魔王の復活を阻止するため、あの魔王城へ! レディゴー!」


 突如、ルシアは大きな声で宣言して走り出した。

 リーシャ、メディ、アイリスの三人も、主人と同時にスタートを切って駆けていく。


「うぇ!? ちょっ、待って!」


 いきなりの出走に将也は戸惑った。

 出遅れてしまったが、彼もすぐに走り出して四人の後を追う。


 五人が走っているのは、黒い土に覆われた広い直線道路だ。道の両側には黒緑色の森林が存在している。この道を真っすぐ行けば、魔王城に辿り着ける。


 走り出してから一分も経たないうちに、将也は仲間たちに追いついた。

 そんな彼に対し、ルシアは前を向いたまま嘲笑と叱咤の混ざった声を浴びせる。


「なにやってるんですかショウヤ! 今は一分一秒を争うんですよ!」


「わ、わりぃ! てっきり俺の魔法で飛んで行くのかと思ってた!」


「そんなことしたら目立ちすぎて集中攻撃を受けちゃいますよ! 戦闘回数も増えます! 走って行ったほうが結果的には時間を短縮できるんです!」


 ルシアがそう言った直後、右斜め前方の茂みから小鬼型の魔物が五体現れた。それらは棍棒や剣を片手に構えて、彼女たちに襲いかかろうと走ってきた。


 その魔族小隊を見て、ルシアは声を上げる。


「ええい! あんなのは無視無視無視! バリアも張りませんよ! 記録しなきゃいけなくなりますからね!」


 ルシアはふざけ半分本気半分の口調でそう言って、走り続けた。


 そして、彼女はスピードを上げて集団から一人飛び出た。彼女はそのまま魔物に近づく動作をした後、一転して魔物から遠ざかった。


 単純なフェイントだ。しかし、魔物たちはそれに引っかかって武器を振ってしまう。当然のようにその攻撃は空振りし、魔族兵は体勢を崩す。


 その隙に、ルシアたち五人は敵小隊の横を走り抜けていった。


 大魔法使い一行は足を緩めることなく、互いに距離を取り合いながら魔王城に向けて駆けていく。そんな彼女たちの後ろを、小鬼隊が追いかける。


 その後も大魔法使いと四聖者の前には、獣人、四足の獣、ガイコツ系、ゾンビ系、幽体系の魔物が次々と立ち塞がった。それでも、彼女たちは最初の敵と同じようにフェイントをかけて戦闘を避けていった。


 追跡してくる魔物は増える一方。だが、雑兵に構っている暇は無い。魔王の復活はすぐそこまで迫っているのだ。


 五人は薄暗い不気味な島を、ひたすらに駆け抜けた。




 そして彼女たちの前に、城郭の大門が見えてきた。あれを越えれば魔王城の内部に突入できる。そのまま本丸まで行けば、魔王の復活を阻止できる。


 ルシアたちは走り、森を抜けた。


 そのとき、大門の前に三つの雷がほとばしった。青、赤、茶色の稲妻が地面を抉り、周囲に轟音を響かせる。


 その雷が消えた直後、城門の前に三体の魔物が姿を現した。


 二メートルの身長を誇る、青白い肌をした人型の女、水魔ウィシュチェル。赤黒く燃える体毛を逆立たせた、高さ三メートルを超える半人半馬、火魔ベルブティ。短脚長腕の、体長五メートルを超える筋骨隆々の獣人、地魔ブロス。


 この島に撤退していた三魔将が、大魔法使いたちの前に立ち塞がった。


「封印の者、ここから先へは行かせぬぞ!」

「我らが悲願のため、貴様らを止める!」

「邪魔ヲ、スルナッ!」


 三魔は殺気立った目で、ルシアたちを睨み付ける。


 本拠地に居るためか、復活した三体の魔力は大陸での戦いの時よりも大きい。その威圧感は相当なもので、大魔法使い一行を追跡していた魔族兵が一斉に足を止めてしまう程だ。


 それでも、五人の少女は怯まなかった。

 ルシアは走りながら、従者たちに指示を飛ばす。


「さすがに三魔将は素通りできませんよね……いいですか皆さん! 集団戦を避けて各個撃破してください! 水聖リーシャは火魔ベルブティを、火聖メディは地魔ブロスを、地聖アイリスは水魔ウィシュチェルをお願いします! 私とショウヤは先に城の中へ突入します!」


「承知した!」

「瞬殺してやらあ!」

「余裕です!」


 将也以外の三聖者は強気の声を上げる。


 彼女たちの後ろ、遠く離れたところに魔物の群れがいる。その魔族雑兵は全員立ちすくんでいるが、時間が経てば動き出すだろう。そうなれば、聖者は三魔将と挟み撃ちにされてしまう。彼女たちに許される時間は少ない。


 大魔法使い一行と三魔将との距離が近づく。


 三体の強魔が魔力を活性化させ、臨戦態勢に入る。魔王の復活という悲願を達成するため、奴らは死に物狂いで向かってくるだろう。


 そして、三魔将の全身が強く光った。それぞれが強力な魔法攻撃を放とうとしているようだ。


 その瞬間、ルシアが口を大きく開いた。


「リーシャ! メディ! アイリス! お願いします!」


 その呼びかけは攻撃開始の合図だ。

 三人は返事をすることなく前へ飛び出した。


 リーシャは火魔に向けて水塊を放つ。メディは地魔に上空から火炎を浴びせる。アイリスは水魔の足下の土を操り、敵の全身を覆い尽くして圧力をかけた。


 三人は先制の魔法攻撃を仕掛けながら、標的に向かって全力で走る。


 火魔は聖なる水を受けて怯み、地魔は聖炎を受けて脱力し、水魔は聖土によって身動きが取れない。


 だが、所詮は弱魔法による不意打ちだ。

 三魔将はすぐに魔力を放ち、抵抗を開始した。


 三聖者は敵へと接近する。


 その間に、水が蒸発し、火炎が止み、土の拘束が崩れた。聖なる魔力と邪悪な魔力が相殺され、三魔将に明確な視界が戻る。


 それと同時に、三聖者はそれぞれの標的に向けて飛びかかった。


 水聖リーシャは火魔ベルブティの馬体を蹴ってその体を大きく飛ばし、堀の水中に落下させる。


 火聖メディは地魔ブロスの頭に体当たりをし、背中から転倒させる。


 地聖アイリスは左手で水魔ウィシュチェルの顔を鷲掴みにし、その体を近くの森へと投げ飛ばす。


 三人の速攻により、城門前に集っていた三魔将は一瞬のうちに分断された。

 少女たちは将也とルシアに背を向けたまま叫ぶ。


「行け!」

「あたしらがトドメを刺す!」

「ルシアとショウヤは急いでください!」


 リーシャは二人に短く呼びかけるや否や堀へ飛び込み、メディは空中で宣言をしてブロスの前に着地し、アイリスは二人に前進を要求しながら森の中へ駆けこんでいった。


「頼みましたよ!」

「ルシアのことは俺に任せろ!」


 ルシアと将也は仲間の三人にそう声をかけ、ブロスの横を走り抜ける。


「ウィンドジャンプ!」


 将也は風魔法を発動し、ルシアとともに飛び上がって門を越え、城内へと突入していった。


「上手くやれよ、大魔法使いさんよ」


 二人の背中を見ながら、メディは不敵に微笑んだ。






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