26チュン目
午前中の図書館は静かで調べ物には最適です。
皆様。おはようございます。
わたしは今、城の図書館で調べ物をしている。
どうしてもエドとシェリルちゃんの関係が気になって仕方が無かったのだ。
家系図は確かに腹違いである。
出生日時には確かに1時間ほどエドが早い。
勿論、この記録が正しい物ならば。人の作ったものなどいくらでも改ざんできてしまうのだ。単純に信じては罠に嵌る。
秘密にした方がと言った割にこうして調べているのは、シェリルちゃんの中に残っている微かな魔力が気になったから。わたしはこれが病気の原因ではないかと思っている。
その微かな魔力はエドの魔力と同じ物。わたしが今まで見た人の中で同じ魔力を持った人物を2人以上見た事が無い。昨日感じた違和感はどうやら魔力によるものだったらしい。
魔法に関する文献を漁れば、魔力は人それぞれ違い様々な性質を持つらしい。過去の記録ではこの性質が同じだった者は存在しない。
それとやけに魔法に関する蔵書が多い。ここは工業都市で魔道具生産も有るからと流していたが、魔法や精霊の研究そのものはリバーダムの方が盛んだった。でもそれより蔵書が多いとは裏を勘繰ってしまう。
「はぁーーーー」
久しぶりの図書館漁りだ。いつ振りだろう?
調べ物は苦手ではないけど、これを暴いてしまっていいものかまだ悩んでいる。
でも、もし2人が非人道的な物事の犠牲になっているのであれば見過ごす訳にはいかない。
それが2人の生活。もっと言えば国全体、いやこの西側全体にも影響するかもしれないと思うとここまでにして何も気がつかなかったとしてしまった方が良いのでは?
幸い当事者の2人は知らないのだから。
「……でももうこの記事を見てしまったんだよな……」
ディスクに広げられた一冊の分厚い魔導書。
チェーンで繋がれ、鍵が無いと閲覧できない特別な本。
お使い様である事を理由に許可を取り付けた。
そこに書かれていた実験ははこうだ。
犬型の魔物の場合、産まれる前の魔物は胎内で兄弟の魔力を吸収し、優秀な個体1体とその他を出産する。
優秀な個体はより強い魔力を持って成長するが、その他の個体は病弱で寿命が短い。
この強力な個体を意図的に産み出せないかという実験を行った。
結論から言えば、選定した個体に対し魔力を当て、吸収を誘発することで可能である。
複数の魔物で行い効果を確認した。
なお、人間では双生児そのものが希少であり結果として十分な検証が行えないものと考えられる。
よって、人間に適応性は不明とする。
「はーーー。これ、無視できないですよね?」
「えぇ、どこで気がついたか分らないけど分ってくれて嬉しいわ」
本棚の影から現れたのはシャーリーさんだった。
「その気がついたってどっちにかかってるの?」
「どちらも?」
「エドとシェリルちゃんの関係なら、2人を一緒に見たから。シャーリーさんはわたしがこの本を開いた時から」
「お使い様って見た目より遥かにお利口さんなのかしら?」
これはアレかな?チッお前のような頭の切れるやつは嫌いだよって言う。
「口封じする?」
「まさか?私は2人を、いえ、シェリル様を助けたいの」
シェリルちゃんを助けたいか……これはまだ解決策が見えないんだよね。
「シャーリーさんは全部知ってるの?」
「見ていた訳ではないの。王妃様の妊娠が分った頃、お母様とも離されてしまったから。理由はお母様も妊娠したから。でもそんなことは初めてだったし、そんな気配は全く無かったの。」
「それで?」
「私が気がついたのは、シェリル様が熱を出して苦しそうだったから額に触れた時なの。神代武術は繊細に魔力を扱うものだから無意識に魔力を感じ取ってしまって。後は貴女と同じ様に調べたわ」
「なるほどね」
わたしがシェリルちゃんの魔力を感じ取ったのは、吸収能力が影響していると思う。魔力に味を感じるほど繊細に質を見分けられる。
シャーリーさんの言う神代武術。これも相当繊細なのだろう。素人を無造作にポイポイ投げ捨てても怪我させないのだから。
おそらく、今のリリィには見分けがつかないだろう。将来的には分らないけど。
後はどれだけの大人が知っているか。
ウィンダムの上層部は全員知っていると考えよう。出なければこんな大掛かりな事がで気ない。
リバーダム側は?
これは勘に過ぎないけどエリザベート后は絶対知らない。知っていたらこんな事を許さない。
他は分らないなぁ。あまり関わってないし。
「何故、エドに魔力を与えたかったのか……」
「それは次代の話ね」
「と言うと?」
「今はエリザベート様やリリーナ様が強い魔力を持っているからリバーダムの発言力が強いの」
「そうみたいだね」
「お父様達ウィンダムの上層部はそれが気に入らないみたいなの」
「そんな野心家には見えなかったけどねぇ……」
「たきつけてるのは家の馬鹿兄貴3人よ。魔力も無く実験もできない癖に変な理論ばかり組み立てやがって!」
ダン!
「ちょっと、落ち着いて」
「ごめんなさい。……えーっとそうそう、それで運の悪い事に机上の空論がエドワード様で成功してしまった。シェリル様を犠牲にしてね」
肯いて続きを促す。
「魔力を持ったエドワード様とリリーナ様のお子が産まれて、何人産まれるかは分らないけど、次男ができればウィンダムに帰ってくる事になるわ」
「うん、そうだろうね」
「ここで重要なのはお2人のお子よ。魔力持ち同士の子どもは確実に魔力持ちなの」
「へぇー。つまりより強い魔力持ちの男子を席に据えて発言力を上げようって訳だ?」
「その通りよ。察しが良くて助かるわ」
「はー?気の長い事考えるものだね?」
「お父様はどうか知らないけど、そのお子が王座に座った時に馬鹿兄貴共が生きていれば牛耳ろうって訳じゃないのかしら?陰湿で気持ち悪いわ」
「でも計画としてはちょっと甘いよね。少しでも気がつかせないようにするために完全に隔離するとか、それこそシェリルちゃん出産時の事故だと殺してしまうとか選択肢も有った訳だし」
「……貴女、結構残酷ね」
「わたしも生きるのに必死だったので?事実は分ったけど、もう起こってしまった事をどうしたいの?裁きたい訳じゃないんでしょ?」
「そう。わたしはシェリル様を助けたいだけなの」
「残念だけど、その方法は分らない」
「そう……」
助ける方法ねぇ……何か手が有るのかなぁ?




