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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第一章

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SS スーパーのレジ担当は見た

 私は今年で高校二年生になる女の子。家の近くの公立高校に通っていて、部活はほどほどに、このスーパーでレジのバイトをしている。


 このスーパーは、問題があるお客はほとんどいない。強いて言えば、耳が遠いお年寄りや、やんちゃな子どもぐらいがネックという程度の、普通のスーパーだ。価格帯は少し高いが、そのぶん質は良いと評判だ。


 ただ、最近ちょっと気になるお客様が来るようになった。従業員の中でも密かに噂になっている男性。近くの有名な進学校の制服を着ているから、高校生なのはわかる。

 何が気になるかって? 高校生なのにピアスの量が異常なのだ。両耳合わせて、九つぐらいつけている。……異常だ。大学生やフリーターならただの個性だけど、高校生なら生徒指導対象でしかない。しかも底辺校ではなく、あの進学校だ。


 その彼。週に何度か買いに来るのだが、買うもの買うもの、食材ばっかり。見た目通りにお酒やたばこ(さすがに制服では買わないだろうが)とかではなく、ガチの食材。あのガラが悪い見た目に反して、自炊をしているのだろうか?


 今日も、みりん風調味料やゴマ油など、あたかも「俺、日常的に料理するんで」という品揃えだ。

 それに加えて、アジを一尾とパン粉、そして梅干し……これは! 私の好物の一つ、梅ジソを入れたアジフライの材料!


「アジフライに梅ジソを入れると、美味しいですよね」


 この完璧な品揃えを見て、堪らなくなった私は、仲の良い常連のお客様に対してするように、思わず話しかけてしまった。

(しまった!)と後悔したのは『後の祭りアフター・フェスティバル』。彼を見ると、「まさか、レジの店員に話しかけられるとは」という気持ちがまんまわかるような、驚愕の顔をしていた。


「あ、すみません! 私、アジフライが好きでして……」


 テンパって、追加でいらない情報を言う私。何してるんだか……。


「……俺も好きですよ、アジフライ。今日は梅とシソですが、チーズ入れても好きです」

「わかります! り、料理されるのですか?」

「趣味みたいなものですね」


 ま、まさか! 無視されるか舌打ちされるかと思いきや、こんなに丁寧でまともな返答をくれるとは! あの威嚇するようなピアスの見た目に反して(本日二度目)、実は自炊をする家庭的な料理好きとは、ギャップが凄まじすぎる。


 その後も、彼が私のレジに並んだ時に、お惣菜や旬の食材について取り留めのない会話を少しだけするようになった。


 それからしばらくすると、彼は綺麗な髪をしたお人形のように可愛らしい女の子と一緒に買い物に来るのを見かけるようになり、私はレジから『あぁ、青春だな……』と、親戚のオバチャンのような温かい目で見守っていた。私と年齢は一つしか違わないはずなんだけどね。

 でも、二人で覗き込んでいる買い物カゴの中身が、特売の野菜や日用品ばかりで異常に所帯染みている。「そこは新作のポテチとか、甘いチョコレート菓子とかをキャッキャしながら一緒に買うのが、初々しい高校生カップルじゃないのか! これじゃ完全に長年同棲している夫婦の買い出しやんけ!」と、レジを打ちながら心の中で激しくツッコんでしまった。


 ……そして、久しぶりに来た彼の左手が、痛々しい包帯でぐるぐる巻きになっているのを見て、私はレジのバーコードを読み取る手を止めて思わず尋ねてしまった。


「ど、どど、どうしたんですか!? その大怪我の左手!」

「うん? あぁ、ちょっと壁にぶつけてしまって……。大したことないんで、包帯が大袈裟なだけです」


 これだけの重傷っぽい包帯を巻くほどの「ちょっと」って、一体どれくらいの衝撃なのだろうか……。ギプスがないから骨折しているわけではなさそうだけど。

 それよりも、彼の隣にいる彼女さんが「よくもまあ、そんな見え透いた嘘を」と言いたげなジト目を彼に向けているのがひどく印象的だった。


「お大事に、お気をつけてくださいね」


 お会計後、ずっしりと重いカゴを、包帯をしていない無事な右手一本でヒョイッと掴んで持っていく彼に、私は思わず声をかけてしまった。まあ、店員として普通の気遣いだ。

 ただ、そんな彼を見て、隣の彼女さんが「もう、またそうやって無理するんだから」と呆れたように小言を言いながらも、彼の手からカゴの持ち手を半分奪うようにして、ぴったりと身を寄せ合って歩いていった。


 なんだかんだでラブラブなあの二人の関係性が、私は少し羨ましくて、気になってしまった。


 ◇◇◇◇◇


「……朔也くん。あのレジの女性の店員さんと、随分と親しげに会話して仲良しさんですね?」

「はぁ? 何を言ってるんだ。ただあのスーパーによく行くから、顔見知りになっただけだろ」

「ふーん……。朔也くんが来たら露骨に声のトーンが上がってましたよ? 」

「あのな。普通に世間話をしただけだろ」

「……」


 ― スーパーのレジ担当は見た 完 ―

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