幕間:中間テスト結果の裏側で
Side:――――
放課後、辺りが薄暗くなったころ。学園の、今はあまり使われていない空き教室の一室に私はいた。念のため電気も点けず、カーテンを閉めて外から見えないようにしている。そのため、部屋の中は薄暗いを超えて、一メートル先まで見えない状態だ。
私の前には、立っている人影が一つ。
「……先生、中間テストの結果をご覧になりましたか?」
「ああ、見たよ。まさか実力テストはまぐれではなかったのか」
「この歴史ある学園で、あんな舐めた態度の男が……特進を超えるとは思えません! カンニングしたに決まっている!」
その男は今にも机を叩きそうな勢いで叫んでいた。暗がりでもわかるほどに顔を赤くし、血管を浮き立たせて興奮しているようだ。
私は、人は少なくなったとはいえ誰かに聞かれると困るので、彼をなだめることにした。
「まあまあ、落ち着きなさい……先生。念のため厳しく監視するように担当の教員にはお願いしたが、不審な動きには気づかなかったらしい。単純なカンニングではないということだ」
「ぐぬぬぬ。こざかしい!」
「それよりも、周囲の生徒たちの焚き付けはどうなったんだ?」
「ええ、もちろんさらに吹き込んでおきましたよ。実力テストの順位は『たまたまだ』と考えていた生徒が何人もいたので、考えを改めさせました。次回はやってやります。どんな手を使ってでも」
悪役のそれのごとく、歪に笑う口元が見える。
『どんな手を使ってでも』――何をするかはともかく、そこまでするほどに今回の中間テストの結果が気に入らないのだろう。それは私も一緒だがな。
「風紀委員も役に立たなかったようです。すでに接触していたらしく、『プライバシーに関わるため理由は話せませんが、正当な理由でした』と言ってやがりましたよ。あの不良ルックのどこに正当な理由があるのやら……。三波先生や教頭も口を割らないですし」
「そこも何か裏で手を回しているのかもな。引き続き探りを入れてみよう。特に三波はまだ若く小柄だ。思春期の男子生徒が変に手を出している可能性は十分あるからな」
「もしそうなら、私もなか……いえ、何でもありません」
こいつが何を言おうとしたのかはわかっている。
スキャンダルを突き詰めて、下衆なことでもしようと考えているのだろうが……まだ、その時ではない。
「それと、彼女についてはどうだ? 成績優秀で、容姿も目立つ生徒なら、学園のいい広告塔になるはずだ。ぜひ特進へ入れさせたい」
「話はしましたが……。断られました。そのあと、うちの生徒を使ってさらに勧誘させましたが、そちらも駄目でした。彼女は彼女で頑ななようです」
「ふむ、駄目か……。だが、まだ時間はある。近いうちに学校見学会があるからな、できればそれまでに特進へ異動させたいものだ」
「去年の一葉みたいに、表に立たせて注目させたいものですね」
「本当にな」
薄暗い教室の中で、二人の教師は静かに笑い合っていた。




