138.おじさん、再会する
身支度を終えたジサンとサラはログハウスから出て、飼育小屋に足を運ぶ。
「あぁあ! 上手くいかないよぉおお!」
(……)
そこには頭を抱えるサイカの姿があった。
(ってか、茂木さんは昨晩、どこで過ごしたんだ……?)
などとジサンが考えていると……
「やぁ、おはよう」
「押忍っ! 押忍っ!」
(…………)
「その髭、かっこいいね」
まず、妙に馴れ馴れしいオークが爽やかに日常的(?)な会話を投げかけてくる。
「押忍っ! 押忍っ! 押忍っ! 押忍っ!」
更に小屋の奥では、掛け声を掛けながら正拳の素振りをしているオークの姿も見られる。
ジサンは生産対象を確認する。
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飼育数2/10
サワヤカ・オーク レベル:35 ランクK 雄
カラテ・オーク レベル:35 ランクK 雄
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(…………)
確か昨日はこんな感じだったよなと思い起こす。
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(昨日の状態)
飼育数4/10
ファッティ・オーク レベル:35 ランクK 雄
プニプニ・オーク レベル:32 ランクJ 雌
ヤンワリ・オーク レベル:30 ランクI 雌
コエコエ・オーク レベル:35 ランクK 雄
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「ご覧の通り、おおよそ美味しくなさそうな妙に言葉巧みなオークと腕っぷしの強そうなオークになってしまいました……」
サイカはうな垂れる。
「そうですか……」
と、その時、隣の飼育小屋から発光エフェクトが発生する。
(ん……?)
「あれは……交配時に発生するエフェクトね……お隣さんも品種改良してるみたい」
(なるほど……)
「わぁー! トンちゃんすごいー!」
(お……?)
どこかで聞いたような明るい女性の声が聞こえてくる。
「ランクMのフクヨカ・オークかー! なかなか良さそうだね!」
(ランクMということはランクKの二つ上か……しかも素人目に見ても、いい肉質のオークだな……)
「えっ!? もうランクM!?」
サイカは思わず声を上げる。
と、お隣さんの二人もそれに気づく。
「「「あ……」」」
そして彼らはイベント初日であった昨日、森の中で出会った人物であることに気が付く。
◇
「私は狩人をやってるイルカっていいます。それでこっちがトンちゃん!」
「ファーマーのトンダと申します」
ファーマー姿の少し丸みを帯びた体型の中年男性がトンダ、軽めの武装をした垂れ目の優しそうな女性がイルカというようであった。
「は、初めまして、サイカと申します。昨日は有難うございました」
サイカはトンダに頭を下げる。
「あの場でも言いましたが、豚のためですから」
「そ、そうですよね……」
トンダはそっけない様子を見せる。
「どうしたんだい? 随分とそっけないですね?」
そんなトンダにサイカの飼育小屋にいたサワヤカ・オークが話しかける。
「ちょ、こらっ」
「押忍っ! 押忍っ! 押忍っ!」
そして、小屋の中には相変わらずひたすら正拳の素振りをするカラテ・オークである。
「……」
トンダはジトッとそのオーク達を眺める。サイカはどこか恥ずかしそうにしていた。
「姉さん…………相撲部屋にでもするつもりかい?」
「えっ?」
「いや……このオーク達……畜産には向いていないと思うが……」
「そ、そうですよね……そんなつもりはないのですが、なぜかこういうのばかりが生まれてしまって……」
「なるほど……で、奴らはどうするんだ?」
「そうですね……間引くのも気が引けるので、種豚にしますけど……」
「なるほどな……」
トンダさんは少し考え込む様に沈黙する。
「どうしたの……? トンちゃん」
「サイカさん……」
「はい……!?」
「ファーマーは始めたばかりですか?」
「……そうです」
「失礼ながら前の職は?」
「えっ!? え、えーと……」
サイカは少し戸惑う。ちらりとジサンのことを見る。
(……?)
ジサンはサイカが彼を見たことで”嘘を付くのは止めよう”と思ったところまでは読み取れなかったが、戸惑いの心境については理解できた。
「勇者……です」
「えっ!?」「っ!?」
サイカの告白にはトンダも少し驚いていたようであった。勇者といえばかなりの上位職。そして、クラスチェンジは片道切符。一度、ファーマーになれば元のクラスには戻れない。
それよりも……
「トンちゃん、この人……」
「……」
サイカ、元勇者、そしてどこか印象は変わったもののなんとなく見覚えのある顔。
トンダとイルカはサイカが魔王:アルヴァロを討伐し、その後、自身以外のパーティメンバーが死亡したという悲運を辿ったその人であることに気が付いたようであった。
同時に、悪意はなかったが、トンダは結果的にかなりデリケートなことをサイカに尋ねてしまったことにも気付く。
が、しかし、時にはそんなことが聞かれた側に益をもたらすこともある。
「サイカさん……オークの品種改良にはある程度、法則がある……」
「え……!?」




