31. 北海道に来たハルナと牧場のミズエ
(北海道に来たハルナと牧場のミズエ)
「こんにちは……」
「よく来たね……」
「お世話になります……」
春菜は、ヒロから小包が届くと、その送り先である北海道のジャージーホームに電話をした。しかし、本土からの電話は通じなかった。
居ても立っても居られない春菜は、北海道に向かった。
旭川空港に着くと、再びジャージホームに電話をしたのだった。
「電話でも話たけど、来てもらっても、ヒロさんは、もういないんだよ。それに戻って来るとは限らないし……」
「でも、いいんです。去年から、ずーと行方不明で、連絡が取れなかったんです。生きていることが分かっただけでも嬉しいんです」
「でも、もう、死んでいるかもしれないよ」
その言葉に、慌ててミズエが奥から出てきた。
「お母さん、なんてことを言うのよ。ごめんなさいね」
「いえ、覚悟は、もう、できています。連絡が取れなくなった時から……」
「しっかりしているね。それに奇麗なお嬢さんだ。まーあー、ゆっくりしていっておくれ。美味しいもの作るから……」、それだけ言うと、女将さんは奥に戻って行った。
ミズエは持ってきたジャージー乳のコップをテーブルに置いた。
「どうぞ……、ここでは、帰って来たお客さんにジャージー乳を出しているのよ」
「ありがとうございます」、春菜は、荷物を床に置くとテーブルの椅子に座った。
「貴女のお店でもジャージー乳を出しているんでしょう……? ヒロから聴いたわ」
「そうなの……、やっぱり普通の牛乳に比べたら、濃厚で美味しいわよね。うちのペンションの売りなの……、ジャージー乳を目当てに常連さんもたくさんいるのよ」
「それは、いいね……、うちでは、ジャージーホームの名前で釧路にお店があるのよ……、ホットドックとジャージー乳のお店なの。それと、ここで作った乳製品とハム、ソーセージなんかも売っているけどね」
「ヒロは、ここから釧路に行ったんですね。私も釧路に行けないかしら……?」
「さー、どうかしら。あそこは、もう露国だから、検問が厳しいみたいよ。でも、逢いたいのね……?」
「逢いたい……」、春菜の眼は潤んでいた。
「いつまで、いられるの……?」
「一週間の予定で来たんですけど……、ヒロに逢えるなら、何日でもいます」
「好きなのね。でも、ヒロは私と婚約したのよ」
「え……、……」
「でも、安心して……、肉体関係はないから……」
「そうなの……、……」
「あの人……、軽いのよ。私の体、1万円で買おうとするのよ」
「ほんと……、……」
「でも、まだ、触らせていないの」
「……、……、……」
「でも、ヒロみたいな人、好きだなー、星の話をしてくれた」
「そう……、……」
「でも、貴女も素敵ね。こんな北海道まで、当てのない男を追ってくるなんて……」
「そんな……、……」
「婚約は解消するわ。貴女には、かなわないから……、お部屋に案内するわ。来て……」
春菜は、ミズエの車椅子の後に付いて行った。
夜……、三人が夕食を済ませた頃……、耕作が帰ってきた。
「いらっしゃい……、話は聞いていますよ。奇麗なお嬢さんだ……」
「あんたの目は、そっちばかりだねー」
「あら、お母さんも、さっき、ハルさんを見て、奇麗なお嬢さんって言っていたわよ……、見るところは同じなのね」
「……、いつもこんなに遅いんですか……?」、春菜は耕作をねぎらう様に言った。
「普通は、夕方には帰れるんだけどね……、今は人で不足で、明日の帯広行きの荷物もトラックに積んできたから……、最近は、毎日こんな時間だよ」
「……、大変ですね……」
「お父さん、ハルさんが釧路のヒロさんの所に行きたいって……」
「それは、いいけど……、ヒロさんは多分、ジャージーホームの釧路支店にいると思うけど……、釧路は一応、露国だからね。安全とは行かないかもしれないよ。何かあると、すぐに国防軍に捕まるから……」
「でも、ハルさんは、それでも行きたいんでしょう。そのために北海道まで来たんだから」
春菜は、ミズエの言葉に大きく頷いた。
「まーあー、女の人だから、露国も甘く見ると思うけど、釧路行きは、明後日だ。乗って行くのなら、準備しておいてください」
「本当にいいですか、ありがとうございます」
「よかったね……、思いがかなって……」
「ちょうどいい機会だ。ちょっと来てくれないか……、ミズエも一緒に……」
三人は、キッチンの隣の部屋に案内された。
耕作は、ベッドの下から一個のスーツケースを引っ張り出して、ベッドの上に置いた。
それを開くと札束がぎっしりと詰まっていた。
「一週間前、言わなかったけど、国防軍らしい黒ずくめのサングラスの四人組が来て、三ケース置いていったんだ。いかにも、うさん臭い連中だった……」
「凄いでしょう。一つはハルさんのものよ……」
「え……、……」
「後で、ヒロさんから、この手紙をもらった」
前略、こちらは、至って平和です。みんな、いい人ばかりです。
多分ですが、こちらの条件を聞いてもらえると国防軍から3億円の賄賂が届きます。
商売上の正当なお金です。賄賂と言いながら正当でもないですが、怪しいお金ではありません。そのうち、1億円を僕の婚約者のミズエさんにあげてください。もちろん、黒岩家のものです。後1億円をリュウとヒカルさんにあげてください。
それと、残りの1億円を小包を送った大森春菜さんにあげてください。
僕が帰らなかった場合は遺言です。よろしくお願いします。
「そう言うことだ……、ヒロさんも、貴女がここに来るとは思っていないと思うから……、どうするね……、持っていくかい……」
「いえ……、それもヒロに逢って訊いてみます。でも、これを持って空港には行けないと思います」
「そうよね……」、ミズエも納得して頷いた。
「すみませんが、しばらく預かってもらえませんか……?」
「うちも、泥棒が入るんじゃないかと、ヒヤヒヤものですけどね。宿泊者用の部屋なら、鍵も確り掛けられるから、ここに置いているんですよ」
「おまけに、ベッドの下にまで入れて、隠しているのよ」
「小遣いに百万くらい持っていくかね……?」
「いえいえ、それも、ヒロに逢ってから訊いてみます」
ダイニングの方から、女将さんの声がする。
「あんた……、食事の準備ができたよ……」
「今、行くよ……」
耕作は、スーツケースを、またベッドの下に入れると部屋から出て行った。
春菜も部屋に戻った……
部屋は南向き、窓の外には広いテラスがあり、椅子とテーブルが置かれていた。
きっと天気の良い日には、このテラスでお茶を飲んだり、くつろげるのだろう。
春菜は、部屋の電気を付けないまま、テラスに出てみた。
星が降るような夜だった……
「ハルさんも星が好きなのね……」
隣の部屋からミズエが、車椅子で出てきた。
「私の部屋、ハルさんの隣の部屋なのよ」
「そうなのね……、清里と同じくらい奇麗な星空ね……、向こうでは、ヒロと良く見ていたのよ。ヒロは、天文台の学芸員だから……」
「知っているわ。それにハルさんのことも……、外で裸になることが好きなんでしょう。それと、暗くなるとすぐに寝ちゃうんだって……」
「え、えー、……、そんなこと言ったの……?」
「そう……、でも、……、それで、とてもハルさんのこと、好きになったわ」
「ほんと、嬉しいわ……」
「私にも、……、ハルさんの裸、見せて……、……」
春菜は、見上げていた顔をミズエに向けて、微笑みながら、ミズエの前に立った。
「……、いいわよ……、……」
春菜は、その場で服を全部、脱いだ。
「……、裸になると、気持ち、いいわね……、……」
テラスには、明かりがなく、ミズエの部屋の窓から少しだけ、薄暗い明かりが漏れているだけだった。
その薄明かりに、春菜の体の凹凸が怪しく鈍く照らされている。
「私に、抱かせて……、……?」
「……、1万円、払わなくてもいいの……?」
「お姉さんなら、許すわ。私が、抱きたいの……」
「そうー、……、それなら、貴女も服、脱がないと……」
「私も……、……?」
春菜は、車椅子に座っているミズエの前にひざまずいて、ワンピースの胸のボタンを外しにかかった。
「私、こんな体だから、きっと誰にも愛されずに終わると思うのよ……」
春菜は、ミズエのワンピースを胸のあたりまで下ろすとブラジャーを外した。
「大丈夫よ……、きっと良くなるわ……、一億円もあるから……」
春菜は、ミズエの胸を撫でた。時より乳首がピンと跳ねた。
「気持ちいいでしょう……?」
「分からないわ……、……」
「じゃー、キスしたことは……?」
「ないわ……、……」
春菜は、ミズエの唇に唇を付けた。
そして、ミズエの背中に腕を回して、抱き寄せ、ハルナの胸でミズエの胸を撫でた。
唇は、唇の中に舌を絡ませ、喘ぎとともに、しゃぶりついた。
「幸せは、何処にでもあるのよ。自分で作り出すものだから……、幸せを、感じるの……、もっともっと、自分で感じるところを探すのよ……」
「でも、お姉さん、すぐに寝ちゃうんでしょう」
「そう……、だから、昼間、太陽の下で裸になるの……、夜よりも、もっと、陽の光を浴びて、激しく燃えられるから……、私は、太陽の子かも知れないわ。今度、二人で日光浴しながら抱き合いましょう」
「お姉さん、凄い……」
「でも、今日は一緒に寝ましょう……、もっと楽しいことが待っているから……」
「でも、お姉さん、すぐに寝ちゃうんでしょう……」
「だから、貴女の口で、手で、私を寝かさないで……」




