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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第一章

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第31話 中間テストの打ち上げ模様①

 週末の土曜日。今日は以前から話があった、中間テストの打ち上げをする日だ。

 メンバーは、俺と瀬那、浩紀と愛莉、それと和人の勉強会メンバー。それに加え、瀬那と同じクラスの木内と金森。

 そして水野だ。水野は俺たちが計画している時にたまたま通りかかり、話に乗ってきた。断る理由もないし、同性が増えれば木内や金森も居やすいだろうからな。


 今日は最寄り駅から数駅行ったところにある、複合型アミューズメント施設に行く予定だ。みんなとはその施設近くの駅で待ち合わせをする。


 俺と瀬那は別々にではなく、家から一緒に向かう。今日の瀬那は運動するためか、スカート姿ではなく動きやすいようにパンツスタイルだ。半袖のTシャツの上に、オーバーサイズのシャツブラウスを着ている。パンツは……ジョガーパンツと言ったか、動きやすい素材のものだ。髪型も後ろでまとめている。

 暖かくなってきたとはいえ、室内は冷房が効いているような場所があるので、Tシャツ一枚だと肌寒いからな。


「……なんですか? ジロジロ見て」

「そういう恰好、初めて見たけど、なんでも似合うな」

「……ありがとうございます。朔也くんはいつも通りですが……ピアスがいつもよりおとなしめですね」


 俺はカーゴパンツと半袖のTシャツの上に、長袖のシャツを着ている。いつもこういった格好なので、俺に新鮮味はない。

 ピアスだけは、運動時に引っかかるといけないので、ラブレットスタッドでまとめている。


「何をするのかわからないから、念のためな。引っかからないように、ラブレットにしておいた」

「ラブレット……?」

「簡単に言うと、内側がフラットになっていて、(かど)がないから引っかかりづらいピアスのことかな」


 少し前かがみになって瀬那の視線に耳を持っていき、耳の裏側を見せる。

 ……地味に恥ずかしいじゃないか。


「あぁ! 本当です、平面ですね。キャッチのイメージしかありませんでしたが、これだと引っかかりづらそうです」


 瀬那の声が耳に当たってこそばゆい。

 そんなとりとめもない話をしていたら、集合場所の駅に着いた。

 そこには和人と水野の二人以外がすでに集まっていた。木内は少しよそよそしい感じがするが、浩紀や愛莉と話したことはないだろうから仕方ないのかもな。

 金森は……まだ眠いのか、木内の肩に頭を乗せている。


「瀬那、朔、おはよ! 二人とも、一緒に来たのー?」

「最寄りが一緒だったからな。たまたまだ」

「へー」


 愛莉はニマニマしながらこちらを見ていた。勘ぐっているのがわかりやすい。

 うざかったので、とりあえず浩紀のすねを軽く蹴っておいた。


「いてっ! なんで俺なんだよ……」

「女子に暴力は駄目だろ? だから、仕方ない」

「うん、仕方ないね。ありがと、ひろ」

「……理不尽な」


 このやり取りに、A組の面子は笑っていた。これで少しは緊張が解けるといいのだけど。そうこうしているうちに、和人と水野がやってきた。


「ごめーん、遅くなったー!」


 水野はいつもの明るい声で謝ってきた。いつもの調子ではあるが、腰を90度曲げているので、本当に申し訳ないと思っているらしい。ただ、そもそもまだ集合時間前なので謝る必要がない。


「大丈夫ですよ。まだ集合時間前ですから、謝ることではありませんよ」

「それでも、待たせてごめんね。朝から部活で呼び出しがあって、学校に寄ってたんだ。配るものがあるからって」

「あー、だからお二人さん、一緒に来たんだ」


 わざわざ休日の朝に渡すものって、相当急ぎだよな。そんなに急いで渡すものってなんなんだろうか?


「よし! じゃあみんな揃ったし、行きますか!」

「おー!」


 言い出しっぺの浩紀が号令をかけて歩き出し、愛莉を連れて、A組の三人に話しかける。

 たぶん、A組の瀬那を除いた二人が輪に入りやすいようにしているんだろう。こういうところは素直に尊敬する。和人もそれに続いていた。


 俺も歩き出すと、横に水野が並んで、前の連中に聞こえないぐらいの音量で話し始めた。この子もなんだかんだ、距離が近いんだよな。


「ねえ、東條くん。いきなり言うのもなんだけど、木内さんと金森さんの事、学校で気にした方が良いかも……。南雲さんにも後で言うつもりだけど、東條くんも気にしてあげて」

「本当にいきなりだな。二人に何か怪しいことがあるのか?」

「ううん、二人に何か問題があるんじゃないよ。……もしかしたら、嫌なことが起こるかもって。……梅沢さんが、何かするかも……」


 ここで梅沢の名前がでるとは。


「まじか……。ここで名前が出るってことは、和人がらみか。……まさか、今日のこの集まりについてってこと?」

「察しがいいね。その通りだよ。和人くんと女子が出かけること知ったみたいで、ちょっとね……プンスカしてたよ」

「あいつがプンスカって、そんな可愛い感じで怒るイメージねーな」

「あはは」


 屈託なく笑う水野。実際、あいつが怒るイメージは、まさしく性格の悪いお局のそれだ。

 ……さっきから何か妙な視線を感じるが……今はそれどころではない。


「あの二人、大人しそうな性格してるもんな、いびりの対象になりやすそうだ。……水野は大丈夫なのか?」

「へぁ!? 私? ……まあ、ちょっとね」


 言いづらそうにしている。

 水野の性格からして、あまり他人を悪く言わないだろう。良い意味でも悪い意味でも、空気を読みそうな子だからな。


「野外学習の時も、何かあった感じか?」

「……わかる?」

「まあ、なんとなく。あまり仲良くはないとは感じていたが。今の話を聞くと……な」


 「あはは……」と、水野は苦笑いをしながら頭をかいている。

 野外学習の時の水野の行動を思い出す。バスの席順にしろ、担当振り分けと、そのあとのやり取り。どう考えても梅沢と絡もうとしていなかった。


「あまり広めてほしくはないのだけど。私が東條くんや和人くんの班に、私から入りに行ったでしょ。それが嫌だったらしく、『周りが牽制しているのに、空気読んでよ』って後で怒られちゃった」


 実際はそんなレベルの言い回しじゃないのは想像できる。

 下手したら尊厳を傷つけるような言葉を言っていたのかもな。

 全然気づかなかった。


「……もっと言うと私が『和人くん』って呼んでいるのも嫌らしいよ。男バスに他にも『森田くん』がいるから、わかりやすく下の名前でって部活内で決まったんだけどね」

「えぇ……。人の呼び方なんて当人同士が良いなら、他人が文句言うことではないのにな。わるいな、気づけなくて」

「え? ううん、東條くんが悪いわけじゃないし、それに気づかなくても仕方ないよ」


 俺に気づかれないように……というか、和人に気づかれないようにしたんだろうな。そう考えると、瀬那に対しては直接的だったのかもな。それだけ焦ったのか? わからん。


「まあ、気を付けるよ。最悪、ヘイトを俺に向けるようにすればいいだろ」

「……東條くんが犠牲にならなくても」

「今更だろ? それに俺に対して、大したことができるとは思えない。できたとしても無視ぐらいだろ。そもそも積極的に話したいわけでもないから、それで構わないしな」

「あー」


 実際に俺に対して何もできないと思う。多少の嫌がらせがあったとしても、今までも同じようなものだったからな。それなら、下手に()()()()()()()()()()()()人を増やす必要はない。


「対策として考えたことがあるんだけど、お願いしてもいいかな?」

「……内容にもよるが?」

「名前で呼んでいい?」


 水野は少し頬を染めながら、恥ずかしそうに上目遣いで言った。


 ――ゾクッ。

 その瞬間、なぜか少し前を歩いている集団の方から、背筋が凍るような凄まじい『圧』を感じた。……気のせいか?


「これまたいきなりだな……別に確認しなくても構わないけど、なんで?」

「三人っていつも一緒にいるでしょ? だから、私から和人くんだけ名前呼びだと目立って角が立つのかなって。東條くんのことも名前で呼べば、不自然じゃないでしょ?」

「あーなるほどねー。和人だけに特別仲が良いわけじゃないってカモフラージュにするのか。いいんじゃない」

「ありがと! 朔也くん。せっかくだから、不自然にならないように私のことも名前で呼んでね」

「え? あぁ、わかったよ、雫」

「ふふっ、よろしくね!」


 そう言って嬉しそうに笑った水野改め、雫は、小走りで前の集団の中に合流していった。

 それにしても、梅沢の和人への執着は少し過剰すぎる気がする。

 ……和人に本当に彼女ができたらどうなることやら。


「よし、着いたぞ!」


 しばらく歩くと、目的の施設に到着する。ここは前払い制なので浩紀がまとめて手続きをしてくれた。学割が効くので全員学生証も提示する。

 コースはフリープラン。一度昼食で外に出るが、もう一度戻ってくる予定だ。施設専用のアプリがあるので、それで管理するシステムだ。

 その後、ロッカーに不要なものを預けて、準備をする。


「じゃあ、最初は駄弁りながらボウリングしようぜ!」


 浩紀の意図としては、あまり接点がない木内と金森と打ち解けるために、動きが激しいものより、落ち着いているものから遊んでいこうって考えだろう。

 勉強会のメンバーはともかく、木内と金森はまだ瀬那以外には慣れていないはず。瀬那が俺のことを彼女目線で都合よく吹聴しているためか、俺に対しても他と変わらない距離感なのは救いだな。正直、来るとは思っていなかったのだけど、これは和人効果の方が勝ったのだろうな。

 ……雫? 彼女の性格なら、気にするだけ無駄だ。


 ボーリングの玉を選んでいると、浩紀が絡んできた。


「それにしてもさ、女子のみんな方向性が違うけど、レベル高くないか?」

「……言いたいことはわかるが、愛莉に聞かれても知らんぞ」


 まあ、でも言いたいことはわかる。百花繚乱ではないが、それぞれ見た目のレベルは高い。

 瀬那は言わずもがなだし、愛莉はモデルができそうなメリハリがある体型。

 雫はザ・スポーツ少女と言った、引き締まっていて健康的だ。

 木内は文学少女のイメージそのままの黒髪ロング。実際に本を読むかは知らないが、『深窓の令嬢』って感じだ。

 金森は肩口までの髪を後ろで無造作に一つ結びしている。寡黙でミステリアスな雰囲気を醸し出している。


「いや、あいつなら逆にのってくるね!」

「残念ながらそれは違うのだよ、ひろ! 私が言うのは良いけど、ひろはだめー」


 と言いながら、急に割り込んでくる愛莉。いつの間に近くに寄ってきたんだこいつ。


「はい、私以外の女の子のことでデレデレしたので、ペナルティで私にジュースおごってください」

「……理不尽な」


 浩紀……強く生きろよ。骨くらいは拾ってやらないこともない。

 他人のカップルの痴話喧嘩を呆れ半分で眺めながら、俺は適当な重さのボールを手に取った。


 ――しかし、他人の心配をしている場合ではなかったのだ。

 この時の俺は全く気づいていなかった。雫と親しげに名前で呼び合っていた俺の背中を、少し離れた場所から静かに、そして射殺すように見つめている、絶対零度の琥珀色の視線に。

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