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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第一章

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第32話 中間テストの打ち上げ模様②

 驚いたことに瀬那は初めてだった。

 ……ボウリングが。

 昭和生まれだとボウリング人気が高かった印象だが、瀬那の曾祖母が若い時はブーム前だったのかもしれないな。


「……東條さん、投げ方を教えていただいても良いですか?」

「あ、あぁ。まずはボールをこうやって……」


 俺は簡単なジェスチャーを交えつつ投げ方を教えた。

 単純に投げるだけだから、そんなに大変ではないと思うが。俺がいつも……と言っても小学生の時だが、投げている方法を教える。

 女性陣に聞かず、なぜ俺なのかは疑問に思う。


「ありがとうございます。これでなんとかできそうです」

「あぁ、良かったよ。この程度で良いならいつでも聞いて」

「はい」

「朔也くん、教え方上手だね!」

「えっ!?」


 俺たちの様子を見ていた雫が、不意に話しかけてきた。

 何故か、瀬那が目を丸くして驚いている。すぐそばに居たのに気づかなかったからだろうか。

 ……いや、それにしては若干冷たい目で俺を見ているのは気のせいでしょうか。俺にはそういう視線で喜ぶような性癖はないんだけど。


「……水野さん。いつの間に『名前で呼ぶこと』になったのですか?」

「あぁ、さっき雫が――」

「雫っ!?」


 瀬那が食い気味に反応した。だから何をそんなに驚いているのか。

 目が……目がさらに冷たくなったような気がする。寒気がするほどに。


「和人くんだけを名前呼びなのもどうかなって思って。前川くんは愛莉ちゃんに訊いてからにしようと思ってたの」

「ふーん、そうですか」


 若干、いつもの優等生の仮面が剥がれてる気がするけど……。

 本当にどうしたのですか、瀬那さん。


「なになに? なんのこと? ひろを名前で呼ぶってこと? そんなこと気にしなくて良いのにー」

「普通はそうだよな」

「どういうこと?」


 来る時に雫と話したことを、周りに聞こえない声で、瀬那と愛莉に簡単に説明した。


「あー、なるなる。それが噂に訊く、梅沢さんなのね」

「その感じだと、愛莉には何も被害はなさそうだな」

「うーん、特に何も無いよ。たぶん、私にはひろがいるから対象外なんじゃないかな」

「確かにそうかもな」


 納得できる理由だな。若干バカップル入っているこいつらだから、愛莉が和人を狙う心配をする必要がないのだろう。


「じゃあ、前川くんも浩紀くんって呼ばせてもらうね」


 そう雫が締めくくって、俺たちは席に戻る。

 終始、何か言いたげな瀬那の視線が気になってしまったが、今触れてはいけない気がした。


 ◇


 ボウリングは和人の圧勝で終わった。このイケメン、なんでもできるな。意外なのは二位が金森だったことだ。やりながら会話はしていたが、そこまでアクティブな印象はなかったのだが。冷静な性格なのか緊張しないのかわからないが、ここぞってところでミスをしなかったのが大きい。


 2ゲームやって、二回ともこの二人がワンツーだったが、その下の順位はバラバラだった。

 1ゲーム目は俺と浩紀、雫が抜きつ抜かれつつって感じで競っていた。瀬那は初めてだったこともあり全然ダメだったのだが、2ゲーム目に覚醒する。

 トリプルストライクからの、スプリットを制してスペアを三回。俺や浩紀を抜いて三位で終わるという快挙。

 ……わかっていたが、瀬那もスペック高いな。


 その後、俺たちは次にモビリティアクティブのあるエリアへ移動した。これが思ったより楽しく、他にプレイする人たちがいなかったのもあって、延々とみんなで競い合っていた。騒がしい俺たちに興味を持った子供たちが、周りに集まってくるまで延々とな。


 立ち乗り用の電動ボードには初めて乗った。バランスをとるのに苦戦して、無駄にむきになってやってしまった。それを見ていた瀬那に生温かい目で見られてしまったのは恥ずかしかったが。

 ここでも予想外に金森の操作が上手く、無駄に負けず嫌いがでた俺は、彼女に負けないように必死に操作していた。

 途中、金森が「ふっ」と不敵に笑って後ろの俺を見たことを忘れないぞ。第一印象と違って、面白いキャラしてやがる。


 一通り終わると、足がガクガクするぐらいになっていて、思ったより筋肉を使っていたことに驚いた。何とか近くのベンチまで歩き、座って回復を促す。


(やべぇ、これは、しばらく立ち上がれない……)

「だ、大丈夫ですか。足がガクブルしていますが?」


 笑いを堪えているように肩を震わせて、瀬那がやってきた。

 いっそ笑いたければ笑えばいいのに。


「足に結構来ているなこれ。やばいわ」

「普段使わない筋肉を使いましたからね。朔也くんのあんな必死な姿、初めて見たかもです」


 周りに知り合いがいないためか、瀬那は俺のことを自然に『朔也くん』って呼んだ。


「うるせー。負けたくなかったんだよ。そういや、みんなは?」

「あちらのドリンクバーに行ってますね。皆さんお疲れのようだったので」

「そろそろお昼だし、ちょうど良いかもな」

「……」


 何か言いたげな目で俺を見ている。

 ボウリングの時もそうだったが、こちらから訊いた方がいいのだろうか。

 悩んでいると――。


 ツンツン。


「うぉ!」

「きゃっ!」


 脚を突かれた。思わず叫ぶと、その声に瀬那も驚く。

 今更瀬那に触られても問題ないし嫌でもないが。なぜ脚が限界の時にやるのか。


「……」

「……(ツンツン)」

「ひゃっ!?」


 一度引いた指で、また容赦なく突いてきた。

 え? マジで何しているのさ、君は。いくら周りに友達がいないとはいえ、ここ人前ですよ。


「……ちょっと、今は勘弁してほしいのだけど。てか何でつつく?」

「ご自身の胸に問いかけてみてください。それで自ずとわかるはずです」

「えー……」

「わかりませんか? ……そうですか。それは仕方ないですね。では、大ヒントをあげましょう。――膝枕」

「膝枕って……あっ! もしかして……こないだ足がしびれた時にお前を突いたことへの仕返しか!?」

「Exactly !」


 俺と瀬那とで膝枕って言ったら、ついこないだの件以外ない。

 確かにあの時は、しびれた瀬那の足を面白がってツンツンと突っついていたが……まさかこんな形でやり返してくるとは。

 瀬那のことだ、虎視眈々と俺の足が死んで動けなくなるタイミングを狙っていたのだろうな。恐ろしい子……!


「ふふっ♪ 復讐達成で満足です♪」

「そりゃよかったわ。俺もある程度回復したから、みんなのところに行くか?」

「はい♪」


 立ち上がり、その場で屈伸して足の確認をする。うん、問題ないな。

 歩き出すと、横に瀬那が並んだ。


「……そう言えば、水野さんと仲睦まじく話していましたね。名前で呼び合う仲になるほど」


 と、むくれながら小声で言った。そのあまりに冷たい声にビビったのは内緒だ。


「何かご不満で?」

「……私は皆さんの前で、まだ名前で呼び合っていないのに、不公平です。私の方が先に呼び合っていたのに。……朔也くんが変な妄想するので、私は呼べていません」


 妄想って言ったよ、この子。それにやっぱり妄想だと思っているんじゃないか。

 ……少し前からずっと様子がおかしかったのは、そういうことか。


「……それなら、皆の前でも名前で呼ぶようにするか? 今日なら違和感なくいけるんじゃないか?」

「……水野さんに嫉妬したみたいに見られるので、今日はダメです」

(その通りだろうに……)


 流石に声に出してツッコミをすることができなかった。

 唇を尖らせて、まさしく『不満です』って顔してるのに、何を言っているんだろうか。


「そっか。なら好きなタイミングで呼んだらいいさ」

「そうします」


 それ以上は何も言えず、みんなのところに行くのだった。……チクチクとした恨み言を聞きながら。


 ◇


 ちょうど良い時間なので、お昼を食べに一度施設から出る。十分ぐらい歩くと、二階建ての小綺麗な建物が見えてきた。

 今日は浩紀がリサーチした、ケーキに力を入れているレストランだ。昼は一、二階ともレストランだが、夜は二階がバーになるという特殊な経営形態で、オシャレな作りだ。


「ネットで見るより、綺麗な作りだね。二階から桜並木が見えそう!」


 愛莉の一言にみんな頷いていた。

 すぐ隣には川があり、少し高くなっている土手沿いには桜が植えられているのがわかる。

 満開の時は見応えありそうだ。


 予約をしていたらしく、中に入るとそのまま二階へと案内された。二階の奥にはお酒のビンが並んでいて、その前にはカウンターがある。反対側には小さくて低いステージがあるので、ここでちょっとした催しもできるみたいだ。


 案内されたテーブルは、広めのものを二つくっつけた八人席。それぞれ好きに座り始めたので、残った席でいいやと待つ。

 結局、和人、浩紀、愛莉、雫の並びと、木内、金森、瀬那、俺という並びに座ることとなった。


「東條さんはどちらにしますか? 私としては、エビとアボカドのジェノベーゼか、トマトとモッツァレラチーズのパスタが気になりますね」

「どっちも美味しそうだな」


 ランチメニューはメインを選ぶ形式で、セットでサラダとスープかドリンクが付く。そこに追加でケーキのオプションがつけられる。もちろん、単品でケーキを頼むより安くなる。それに加えて、ランチメニューにだけ、高校生割引があるのがありがたい。

 メニューを広げた瀬那は、「どちらにしましょうか」と口では悩みながら、上目遣いでこちらをチラチラと見ている。

 ――もしかして、あなた。さっきのこと引きずってます?


「……じゃあ、もう片方は俺が選ぶから、途中でシェアしようか?」

「えっ、いいんですか?(ぱぁっ)」

「構わないよ」


 正解だったみたいだ。

 こういうのって普通、隣の女子同士とかでやらないか? 少し気恥ずかしいやり取りだが、先ほどのこともあるし、ここは彼女のやりたいようにさせないと後が怖い。

 ただ、このやり取りを見ていた向かいの浩紀と愛莉が、あからさまにニマニマしているので、後で浩紀には蹴りを一発入れておこうと思う。


「んじゃ、みんな選んだな。……すみませーん! 注文お願いします!」

「お待たせいたしました〜。ご注文をどうぞ〜」


 ひどく間延びした声だ。接客としてどうなんだと思うが……。


「え! 由香? ここでバイトしてたの?」

「愛莉ちゃん、やっと気づいたの? さっきから見てたよ〜」


 どこがで聞いたことある声だと思ったら、同じクラスの九重だった。

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