第十九話
緊急招集を受けてキキ、モモ、アイは集合し、空を飛んで現場へと急いだ。
会社からは「相手の反応が正確に確認できない。心してかかるように」との伝令を受けていた。
「これは……」
現場の上空に到着して、三人は絶句した。
抗戦の様子もない綺麗なビルの屋上で、レイとミカが苦悶の表情を浮かべて倒れている。
そのすぐ側には黒い布で全身を隠した怪しい人影が立っていた。
「そこから離れろ!」
モモが人影に向けて狙いすましたビームを放つ。
高速で迫り来るビームの方を一瞥した人影は、左手を掲げてビームを防いだ。
ビームの出力によって、人影を包んでいた布が焼けて、姿があらわになっていく。
「あれは……」
光沢のあるボディは黄色と黒に彩られ、ビームを防いだ左手は人間の手の形はしておらず、ぷっくりと膨れて先端には針がついている。頭には虫のような大きな複眼がついており、触角が二本立っている。
見るからに蜂男だ。
「お前らが残りの魔法少女か」
「だったらどうした」
蜂男からの問いにキキが応答する。
「探す手間が省けた」
「二人をどうした」
「私の魔術で麻痺してもらってるだけだ。私が解くか、死ねば解ける」
「やれ」
「それは無理だ。私には、君たち『魔法少女より強い』ことを証明する義務がある」
「なら殺す」
「やれるものならやってみろ」
キキは空中から一気に体勢を屈ませ、ビルの屋上へと急降下した。
蜂男へ目掛けて、槍を突きつける。
槍が蜂男の顔に当たろうとする、瞬間、蜂男はキキの眼前から消えた。
「くっ!」
後ろからアイの声が聞こえる。
舌打ちとともに振り返ると、上で戦闘が起こっていた。
モモとアイが応戦しているが、敵の機動力に翻弄されている。
蜂というよりトンボのような瞬間移動に近い挙動と不規則に打ち込まれる針。
刀とステッキでいなしているが、押されている。
「ぐあ!」
とうとうモモが一撃を喰らってしまった。
「モモさん、くっ、……うっ!」
落下していくモモを庇おうとしたアイも、死角を狙われ、戦闘不能になった。
そのまま失速しつつキキの足元へ不時着した。
「残りはお前だ」
「潰す!」
目の前に来た蜂男に向かって、キキは荒ぶる感情を全てのせて槍を振り回す。
蜂男は全てをかわし、いなし、防ぐ。
一瞬キキの勢いが途切れたところを見逃さず、右ストレートをねじ込んだ。
反射的にキキも退いたが、針はキキの体に届いていた。
槍を構えようとするが、力が入らず膝をつく。
「お前ももう終わりだ。諦めろ」
「うる、さい……」
視界がぼやけ、すでに敵の姿さえまともに見えていない。
足にも力は入っていない。
朦朧とする意識を何とかつなぎとめ、手に持つ槍を支えにしてようやくどうにか体を支える。
キキの精神力も、もう風前の灯だった。
カラン、と乾いた音がして。
槍と、キキの体が、屋上に伏した。




