表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/43

11. 釧路国防軍のヒロとリュウ

(釧路国防軍のヒロとリュウ)


 あれから、ヒロとリュウは札幌の訓練施設で六か月間、訓練を受け、すぐさま釧路前線隊に送られた……

「……、何とも平和な最前線基地だな……」

「どこの前線基地も、銃の弾一つ打ってないそうだ」

「なんだ、それは……、ここは、本当に最前線の基地か……?」

「一〇キロ先には、敵の最前線基地がある……、しかし、敵の基地からも銃の弾一つ打ってこないし、こちらに向かってくる様子もない。こちらも、塹壕を重機で掘っている有様だ。平和な戦争だ……」

「やる気があるのか、露国軍は……?」

「さー、事情は、同じだろう……、コンピューターの入った武器は使えない。もちろん、戦車も飛行機もミサイルも使えない。レーダー、ソナーは当てにならない。もし、できるとしたら、銃で撃ちあうだけの特攻戦になる。お互い武器と兵士を消耗して、終わりだ。補給は来ない……」

「補給が無いとは、どういうことだ……?」

「補給艦が使えんのさ。ベガに穴をあけられて、沈没寸前だ……」

「じゃー、俺たちの食料は、……?」

「民間業者から買っている。民間船は往来自由だ。しかし、軍事物資は、輸送できない。だから、虎の子の弾薬は無駄にできない。来る有事に備えているのさ……」

「こちらの兵力は……?」

「約五万……、それを釧路と根室、網走に分けて守っている」

「肉弾戦になっても、勝ち目はないな」

「しかし、敵も何を考えているのか、攻めてくる様子はない」

「じゃー、俺たちは何をするんだ……?」

「とりあえず、交代で敵の見張りと、検問所の検閲かな……」

「検問所があるのか……?」

「あるさー、釧路の民間人とは、今も出入り自由さ……、しかし、主要道路には、すべて検問所があり、釧路市の許可した者しか出入りできないけどな……」

「いったい、こんなことを何年やっているんだ……?」

「ちょうど、一年じゃないのか……、去年の春に来たと言っていたから……」

「リュウ、詳しいな……」

「そこまでは、調べ上げて、捕まった」

「こんな平和な戦争だ。和平交渉は進んでいるだろう……?」

「さー、どうだか……、そこまでは、分からん。お偉いさんのやることだ……」


 釧路国防軍前線基地に来て一週間……

 ヒロとリュウは幹線道路の検問所にいた……

「俺たちに休みはないのか……? 毎日、毎日、働かせて……」

「戦争をしているからな」

「戦争って言ったって、見張りをしているだけじゃないか……、いったい露国の占領軍は何をやっているのか……?」

「さー、多分、同じことをやっているだろう。見張りして、食って寝て……」

「そんなことを、一年もやっているのか……?」

「そうみたいだな……」

「しかし、この道路の交通量は何だ……、まるで大都会並みじゃないか」

「占領軍が入って、人口が増えたからな。今や、更に拡大した露国の中核都市だ」

「俺たちが検問している所は、国境か……?」

「同じ、日本に見えるけどな。日本は島国で、陸続きの国境が無いから、ピンとこないけれど、大陸ではこんなもんだ。交通は、盛んに行き来している。戦争状態じゃないけどな」

「そうなのか……、じゃー、俺たちが釧路に行っても分からないな……?」

「多分な……? ヒロ、スパイに行くのか……?」

「人聞きの悪い言葉だ。視察だよ……、観光と言ってもいいじゃないか……?」

「馬鹿な、向こうにも検問所はある。ここを通る車は、すべて業者登録された搬入業者だけだ」

「報道関係では、入れないのか……?」

「駄目だ……、報道は許可されていない……」

「だいたい、広い原野だぞ……、道路を使わなくても、どこからでも釧路には入れる」

「しかしだな、敵さんの警備状況が分からん今、もし原野で敵さんに出会ったら射殺されるぞ……」

「じゃー、搬入業者の荷物に紛れて侵入するとか……?」

「それを、スパイと言うんだ……」

「あ、そっか……」

「何で、そんなに釧路に行きたい……?」

「興味があるだろう……、向こうの兵隊は何をしているのか……? 一年間も、何も戦わずに、ただ駐留しているなんて可笑しいじゃないか……?」

「だから、戦えんのだよ。補給が無いから……、こちらと同じ状況だ」

「それで、一年近くも国境を見ているだけか……? 俺なら、即刻、地元に帰るけどな」

「帰りたくても、船がない……」

「軍の船が無ければ、民間船で帰ればいいじゃないか……」

「そうだな……、……、敵は何をしているのか……? 興味が出てきた」

「お、ジャーナリスト魂だな……」

 その時だった……

「あれー、リュウさん、今度は防衛軍ですか……?」

「釧路を取材していて捕まった……、その節は世話になった」

「それは、ご苦労なことで……」

「これが、懲役ってことだ……、なにも悪いことはしていないのに……」

「は、はーん、政治犯ですか……? 家の従弟もいますぜ。網走ですが……、市議で議員で、街を解放しろと言ていたら、いつの間にか国防軍にされていたという話ですわ」

「国防軍は、人手が足りんからな」

「わしみたいに、運転手だと重宝されますけどね」

「でも、酪農の方は大丈夫なのか……?」

「奥さんと息子で、何とかやってますわ……、こっちの方が、実入りがいいもので……」

「そのようだな……、小麦と米と蕎麦とジャガイモか……? たくさんだな」

「これで、一週間くらいですぜ」

「トラック四台でか?」

「いえね、また明日も来ますぜ。わしらの所は、これくらいですが、他の会社でも運んできますから……」

「……、OKだ……、行ってくれ……」

 10トントラックの車列は通り過ぎて行った……

「……、知り合いか……?」

「まーな、釧路潜入の時に手伝ってもらった」

「じゃー、また行けるじゃないか……」

「止めとけ、止めとけ……、ただじゃー行かないさ。往復六〇万円だ。俺は帰りには捕まったから、三〇万しか払ってはないけどな」

「高いな……、俺たちは、一文無しだ……」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ