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魔法少女~クライシス~  作者: 楸 椿榎
第三章 秋の蜂には御用心!
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第二十話

「なんだ、魔法少女とはこれだけか」


 蜂男は少女たちを見下げて言う。


「私でもオーバースペックなら、まだ生産コストを下げてもどうにかなりそうだな」


 蜂男はぶつぶつと独り言を呟く。

 すると、頭がピクッと動く。


「ヘイ、ボス。作戦完了だ」


 通信機もない体で、虚空に向かって喋りかける。

 そんな彼を、まだ許せない少女がいた。


 少女の手が、一人でに動く。


 意識はなく、無意識の中で。


 彼女が自身の胸に刻むのは、文字。


 古くから伝わる、ルーンの文字。


「魔法少女はすでに全員制圧した。これ以上は……ん?」

「ウル、ベオーク」


 少女は体を起こす。

 桃色の槍は赤く染まり、双眸もギラギラと血走っている。


「そんな……、毒魔術は完璧なはず。まさか、治癒された? そんなデータはどこにも」

「ごちゃごちゃうるせえ」


 蜂男の足は、気づけばビルの屋上に立っていなかった。

 正確に言えば、一瞬で近づいたキキによって蹴り飛ばされ、体ごと、突き落とされていた。

 すぐに体勢を整えると眼前にはすでにキキが槍を構えている。

 針とかち合わせて防御するが、勢い殺せず地面へと落下する。


「かはっ」


 押さえつけられ、下敷きとなって地面に激突した蜂男は苦しげな声を上げた。

 しかし、ただでは死なない。

 針を突きつけ、キキに距離をとらせる。

 起き上がり、今度は蜂男が猛攻を仕掛ける。

 左右のジャブ、フック、アッパー、ストレート、さらに足技もからめて疾風怒濤の練撃を繰り出すが、キキは顔色一つ変えず全てを避け、いなし、防ぐ。

 蜂男の攻撃が一瞬の隙を逃さぬようにキキは右ストレートをお見舞いした。


「ぐっ」


 余裕のかけらもない、クリーンヒットの一発。

 間髪入れず、キキは槍を構えて、


「……・ボルグ(死の棘槍)」


 赤い槍を、蜂男の心臓へと突き刺した。

 蜂男は一瞬ビクッと固まり、最後の悪あがきか、キキへと針をヨロヨロと伸ばした。

 しかしその針は目標を貫くことなく、ダラリと地面へと向いた。

 槍が抜かれると、蜂男の体も無造作に道路へと転がった。

 彼女は、勝ったのだ。


 蜂男の言った通り毒が解けたのだろう、朧げな意識だった他の魔法少女たちが、体を起こした。

 周りを確認して、ただ一人、地上で立っているキキを発見し、駆け寄った。


「キキさん、ありがとうございます。いやー面目ない」

「わたくしも、何もできませんでしたわ」

「いやー、キキ先輩。私たちができないことを平然とやってのける。そこに痺れる憧れるぅ!」

「ん? あのー、キキ……さん?」


 魔法少女たちは、キキの様子がおかしいことに気がついた。

 キキの目は血走ったままで、口から出る言葉にも血の気が籠っていた。


「潰す……この世の中を」

「「「「……え?」」」」

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