表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/43

20. スミレとヒロの合宿

(スミレとヒロの合宿)


 次の日……、

 研究室に入ると、ダブルベッドより狭い、セミダブルのベッドがソファーのあったところに置かれていた。

 それと昨日頼んだ、コーヒーマシンと冷蔵庫も部屋の隅に置かれていた。

「ベガ、……、何でベッドが置いてあるんだ?」

「今日から、泊まり込みで、合宿だそうですよ」

「合宿って誰と……、……?」

「私しか、いないじゃない……」、遅れて入ってきたスミレさんが答えた。

「え、えー、スミレさんと泊まるんですか? ここで……、このベッドで……?」

「ちょっと狭いわね……、ダブルベットが、テーブルにあたって入らなかったのよ。もうちょっと広く作れば面白かったのにね……」

「いえ、そう言う問題じゃなく……、男と女が検査衣一枚下は裸で……、ベッドの前にいるなんて、可笑しくなっちゃいますよ!」

「何いっているのよ。可笑しくなるのよ。私たち……、ここで生活するんだから……」

「え、え、えー、そんなこと聞いていない……」

「何いっているのよ。ベガに人間を教えるのよ。ベガの体を作るのよ。ここで生活するしかないじゃない。人間の営みを教えるには二十四時間、夜のこともね。嬉しいでしょう」

「え、えー、スミレさんは、それでいいんですか……?」

「もちろんよ。私が始めたことだから、完成させたいわ。ベガを人間にすることを……」

「凄い……、体を張った、研究者魂ですね……」

「そんな……、カッコいいものじゃないわよ。貴方、私の好みだから……、一緒に生活できるって嬉しいわ……、貴方は……?」

「そっちですか……、……、僕も、嬉しいですけど……」

「よかった……、その前にコーヒーマシンと冷蔵庫はここに置けないわ」

「僕も、そう思いました……」

「第一ゲートの前にでも置きましょう。そこなら、いつでも飲めるでしょう」

「ちょっと遠いですが、食事はどうするんですか……?」

「もちろん、学食で……、でも、ここまで持って来て、ここで朝昼晩と食べるのよ。この部屋で、ベガに感じさせながら食べる。それも人間の営みだから……」

「すべて、ベガの為というわけですね」

「そうよ……、人間の営みの実像よ。凄いでしょう……」

「凄ですけど……、ベガに分かってもらえるでしょうか……?」

「それを私たちが検証し、研究開発するのよ。ただの生活じゃないのよ。分かっている?」

「でも、スミレさん嬉しそうだから……」

「あら、そうかしら……、新婚生活みたいで、わくわくしない……?」

「僕は気が重いですよ……」

「多分、結婚とは、そういうものよ……」

「スミレさん、結婚したことあるんですか……?」

「失礼ね……、あるわけないでしょう。男と同棲したこともないわよ」

「でもこれって、合宿というより、同棲じゃないですか……?」

「まー、あ、深く考えないように……、男と女は成る様に成るものよ」

「どう言う意味ですか……?」

「だから、深く考えないように……、それより、朝ごはん食べたの?」

「食べてないですけど……」

「じゃー、ちょうどいいわ。朝ご飯から始めましょう」

「朝ごはん、ここで食べるんですか?」

「決まっているじゃない。ベガ、神経工学科の菊池茜に電話して……」

「了解……」

「茜……、学食いって朝食、何でもいいから、二人分持って来て……、コーヒーも付けてね」

「えー、え、今からですか……? 私も食べたい……」

「いいわよ。じゃー、三人分持って来てよ。朝食代は、神経工学科に付けておいて……」

「そんなん、代金、付けでいいんですか……?」

 僕は生活費のことまで考えていなかった。

「ここの生活費は科で持ってもらうわ。まさか、極秘のベガプロジェクトの名前を出すわけにはいかないでしょう……」


 しばらくして、菊池茜から電話が掛かって来た。

「お姉さん……、ここを開けて……」

「茜……、ここで食事するから、あんたも検査衣に着替えてくるのよ」

「またですか……」

「そうよ……、早くしなさい」

「え、茜さんも、この部屋で試験体になったことがあるんですか?」

「そうよ……、私と茜でこの部屋の機器とセンサーの調整をしたのよ。裸になってね。茜もなかなかの天才なのよ。見た目には、そう見えないけど……」

 菊池茜が検査衣を着て、ワゴンに朝食を乗せて持って来てくれた。

「お姉さん、さっき届いたわよ。新しいセンサー、一緒に持ってきたわ」

「ありがとう……、食べる前に、間に合ったわね」

「何ですか……? その丸い、オセロのコマの様な物は……? でも、オセロのコマよりは、少し大きいですね」

「体に流れるホルモンや電流を測ることができる新しいセンサーよ。これからのブレスレットの代わりになるわ」

「どんな感じで、使うんですか?」

「やってあげるわ。肩の少し下の所にシールで張り付けるのよ。ちょっとセンサーの針が出てるいから、付けるときに違和感があるかもしれないけど……、すぐに慣れるわ。両肩に付けるのよ」

「これでブレスレットの代わりになるんですか?」

「それ以上よ。ブレスレットは、位置と電位しか分からなかったけれど……、これは、それに加えて、ホルモンの測定も可能にしているのよ。多分、世界初で、CGM(持続血糖測定器)を改良して更に高度にして作ったのよ」

「ホルモンですか……?」

「そうよ……、人間はホルモンによって支配されていると言ってもいいわ。アドレナリンやドーパミンやオキシトシン、メラトニン……、後、幸せを感じるセロトニン……、すべて、体の中を流れているのよ。これを測定できなければ、心も感情も作れないわ。頭だけではなく、体で感じるように……、分かるでしょう……」

「でも、お姉さん……、多くのホルモンは、視床下部や脳下垂体で作られるんだから、そこでホルモン量を計算すればいいんじゃないの……?」

「確かに、その源は脳かも知れないけれど、体からのフィードバックが無ければ、その気持ちは分からないじゃない。心臓とか胃とか、腸とか、生殖行動とか……、多くの生理的ホルモンは、卵巣、精巣、副腎、膵臓、甲状腺、腸や脂肪細胞から出ているのよ。まさに、体で感じているのよ」

「お姉さん……、あの快感を教えるつもりなの……?」

「そうよ……、人間の生殖行動は、生きる為の源よ。その喜び無くして人生は語れないわ」

「お姉さん、それって、お姉さんの趣味じゃないの……?」

「何を言っているのよ。私のこれまでの努力を、趣味の一言でかたづけないでよね」

「やっぱり、趣味なんだ」

「もう、いいから……、茜もセンサー付けるのよ」

「えー、私も……? 前にベガに私の裸、見られたから……、今度は、私の心の中まで見られちゃうわ」

「さすが、茜……、良く分かっているわね」

「え、……、このセンサーで心の中が見えるんですか……?」

「もちろん、見えるわよ。感情ホルモンといわれている物の動きを測れば……」

 スミレさんは、茜さんを後ろから胸を撫でるように抱きしめた。

「貴方が茜を見た時に、抱きしめたいと思った気持ちも、ベガには分かっているわよ」

「そんな……、思っていませんよ」

「ベガ、彼の言ったことは、本当……?」

「いえ、かなり動揺していますので……、嘘です」

「ベガは、うそ発見器か……? ベガ……、メンタルモデルに登録、真実でも、言って良い事と、悪い事がある。特に人の心の中は、マル秘、シークレットだ。僕が例え、茜さんを抱きしめたいと思っても、それは、ただの罪のない空想で、虚しい想像に過ぎない」

「過去の経験からのメンタルモデルのフィードバックですね」、ベガが答えた。

「そう言うことだ。抱きしめたいと思っても、当たり構わず抱きしめてはいけないんだ。社会のルールだ。でも、想像するのは自由だ……、ベガ、茜さんを見て、抱きしめることを想像できるか?」

「私は茜さんの全てを知っています。身長168センチ、バスト85センチ、ウエスト60センチ、ヒップ88センチ、体重50キロ、美しい理想のプロポーションです」

「ベガ……、それは、言ってはいけないのよ。私の個人情報だから、シークレットよ……」

「でも、これは過去のデーターで、現在のプロポーションではありません。私の想像です」

「それでも、言ってはいけないのよ。お姉さん……、ベガに分からせてよ……?」

「これから、少しずつね。でも、茜……、あんた、ウエスト60しかないの……? 羨ましいわね……、何食べているのよ……?」

「お姉さん……、……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ