第二十話
「なんだ、魔法少女とはこれだけか」
蜂男は少女たちを見下げて言う。
「私でもオーバースペックなら、まだ生産コストを下げてもどうにかなりそうだな」
蜂男はぶつぶつと独り言を呟く。
すると、頭がピクッと動く。
「ヘイ、ボス。作戦完了だ」
通信機もない体で、虚空に向かって喋りかける。
そんな彼を、まだ許せない少女がいた。
少女の手が、一人でに動く。
意識はなく、無意識の中で。
彼女が自身の胸に刻むのは、文字。
古くから伝わる、ルーンの文字。
「魔法少女はすでに全員制圧した。これ以上は……ん?」
「ウル、ベオーク」
少女は体を起こす。
桃色の槍は赤く染まり、双眸もギラギラと血走っている。
「そんな……、毒魔術は完璧なはず。まさか、治癒された? そんなデータはどこにも」
「ごちゃごちゃうるせえ」
蜂男の足は、気づけばビルの屋上に立っていなかった。
正確に言えば、一瞬で近づいたキキによって蹴り飛ばされ、体ごと、突き落とされていた。
すぐに体勢を整えると眼前にはすでにキキが槍を構えている。
針とかち合わせて防御するが、勢い殺せず地面へと落下する。
「かはっ」
押さえつけられ、下敷きとなって地面に激突した蜂男は苦しげな声を上げた。
しかし、ただでは死なない。
針を突きつけ、キキに距離をとらせる。
起き上がり、今度は蜂男が猛攻を仕掛ける。
左右のジャブ、フック、アッパー、ストレート、さらに足技もからめて疾風怒濤の練撃を繰り出すが、キキは顔色一つ変えず全てを避け、いなし、防ぐ。
蜂男の攻撃が一瞬の隙を逃さぬようにキキは右ストレートをお見舞いした。
「ぐっ」
余裕のかけらもない、クリーンヒットの一発。
間髪入れず、キキは槍を構えて、
「……・ボルグ」
赤い槍を、蜂男の心臓へと突き刺した。
蜂男は一瞬ビクッと固まり、最後の悪あがきか、キキへと針をヨロヨロと伸ばした。
しかしその針は目標を貫くことなく、ダラリと地面へと向いた。
槍が抜かれると、蜂男の体も無造作に道路へと転がった。
彼女は、勝ったのだ。
蜂男の言った通り毒が解けたのだろう、朧げな意識だった他の魔法少女たちが、体を起こした。
周りを確認して、ただ一人、地上で立っているキキを発見し、駆け寄った。
「キキさん、ありがとうございます。いやー面目ない」
「わたくしも、何もできませんでしたわ」
「いやー、キキ先輩。私たちができないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるぅ!」
「ん? あのー、キキ……さん?」
魔法少女たちは、キキの様子がおかしいことに気がついた。
キキの目は血走ったままで、口から出る言葉にも血の気が籠っていた。
「潰す……この世の中を」
「「「「……え?」」」」




