第十八話
魔法少女の仕事は、敵の反応が出た場合に現場へ急行、状況を把握し、事態を収束させることにある。
この日も、担当だったミカとレイは、それぞれの場所から無線連絡をナビにして現地に向かった。
先に着いたミカが、高層ビルの屋上から現場を観察する。
「……?」
と、不審な点に気がついた。
道路のスリップ痕とガードレールに突っ込んだ車、へたりこんでしまっている女性から、事故のようなことになったのは予測できる。
しかし、怪人の仕業らしさが一切ない。
会社の警報装置は誤認をすることはなく、絶対の精度で敵の反応を捉える。
つまり、あの事故は怪人が起こしたもの。
でも、人は誰も死んでいない。運転手は、恐らく歩道の脇で治療を受けている彼だろう。
怪人は人間を殺すものだ。
それは星を征服するためだったり、アンデッドに仕立てあげるためだったり、他にも様々な理由がある。
今まで、初動で人を殺さない怪人など、そしてその場を立ち去る怪人などいなかった。
……今回は、何か変だ。
「ミカ! そこから離れて!」
インカムから聞こえてきた上司の大声。
体を震わすほど驚き、次いで影に気づいた。
自分の後ろから伸びる影に。
「ミカさん!」
レイが到着すると、そこには力なく横たわるミカの姿があった。
「意識はありますか? 大丈夫ですか?」
ふっ、と。
ミカの手がレイの胸に触れた。
レイはほっとため息をもらす。
「よかった……。今担ぎ上げますね」
「レイ、はやく……逃げろ」
「え?」
「私のことはいいから、逃げろ」
そのとき、ミカの目が大きく開いた。
レイが振り向きざま、グラディウスを振るうが、その刃は空を切った。
そして。
「……」
レイの視界は、天を仰いだ。




