137.おじさん、ログハウス
こうしてジサンらは樫の森の牧場施設へと向かう。
◇
「広~~い!!」
樫の森の牧場施設を見渡して、サイカが声を上げる。
その発言の通り、共用の牧場はかなり広大な土地があり、飼育小屋を始めとする様々な施設が用意されているようであった。
「えーと、私達が使っていいのは、エリアEだったから……こっちかな?」
サイカは到着時に自動で割り当てられたエリアに向かう。
どうやら牧場施設はパーティ毎に割り当てられている個別エリアと誰でも利用可能な共用エリアの二つに分かれているようであった。
個別エリアには飼育小屋の他に宿泊施設も用意されていた。
ということで、早速、宿泊施設に訪れる。
「へぇ~、結構いい感じかも」
宿泊施設は雰囲気の良いログハウスになっており、におい等も気になることなく、過ごしやすそうであった。
ログハウスは平屋であるが、十分に広く、天井も高い。
寝室が二部屋でそれぞれに二つの白いベッドがあった。
寝室の他に居間もあり、そちらにも眠ることができそうなソファがある。
その他生活に必要な施設も完備されている。
(一週間くらいなら、ここでのんびり過ごすのも悪くないか……)
ジサンはそのように思う。彼は二年近くのダンジョン暮らしと一年近く放浪の旅をした経験を持っており、意外と場所は選ばない性分である。
◇
宿泊施設を確認後、サイカは再び飼育小屋に移動する。
「よし……ここでオークを小屋に移動してっと……えーと、小嶋くんがテイムしてくれたオーク……生産対象にしていいんだよね?」
「もちろんです」
「ありがとう!」
そう言うと、サイカはメニューを操作し始める。
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飼育数4/10
ファッティ・オーク レベル:35 ランクK 雄
プニプニ・オーク レベル:32 ランクJ 雌
ヤンワリ・オーク レベル:30 ランクI 雌
コエコエ・オーク レベル:35 ランクK 雄
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ジサンのメニューにも生産対象の詳細が表示される。
森でテイムしたオークが小屋に放たれ、思い思いに行動を始める。
そこでジサンは初めて知ったのだが、生産においては対象のモンスターの性別が明示されるようであった。
周りを少し見渡すとジサンらが与えられたエリアの隣の飼育小屋にもオークがおり、すでに他のパーティも生産に着手しているようであった。
「ふーん、この森の生産施設は品種改良可能な頻度が通常より高い代わりに交配時の両親は消滅しちゃうのか……」
サイカがメニューを開きながら、牧場の特殊仕様を確認しているようであった。
(モンスターの配合もその仕様だな……)
「いかに期間内に効率よく品種改良をしていくかが勝負ってことね……」
サイカは緊張するようにゴクリと息をのむ。
「それじゃあ、私、品種改良頑張るから! 小嶋くんはゆっくりしていていいから!」
「あ……はい」
◇
ということで、ジサンとサラは宿泊用のログハウスに戻される。
(さて……どうするか……)
ジサンは考える。
(……まぁ、生産について何か知っているわけでもないし、お言葉に甘えて、しばらくこのログハウスでのんびりするか……)
ジサンはログハウスの寝室に用意されていた白いベッドにごろりと横になる。
するとふいに一通の通知が来る。
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【重要なお知らせ】
こんにちは、リアル・ファンタジー運営です。
本日、実施されていた下記の第一回イベントレイドバトルにおいて、プレイヤー側が勝利したことをお知らせ致します。
■イベント情報
ボス:
ランク 魔王
場所:
ヒロシマ イツクシマ神域ダンジョン
日時:
2043年6月15日 9:00~21:00
報酬:
魔装:魔刀アギト
二刀流スタイルで使用できる魔刀
(活躍度上位四名に贈呈)
罰則:
全プレイヤーの所有カネを半分没収し、合計を等分し、再分配する
ルール:
割愛
***
本日はご参加ありがとうございました!
大好評につき、第二回イベントレイドバトルについても近日中に開催したく思います。それでは皆様のご参加をお待ちしております。
リアル・ファンタジー運営
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(あー、そう言えばこんなイベントがあるって昼にも話題になってたな……無事にプレイヤー側の勝利か……一体、誰が参加したのやら…………)
==イベントレイドバトル板========================
101 名無しさん ID: 6xt1kpqq
どこのパーティがやったんか
星野騎士隊か?
112 名無しさん ID:epljvd3a
いくつかのパーティが参加してたが、一番、活躍してたのはラストシトラスかな
118 名無しさん ID:9z1oxlal
ラストシトラス? 聞いたことないな
120 名無しさん ID:kshl1yf6
>>118
いや、結構、有名だろ
123 名無しさん ID:muxnfytr
>>120
どこの世界線の話だよ
126 名無しさん ID:yv6y8oz8
メンバーの兜武士のバグってやつは聞いたことあるな
130 名無しさん ID:tcbbyqj5
いい声してるよな
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(ラストシトラス……兜武士のバグ……確かに聞いたことはないな……というか俺はほとんど他のパーティとの交流がないから知らないのは当たり前か……)
ジサンは盛り上がりを見せていた掲示板を見ながらそんなことを思う。
「……ふぁああ」
その後、キュウシュウまでの長旅で疲れていたのか、程よい反発のベッドの寝心地がよかったのか、ジサンはすぐに眠りに落ちてしまった。
◇
「ふふ……眠ってる……」
珍しく自分より先に眠ってしまった人の顔を眺めてみる。不遜にもその寝顔を少し可愛いなどと思ってしまう。
そんな彼女の頭の中で、電子的な声が囁く。
「しなくていい……」
電子音から話しかけてくる時は大抵、何かのミーティングの報告なのだ。興味のない報告など断れば、電子音も無理に聞かせようとはしてこない。
「別にいいって……」
しかし、その日に限ってはその断りを聞き入れてくれなかった。
「……え?」
◇
ブタ祭!!イベント二日目の朝――
(……)
ジサンは深い眠りから覚める。
その日は本当によく眠っていたようで、朝まで一度も目覚めることがなかった。
「おはようございます……! マスター……!」
(……)
「あ、おはよぅ、サラ……」
目覚めるとすぐに彼をマスターと慕う少女が挨拶をしてくれる。
何の変哲もなさそうな光景のようで、ジサンは少しだけいつもと違うような気がする。
(……)
ふと考えを巡らせ……そして答えに行き着く。
「今日は早いな、サラ……」
普段なら彼が目覚めた時にはサラはまだ眠っていることが多いのだ。
「えっ!? そ、そうですかね……?」
サラは少し驚くような反応を見せる。
「でも、マスター……こんな時間ですよ?」
「えっ……? あー……」
時間は九時を指していた。確かに、初老のジサンが普段目覚める時間よりは遅い時間であった。
「すまん、寝過ぎたな……」
「いえいえ、そんなつもりは……!」
サラは少し大げさにそれを否定する。
(……)
そうしてジサンはのそのそとベッドから這い出る。




