memorys,68
長いスランプに陥り、
投稿が出来ず申し訳ありませんでした。
ゆっくりではありますがまた
少しずつ話を進めていきますので
よろしくお願い致します。
少し夕日に染まり始めた空を仰ぎながら、わたしは学校の門を潜る。頭の中には奏の言った言葉が幾度となく繰り返されていた。
あお兄を好きになったわけではない。
幼い頃感じた彼に対して抱いた感情を知ってしまったからこそ、わたしを想う相手を傷つけてしまう結末を見たくない。そう強く思ってしまったんだ。
「よしっ」
もしかしたら、自分の決意は同じように彼を傷つける結果になるかもしれない。しかし、少なくとも彼が世間から後ろ指を指されるような悲劇的な未来は防げるはずだ。決意を再度胸に刻み、足を踏み出す。
校門の外で待機しているであろう人物目指し、少し早い歩調で向かった。しかし、その足は直ぐに止まってしまう。門の外に立つ人影が、予想外の人物だと気が付いてしまったからだった。
あの日見た嫌な笑みと、耳に残った声が蘇ってきて、僅かに唇が震えだす。立ち止まって動かないわたしに、その人はひらひらと手を振った。
「やあ、また来たよ。お姫様」
動揺を隠し切れず、迎えの車を探すも見当たらない。
(そうか……)
今日は予定よりも午後の授業が早く終わってしまったから、迎えに来る時間になっていなかったことに今更ながら気付く。
(冷静になれ……この人の話を聞かなければいいだけだ)
あと数分もすれば白藤さんが迎えに来てくれる。わたしは、目を合わせずゆっくり相手の前を通り過ぎた。
「あの後、お父様とは話されたんでしょう?」
返答しないわたしを気にもしない様子で、記者はにやけながら側へと近寄り、馴れ馴れしい口調で続ける。
「もしかして、お父様はあなたにこう言ったんではないですか?朝比奈 涼華と出逢って恋に落ちたのは、あなたのお母様と出会う前の話だったと」
わたしの顔を覗き込もうとする相手の視線から逃れるように、反対方向に顔を逸らす。
「それに偽りはなっかたようですね。すみませんでしたね、不必要な不安をあなたにさせてしまったようで……今日はそれをお詫びに来ました」
「え?」
意外な言動に、思わず相手に視線を向けかけてしまいそうになった。
「相手を不愉快にさせているのは重々分かっていますが、これも仕事のうちなのでご理解いただければ感謝します」
「……わかりました。もういいですから」
謝罪に来ただけなのなら、もうこれっきり彼に関わることはないのだと安堵したのだが、それはあっさりと裏切られてしまう。
「あと、今日はもう一つあなたに伺いたい事がありまして」
「え?」
記者の顔を見た瞬間、背中に冷たいものが走った。なぜなら、今もなお彼はわたしを獲物でも見るような瞳で見つめていたからだ。わたしを狙っているのは今も同じなんだと、彼を見て察する。
(どうしよう)
何を言われるのか分からない恐怖心から、その場を離れたい衝動にかられた。
「改めてあなたのことを調べさせていただきました。いやー、実に興味深い」
じりじりとこちらへ距離を詰めてくる。
「こないでください!」
記者が一歩近づくたびに、私は一歩後退り、拒否の言葉をぶつけた。しかし、そんな抵抗など彼にとっては無抵抗と一緒であるかのように、顔色一つ変えることはない。
「そんなに怯えないでくださいよ。何もあなたを取って食おうなんて思ってませんから……ただ事実を確認したいだけなんです」
「あなたに話すことなんて何もありません! 帰ってください!!」
「だったら、これだけ聞いてから帰ります」
不意に記者に腕を掴まれ、体が引っ張られてしまう。
「あなたは自分自身のことをどこまで分かっているんですか?」
その質問の意味を理解するよりも先に、私は拒絶を示した。
「いやっ!」
相手の手から逃れたい一心で腕を大きく振った。私を掴んだ手はすんなり離されたのだが、思いのほか力が入ってしまったためにバランスを崩してしまう。傾いていく体は道路へと向かい、わたしの視界に入ってきたのは、こちらに向かってくる車だった。
(だめっ、ぶつかる)
「お嬢様っ!!」
その声が耳に届くころには、わたしは自分の最期を覚悟したように強く目を瞑っていた。
(……白藤さん?)
聞こえてきた声が誰なのか理解して目を開けると、倒れ込んだ時に見た車が目の前で止まっているのが映る。後数ミリ進んでいたらぶつかっていたかもしれない。だが、そうならなかったのには理由があったのだと直ぐに気が付いた。
「白藤さん!」
わたしに覆いかぶさるように白藤さんが倒れ込んでいる様に、一気に焦りを覚える。
「白藤さん、大丈夫ですか!?」
返事がない。わたしを庇うために飛び込んできたのか、身体のあちこちに擦り傷があった。もしかしたら頭を打ったのではないかと嫌な想像が頭を駆け巡る。
「お願い、返事してよ! 白藤さんっ!」
もう一度名前を叫ぶと、痛みに耐えるような声を発しながら、白藤さんがゆっくりと顔を上げた。
「危ないとこだったな……間に合って良かった」
そう言って苦笑いを浮かべる白藤さんを見た瞬間、思わず涙ぐむ。
「おい、泣くなって」
「だって……返事しないからっ」
「安心しろ。俺は大丈夫だから……それよりも」
おもむろに立ち上がり、白藤さんは怒りの籠った視線を後ろに立ち竦んでいた記者へと向けた。
「前回お嬢様に近付いたのはお前だな? 彼女を傷付けた罰、しっかり受けてもらうからな」
あまりにも凄い迫力で近付いてくる白藤さんに恐れをなしたのか、記者は慌てるように否定の声をあげる。
「ご、誤解しないでください。わたしはただ彼女に確認したかっただけで、怪我をさせるつもりはなかったんですよ」
それでも無言のまま、今にも掴みかかるかのような勢いで目の前まで迫ってきた白藤さんの姿に記者の顔は青ざめていく。
「お前の雇い主に言っておいていただけますか? お嬢様を危険な目に遭わせた罪、あんたも含めて必ず償わせてやりますからってな……」
その言葉に、記者は言い返す余裕すらなくなったのか、その場を逃げるようにして立ち去っていってしまった。
未だに娘には白藤さんがうざい
いわれちゃうんですが
うざいのかなぁー( ゜Д゜)はて?