38. 世界会議と宇宙移住計画
(世界会議と宇宙移住計画)
「茜……、仕事だ。社長の秘書として世界会議に同行してくれ」
「いやよ……、おじさんの相手なんて……」
「ご指名だ……、茜がいいそうだ」
「何、それ……、キャバクラじゃーないのよ。お姉さんが行けばいいじゃないのよ。娘なんだから……?」
「スミレは、拒絶された。冷たくて、口うるさいそうだ」
「ちょっと、待ってよ……、私が冷酷な女みたいじゃない」
「そういう事だ……、社長は茜がお気に入りだ!」
「いやよ……、他に若いヒロみたいな優しい男はいないの……?」
「お褒めにあずかり光栄ですが……」
「そうよ……、世界会議なら、ヒロちゃんが行けばいいじゃないのよ。ベガの責任者よ。私がしっかり秘書を務めるから……」
「いえ、責任者になった覚えはないですが……」
「ヒロでは荷が重すぎる……、この世界会議は、地球を二分する。宇宙に移住する者と、地球に残る者……、全ての人類が移住できないのだ」
「それぞれの国で、各都市で、街や村で争いが起きるというの……?」
「そう、させないための世界会議だ。だから、秘密裏にスイスのケンタウル舎の支社で行う。国際会議場を備えているから……」
「でも、そんな話……、まとまるわけないじゃないのよ!」
「まとまった国、民族から、宇宙移住していく、揉めている国、民族は後回しだ……、宇宙コロニーでも限界がある。誰も、無理してでも宇宙に出ろとは言っていない……」
「そうね……、難しい選択ね……」
「それでも、いわゆる先進国二十っか国は、移住者リストを出している。それをベガがもう一度、選別して、有能な人材と地球を喰いつぶす人間を選んで、再度、移住者リストとして各国に渡している。この世界会議が最終的な各国の了承になる。そして、その送り出す順番を決める」
「揉めそうね……」
「だから親父の力が必要なんだ。今まで、宇宙開発を一人で背負ってきた親父の力が……」
「珍しいわね……、カズヤが、お父さんを褒めるなんて……」
「褒めちゃーいないよ。今でも、俺は怒っているよ。地球環境の破壊で、このまま進めば、人類が住めなくなると分かった親父が、地球環境を守ることよりも、地球を脱出するための宇宙開発を進めたことを……」
「それで貴方は、お母さんと家を出た……」
「スミレは良く、親父に付いていてくれたよ」
「しょうがないじゃない……、私しかいないんだから……、でも、その宇宙開発事業のおかげで人類は、救われるのよ」
「確かに、親父の先見の明で、予想通りに地球は滅びの道を真っしぐらに進んでしまった。その先手を取って、宇宙開発に乗り出した親父の勝ちだが……、しかし、遅すぎた。親父の力で地球脱出できる人類は、ほんの一部だけだ。後は、地球の環境破壊と共に死滅する」
「でも、それは、お父さんの責任じゃーないわ……」
「分かっているよ……、だから、俺は、この通り親父に協力しているじゃないか……」
「そして、貴方もこの結果について、責められる立場よ。地球が破滅するのが分かっていて、お母さんと逃げたのだから……」
「いや、違う。俺は地球が存続するための方法をコンピューターに探させた。その結果がベガだ。しかし、これも遅すぎた。ベガが自立した頃、地球環境は手の施しようのないところまで来ていた。これも親父の言うように、進化してきた人間の業だ。止められない」
「だから、お父さんは、人間の業に賭けて、進化し続ける人間として、宇宙に出ればいいと思ったのよ」
「そうだな……、でも、親父は一つ計算違いをしていたぞ。ヒロの存在だ。ヒロがベガに与える影響を考えていなかった。でも、俺は考えていたぞ……、ヒロが、世界を救ってくれることを……、まだ、救ってはくれないけどな……」
「ちょっと、ちょっと待ってくれ……、俺は、まだ何もしていないぞ!」
「ヒロは、それでいい……、今のままでいいんだよ。ヒロの心は、ベガの心として受け継がれている。それが、最大の功績だ……」
「そうね……、私とお兄ちゃんだけなら、ベガをここまで、人間に成長させる事はできなかったものね。ヒロは、やっぱり凄いわ……」
「ちょっと、ちょっと、その言い方は引っかかるけど、二人で俺を馬鹿にしていないか?」
「そんなことないわよ……、茜が惚れるくらいのいい男よ……、私もね……」
「お姉さん、どさくさに紛れて告白しないでよ。ヒロは、私の物だからね。私の裸を抱いたんだから……」
「それなら、私も、裸でヒロに抱かれたわ……」
「いえ、そんな露骨に言わなくても……」
「え、え、ヒロ……、いつお姉さんを抱いたのよ……?」
「そんな、僕、何もしてませんて……」
「茜……、なんでもいいけど……、親父の秘書は頼んだぞ!」
「よくないわよ……、それなら、今やっている宇宙船資材の運送は、どうするのよ?」
「それも、すでに手を打ってある。手の空いている社員がいなかったから、スパイを失業するリュウとヒカルに頼んだ」
「え、リュウとヒカルさんですか……?」
「ちょうど、帯広の庁舎にいたので、捕まえた。二人はヒロと同時に観察していたので、ベガのお墨付きだ」
「ジャージーホームが困りませんか……?」
「ジャージーホームは、ヒカルのお眼鏡にかなった立派な社員がたくさんいるので大丈夫だろう」
「ちょっと、私はどうなるのよ……?」
「茜は当分……、社長秘書だ。超極秘事項が多いから、他の者には任せられん」
「え、えー、……」
「社長秘書は、いいぞ。レセプションで超一流の美味しいものがたべられるぞ……」
「私を食べ物で釣る気ね。そんな餌では釣れないわよ。それよりもヒロの傍の方がいいわ」
「お……、茜も成長したな……」
「違うわよ……、茜も三十も過ぎて、焦っているだけよ……」
「言ったわね……、お姉さんみたいに、ならないためよ!」
「言ったわね……、茜なんか、今度空に上がってきたら、裸にして、ロープで縛り上げて、鞭で叩いてやるから……」
「ダメよ……、そんな気持ちのいいこと……、癖になるじゃない……」
「もう、いいから……、二人とも仲良くな……」、カズヤは、そう言って姿を消した……




