第十話
春の日差しを受ける暖かな公園のベンチに、一人の少女が座っている。
軍隊のウェアのような服に身を包んでいる。彼女の荷物であろうライフルケースをベンチの肘掛けに立て掛け、脚を組んで右手で頬杖をつき、目の前の光景を見てにやにやと笑んでいる。
公園の中心にある広場では、座っている少女と同年代と見える少女が、三メートル、いや四メートルはあろうかという大熊と対峙していた。
チャイナ服のような衣装は所々が爪で裂かれていて、エロスを感じるきわどさがある。
相対する熊も、相当なダメージを受けているのか、肩で息をしていた。よく見ると、所々毛が押し潰されているところがある。握りこぶしのような跡だ。
そう、彼女らは、公園のど真ん中で肉弾戦を繰り広げているのである。
何故か。
答えは、彼女の接近戦での戦闘力強化のためである。
ビームを主力とする中距離担当の彼女だが、時折前線にまで出張ることがある。その時もビームを使って応戦するのだが、超近距離に近寄られればビームは役に立たなくなる。そして彼女はあまり肉弾戦が得意ではない。
というわけで、来るべき日のために近距離戦闘を強化しておこうという話が出たのである。
そして現在、新人の場馴れのためにツーマンセルシフトを組んでおり、ローテーションで偶然組むことになった彼女らが担当した日に丁度いい相手、目の前の熊型侵略者が出没したのである。
軍服の方は、まだかな~まだかな~と脚をぶらぶらさせている。
片やチャイナ少女は頬に汗を滴らせ、不適に笑っていた。
息を深く吸い。吐きながら熊に突っ込む!
熊もほぼ同時に駆け出す!
おそらくこれが最後の一撃となるだろう。
お互いの距離がゼロになる瞬間、熊の鋭い爪と少女のか弱い拳が交差する。
彼女の頬を爪が掠め、鮮血が広場に散る。
痛みに歪むかと思われた彼女の顔は、喜びにうち震えていた。
熊の固い顎を完璧にとらえたアッパーが炸裂し、茶色の巨体が宙を舞う。
地面を揺らして落下した敵の姿を視界にとらえ、彼女は片手を天に掲げた。下で熊を殴った手を振って痛みをまぎらわしながら。
ベンチにいた少女は立ち上がり、拍手をしながら後輩であるチャイナ少女へと歩み寄る。
チャイナ少女はぶつくさと文句を垂れるが、先輩はそれをなだめ、聞き流しながら無線で処理班を呼ぶ。
手配が終わってもまだまだ収まらない後輩にいいカフェを教えてあげると提案する軍服少女。
それを聞いて今までの文句などすっかり忘れたかのように、チャイナ少女は笑顔で先輩についていった。




