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気楽(コモド)な悪友 side須直

 高校を卒業してもうすぐ二年。

 そろそろクラスの同窓会でもしようかという流れになった。


 実行委員に選任されてしまった俺。

 今はレストランの裏方で働いている。

 レストランを選んだ理由は単純に、まかないでメシ代が浮くから。


 仕事を終えて私服に着替えていると、実行委員の一人、横井からメッセージが来た。


『ハートフルベイビーがおねちゅだから行けなくなったわメンゴ』


 うっかりスマホを投げそうになった。

 相変わらずアホだな横井。


『わかったけど、メッセージくらい普通に書けや』と返す。


 横井のやつは、高三のとき彼女と結婚した。

 そんで去年子どもが生まれた。

 あいつ、よく働けてるな、この文章力で。


 喫茶店に向かう途中に残る一人、葉月からメッセージが届く。


『ついたから先に店入ってるね』


 OKと返して店に急いだ。

 店に入ると、窓際のカウンター席に葉月がいた。

 俺はレジでパンとドリンクのセットを注文して、呼び出しベルを受け取り隣の席につく。


「おまたせー」

「おそーい。ジュース二杯目なんだけど」

「これでも急いだんだぞ。……てかいくつ食ってんだよ」


 葉月のトレーにはドーナツの空き袋が何枚も乗っていた。


「この機会に新作片っ端からためした」

「太るぞ」

「そういうこと平気で言うからいまだにフリーなんだよ」

「そっちこそ」


 俺達は高校を卒業と同時に、嘘の恋人を解消した。

 お互い、「これ以上演技しなくてよくね?」ってことできれいサッパリ。


「横井は子どもが熱出したから来ないってさ」

「りょー。じゃ始めちゃお」


 葉月はリストを引っ張り出して、同窓会参加メンバーの出欠を見せてくる。

 メッセージアプリを使ってないクラスメイトもいるから、このデジタル時代にハガキでの確認になっていた。


 担任のふくちゃん先生と、八割がたのやつがこれるようになっている。

 欠席で返してきたのは、だいたい神奈川を離れたやつ。

 交通費ばかにならないもんな。



「響司と阿部はさすがに来れないか」

「あはは。同窓会のためだけにウィーンから来るなんて、さすがに無理だよ」


 響司と阿部はウィーンの音大に進学した。


 響司は、阿部のばあちゃんちに下宿中だ。

 感想を聞いたら、『一日中ピアノを弾いていられて楽しい。ごはんが美味しい』と期待と違う方向の返事が来た。

 もっとこう、あるだろ、彼女と同じ屋根の下なんだから。


 真面目君め。


 ピピピ、とベルが鳴って、注文したものを取りに行く。

 席に戻ると、葉月が呆れ顔になった。


「ホットドッグと牛乳、相変わらずだねぇ……」

「牛乳があるから栄養満点だぞ。ジュースとドーナツのひとに言われたくねー」


「私は朝夕家のごはん食べてるし」

「俺だってまかないで定食くってるから」


 なんとも不毛な言い合いだ。

 本来の目的どこいった。



「沢くんって、友だちとしてならありなんだけどねぇ」

「ハハッ、すっげー含みある言い方腹立つわぁ。だから彼氏できないんだぞ」 


「仲居は基本女の人しかいないもん。男の人いても厨房のおじさん、おじいちゃんくらいだしさ。そっちの職場にいい人いたら紹介してよ」


「こっちは洗い場だぞ? 基本おばちゃんか、夏休みだけの高校生しかいねぇよ」


「うー、出会いがないぃ。私だってラブラブデートしてみたいよぅ」


 彼氏欲しいと連呼する姿に、笑うしかない。


「あ~、そうだ。沢くん年上の女性興味ない? 私の指導係してくれてたユメさんって、明るくて楽しいひとなの。フリーだって言ってた」


「つきあったら一挙一動葉月に筒抜けになりそうだから、なんかやだ」


 洗い場のおばちゃんも、暇な時間帯になると旦那のグチ言ってくるもん。

 ユメさんとやらがおばちゃんと同類とは思わないけど、警戒したくはなる。



 とりあえず集計が終わったし、同窓会会場の店に最終人数の電話をいれる。

 あとは当日会費を集めればよし。


「よし、食ったし帰るかー」

「えー、せっかくだからカラオケとか行こうよ」

「やだよ。俺明日仲間とバスケする約束あるから、早く寝たい」

「つきあい悪ぅ」



 トレーを返却口にかえして、店を出る。


「それじゃ、次に会うのは同窓会当日かな」

「うん、そだね。またねー」


 手を振って散会。

 もう店の外はすっかり暗くなっている。


 ピコンとスマホが鳴り、ホームに通知が出た。

 親父からだ。


『もうすぐ帰るから風呂沸かしとけ』

 

 OKと返してポケットにスマホを突っ込む。


 楽しそうに腕を組んで歩くカップルとすれ違う。

 

 五年後、十年後の俺はどうか知らないけど、今はまだ彼女ほしいなーとか思わないし、仲間とバスケするのが楽しい。

 それでじゅうぶんだ。


 明日の試合のことを考えて、アパートまでの帰路を走った。 






 後日談(カーテンコール) 気楽(コモド)な悪友 fine

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