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37. 地球脱出と宇宙コロニー

(地球脱出と宇宙コロニー)


 海の底は薄暗く、海の深さを示していた。

 プラネタリウムの様なドームスクリーンに映し出されているスミレさんは、薄暗い海底の風景の中で映えていた。

「いえいえ、それは振ったの、振られたのという以前の問題で、二人の進む道が違っていただけですよ」

「私は、ヒロに宇宙ステーションに来てもらいたかったわ」

「僕だって、天文台に来て欲しかったですよ」

「私の裸だけでは、誘えなかったのね……」

「その言い方も、誤解を生みそうですが……」

「お姉さんの裸だけではダメよ……、私の裸なら付いてくるわ。今からでも遅くないから、ヒロを宇宙に連れて行く……」

 茜さんは、キャミソールをめくりあげようとした。その時……

「お、いいところに来た。茜の裸が見られる……」

 そう言ってスクリーンに現れたのがカズヤ教授だった。

「もうー、……、おじさんには見せないのよ」、茜さんは、脱ぐのをやめた。

「カズヤ……、お前……、俺を国防軍に売ったな……?」

「人聞きの悪いことを言うなよ。国防軍が勝手にやったことだ」

「しかしだな……、助けにも来ないで、一年近くも臭い飯を食わされたぞ!」

「でも、そのお陰で、三億円もせしめたじゃないか……」

「あれ、知っていた……」

「当たり前だ……、ベガの前で堂々と賄賂を要求するとは、見上げた根性だ」

「まー、お互いに、ウイン、ウインだな……」

「まー、そう言うことにしておこう。それより清里に帰ったら、天文台を頼む……、かなり国防軍に荒らされたみたいだ。俺は、まだ当分帰れそうにない。ハルナと一緒に適当に再開しておいてくれ。太陽の観測だけは進めてくれよ。この一年できなかったからな……」

「太陽の観測なら宇宙の方が正確に測れるだろう……?」

「もちろん、やっているさ……、でも、コロニー建設も忙しいんだよ。でも、確かに太陽は最大の活動期に入っているようだ。それが、地球の大気汚染のお陰で、必要以上の温暖化をもたらしている」

「運の悪いことだな。太陽の活動周期の極大値と地球の大気汚染の最大値が重なったか」

「メタンハイドレートが融解を始めた。大気汚染の数値はさらに加速して上がっている」

「止められないのか……?」

「いや、止められる。メタンハイドレートの融解以上の人間が排出する、メタンを始めとする温室効果ガスを止めればいい……」

「できるのか……?」

「それをやらねば、地球上の生物は死滅する。いつか地球も火星のような星になってしまうかも知れない」

「それも困るな……」

「そう言うことだ……」

「でも、俺たち解雇されたんじゃないのか……?」

「それも国防軍が勝手にやったことだ。国防軍が消滅した今、解雇は無効だ……」

「それじゃー、また給与が入るな」

「でも、ヒロは今、国防軍から自衛隊に編入されたから公務員扱いだぞ。除隊してから、再雇用だ」

「どちらでもいいさ……、給与さえ入れば、ハルナは、文句を言わないよ」

「ちょっと待ってよ。ハルナって誰よ……?」

 茜さんが、僕とカズヤを代わる代わる睨んで言った。

「え、僕の好きな人……」

「ヒロー、浮気したのね。私の裸を抱いて好きと言ったくせに……」

「それは、……、もちろん、茜さんも好きですよ」

「じゃー、彼女は、何……?」

「えー、……、茜さんも、スミレさんも、ハルナも、皆んな僕の好きな人です」

「何、それ……、ハーレムでも作ろうと思っているの……?」

「茜、ハルナさんには勝てないのよ……、彼女は、まだ二十六歳の小娘よ……」

「嘘……、若い……、大人の女を知らない子供じゃない!」

「え、言っている意味が分かりませんが……?」

「ヒロって、ロリコンだったのね!」

「いえ、そこまで、ハルナは子供ではないですが……、お姉さんたちの様に、やることが、とっても大胆で、とっても優しい子です」

「お、お姉さんって言ったわね!」

「いや、その……、……、そう言う意味じゃなくて……」

「茜……、もうー、いいから、帰ってきなさい。私が抱いてあげるから……」

「お姉さん……、私、悔しい……、悲しい……」

「でも、スミレさん、どうしてハルナのことを知っているんですか……?」

「何を言っているのよ……、宇宙からは、貴方のことは、全部すっかり、お見通しよ……」

「ベガ……、個人情報を漏らしな……?」

「いえ、その……、スミレさんに言わないと、電源を切ると、脅迫されたので……」

「あら……、私、そんな酷いこと言ったかしら……」

「スミレさん……、それはベガが、かわいそうだ。他に何を知っているんですか……?」

「ハルナのこと……? 身長一六八センチ、バスト八八、ウエスト六二、ヒップ九〇ってこと……?」

「え、私と一緒……」

「茜……、あんた、最近、太ったから、ハルナには負けているわよ……」

「私、地球に来て、走り回されているから、痩せたわよ……」

「ベガ……、それもハルナの個人情報だ!」

「スミレさんが、測れって、言ったので……」

「スミレさん、またベガを脅したんですね……」

「逢いたい……?」

「また、そう言って、ごまかして……」

「逢いたくないの……?」

「そうですね……、ちょっと怖いですね……、一年以上も逢ってないから……」

「私は、逢いたいわ……、ベガ……、ハルナを出して……、どんな女か見たいわ!」

「茜さん。それは個人情報なので禁止されています。いわゆる、盗撮ということですので」

「ベガ……、電源切るわよ!」

「茜さん……、そこからでは電源は切れません」

「言ったわね……、じゃー、もう私の体に触らせないから……、あれは、痴漢行為よ!」

「え、でも、あれは、茜さんが喜ぶから……」

「喜んでいないわよ……」

「もうー、二人とも止めて……、つまらない話を……」

「お姉さん……、ベガに言ってやってよ!」

「もー、いいわ……、茜にも逢わせてあげるわ」

「北海道に来た時のハルナの映像を出して……」

「え、……、ハルナ……、北海道に来たんですか……?」

「バカね……、ハルナ宛に小包を送れば、そこにヒロがいると思って、黒岩牧場まで来るに決まっているじゃないのよ!」

「手紙に家で待っているようにと書いたのに……」

「子供じゃーないんだから……、待っているわけないでしょう。それで国防軍に捕まって大変だったのよ……」

「嘘……、それで、どうしたんです……?」

「心配……、……?」

「心配ですよ……、どうなったんですか……?」

「感謝しなさい……、ベガと私で、助け出して、国防軍を追っ払ったわよ……」

「ありがとうございます。うかつでした。ただ僕が生きていることを知らせたかっただけなんですが……」

「ベガ……、カラス型ドローンからの映像を見せてやりなさい……」

 ドーム型スクリーンには、何台かの車が燃え上がり、ハルナの腕を捕まえようとした、黒服めの男が転げ回って動かなくなり、男たちが走って逃げていく映像が映し出された。

「男の人は……、死んだんですか……?」

「レザーで、蜂の巣状態で撃たれたけど、急所は外したから、生きているわ。でも入院しているけどね」

「ハルナは、まだ牧場にいるんですか……?」

「この後、すぐに清里に帰ったわ。彼女が外に出ると大変なことになるって自覚したのね」

「よかったです。ありがとうございます」

「ベガ……、ハルナの裸はないの……? 見たいわ。私より綺麗かどうか知りたい……」

「茜……、よしなさい。自信を失うから……、貴女、もう三十越えているのよ」

「女の裸は年齢じゃーないのよ。ベガ……、出しなさい……」

「奇麗な、いい映像があります」

 スクリーンに映し出されたのは、夜のベランダで、ハルナと車椅子に座ったミズエの姿だった。ハルナは裸で立っていた。

「奇麗……、……、……、……」

「茜……、分かったでしょう。貴女と同じくらい奇麗な人なのよ……、それに、どこでも裸になりたがる、貴女と同じよ……」

「いいものを見させてもらった。ヒロ……、天文台を頼んだぞ!」

「カズヤ……、俺もケンタウル舎の社員ってことか……?」

「いや、何処の私設天文台もケンタウル舎とは分離独立している。軍事には関係がない」

「しかしだがなー、……、このまま、世界をほっとけない気もするが……」

「ほっとけ、ほっとけ、俺も、こちらが片付けば、天文台に帰る。後は、親父とベガに任せておけばいいさ。世界などくだらん。他にやる事ないのかと言いたくなる……」

「そうだけど……、でも、これから宇宙コロニー、宇宙移住が始まるんだろう……?」

「これも、超極秘事項だが、移住する人間は地球にとって害がある人間と地球の環境を侵す人間だ。そう言った人間がいなくなれば、地球は再生する……、そういう事だ!」

「もしかして……、最初から仕組まれたことか、ベガの戦略か……?」

「いや……、成り行きだろう」

「成り行きか……?」

「いや、ベガの計算も入っている……」

「やはり、そうか……」

「太陽の異常な極大期を利用して、加速する環境破壊と温暖化を止めようとした。ベガにとってギリギリのところで地球を救う、またとないチャンスだった……」

「しかし、太陽は膨張しているのではないのか……?」

「太陽の放射エネルギーは、極大期を迎えて増大しているが、宇宙ステーションに来て分かった事は、太陽は膨張していない事だ。地球で膨張しているように見えたのは、加速して増加しているメタンの影響だろう。他の汚染物質の影響もあるかも知れないが……」

「それも、ベガが利用したのか……?」

「多分な……、俺たちが慌てたように……、他の学者も慌てたのさ……」

「それで、絶滅は回避できるのか……?」

「それは、ベガにも分からないだろう。人間のやる事だからな。でも存続の可能性は大だ」

「よかった……、さすがベガだ……」


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