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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第二章

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幕間 麻里が見た詩織の変化

 Side:浅田 麻里


 私には幼馴染で親友の女の子がいる。綺麗な黒髪で顔立ちが整っていて、中学生にしてはスタイルもいい。大和撫子……と言うには奥ゆかしさと品格が少し足りない。

 その子の名は東條詩織。最近、彼女の変化が気になっている。


 彼女は男女問わず態度を変えず、一線を引くほどではないが、馴れ馴れしいわけでもない接し方をしている。いわゆる、『普通の友達付き合い』だ。

 分け隔てなく接しているため、男子にもウケがいい。その容姿もあって男子から好意を寄せられることがあるが、それがわかると上手く距離を取ってかわしていた。上手いこと距離を取るからか、そもそも告白される段階までいかないらしい。もったいないとは思うが、無理して付き合う必要もないとは思う。

 ただ、彼氏を作らないのはなぜなのか、以前聞いてみたことがある。


『お父さんと()()()を見ていると……うーんって思ってしまって』


 そう言っていた。詩織ちゃんは家族とあまり関係が良好ではない。暴力や罵声のようなDVがあるわけではないが、夜遅くまで帰ってこない父と、大学に入ってからはほとんど帰ってこない七つ歳上の兄がいるだけ。単純に家では独りぼっちで、会話がない状態だ。

 小さい頃に母親を亡くした詩織ちゃんにとって、家族はその二人だけだった。そんな二人の態度をずっと見てきたためか、彼女は男性に対してあまり理想や希望を持てないのかもしれない。

 ――ひいては、『家族』というものにも。


 そんな彼女が最近になって、一人の男性のことをよくしゃべるようになった。

 その彼の名前は『東條朔也』。最近、親の再婚で増えた一つ上の義理のお兄さん。


 詩織ちゃんは歳が近い義兄(あに)ができて、最初は戸惑っていた。

 顔合わせで初めて会った時の印象は、『ピアスが多くて怖い見た目だけど、中学生なのに大人に対しての応対がすごい人』だったと教えてくれた。


 私は、彼女に歳が近い義理の兄ができたと聞いて、少し心配していた。偏見なのはわかっているが、『可愛い私の親友』と『ピアスジャラジャラ男』の同居なんて、どうしても事件性を感じてしまう。


 でも、それはすぐに思い違いだとわかった。

 二人が同居してからほどなくして、詩織ちゃんはどんどん明るくなっていった。『義兄さんがご飯を作ってくれて美味しかった』や『私が独り言を聞いてしまって、照れて面白かった』と、楽しそうにお兄さんのことを話す詩織ちゃんは、年相応の女の子に見えた。

 他のクラスメイトは気づかないかもしれないが、小さい頃から見ている私にはわかる。……これは完全に浮かれていると。


 他人だったとは言え義兄(あに)がいつもいる環境は、彼女にとって、家で独りぼっちの寂しさをなくす何かがあったのに違いない。

 楽しそうにお兄さんのことを話す詩織ちゃんは、年相応の女の子に見えた。


 そして今日、学校見学会の日。私は詩織ちゃんの新しい一面を知った。

 お兄さんと瀬那さんが仲良くしていることに嫉妬する、詩織ちゃん。

 普段は見せないような、子供っぽい仕草で拗ねる、詩織ちゃん。

 ――そして、家族に秘密を作られて泣く、詩織ちゃん。


 それを考えると、一ヶ月弱とはいえ、常に一緒に過ごして、家事をやって勉強も教えてくれる義兄(あに)がいたことが、彼女にとっては大きな変化だったのだろう。

 でも、今日、お兄さん宅での彼女の態度を見ていると……少し依存しているのではとも考えてしまう。


 仮にひとりの男性として恋をしているのなら、まだいい。お兄さんはいい人だと思うし、義理の兄妹だから問題はない。

 でも私には、彼女が『家族』という形に執着しているような……そんないびつさを感じてしまったのだ。

 それがいつか、彼女自身を傷つけることにならないといいのだけれど。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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