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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第一章

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第25話 弁当と勉強と

 週が明けると、とうとうテスト週間だ。委員会も部活も休みになる。

 瀬那もこの週はバイトを休みにしているらしい。


 そして、先日からの俺のベッドに潜り込んでくる行為、まだ続いている。さすがに止めたが、話を訊くとまだ一人になるのが怖いらしい。

 ……あんな顔されたら、男として「ダメだ」とは言えない。ただ、連日、男のベッドで寝ることに抵抗がないのだろうか。それに……俺の理性は保てるのか。


「なあ、朔也。最近ずっと弁当だな。しかも、彩りが良くなった気がする。どう言う心境の変化だよ?」


 昼休み、学食で浩紀、和人らと食べていると、浩紀が絡んできた。人の弁当の内容をそんなに覚えているものだろうか。めざといぞ、浩紀のくせに。


「……最近、弁当を凝るようにしてるんだよ」

「つまり、俺の分も作ってくれるってことか?」

「和人……意味がわからん、助けてくれ」

「うーん、俺もわからないね」


 爽やかに言われた。呆れた顔をしているが、目は俺の弁当を見ている。「ふむ、ふむ」と何かを考えているようだが……悪い予感しかしない。


「でも、俺も思ってたよ。なんて言うか……男が、と言うか、朔也が盛り付けた感じがしないかな」

「……」

「えっ!? ま、まさか!」

「ちげーよ!」


 この爽やかなイケメン、鋭いぞ。確かに自分と盛り付け方が違うのはよくわかる。俺なんて、ある程度ごちゃごちゃしてても気にしない。だが、瀬那が盛り付けると、ちゃんとシリコンのカップやバランも使って、綺麗に整えている。さらに、寄れないように、隙間に冷食やブロッコリーなどを入れて、調整もしてきている。そりゃ、今までの弁当に比べたら、月とスッポンかもしれないが……。


「で、誰なんだよ。……南雲さんか」

「んっ!」


 喉に詰まりそうになったじゃねーか。

 最後の方は小声で喋る分別はつくんだなこいつ。本当でも嘘でも、誰かに聞かれたら面倒なことになるのは理解しているらしい。

 しかしなぜ、ピンポイントで当ててくる。


「えっ? マジ!?」

「……何でそこで南雲になるのかわからないんだが?」


 ……『南雲』。学校では今まで通り『南雲』、『東條さん』呼びにしようと話し合った。急に名前呼びだと、好奇の対象になる未来しか見えないからだ。ただ、やっぱりと言うか何と言うか、それを提案した時、彼女は「むぅ」っと、むくれていた。口を尖らせて「私、納得してません」とわかるように、睨んできた。


「だってよ。お前、女子と話してるのほとんど見たことないじゃん。俺が知ってる限り、愛莉は置いておいたとして、水野さんか南雲さんだけ。もし、水野さんとそういう関係なら、同じクラスだし、すぐわかると思うぞ」

「確かにそうだね。相手がいるとすると、その二人だと俺も思うよ」

「和人もかよ……」

「人のこういう話は気になるから、仕方ないね」

「えぇ……仮にできていたとしてだ、毎日弁当を作ってもらうのはどうなんだ。俺は申し訳ない気持ちになるぞ」


 実際のところ、毎日、用意してもらっているのだがな。申し訳なく思っているのは本当だ。

 それを言ったところ「私の分も作っているので、気にしないでください。もしかして、私の弁当は嫌だ……と?」と、いつものパターンでこちらが折れることとなった。


「まあ、それはわからなくもないね」

「そうだろ」


 和人が納得してくれたので、何とかなるだろうと考えていると――


「でもさ、南雲さんとは何かあったよね? だって、あっちがお前を気にしているし」


 と、浩紀が意味深なことを言って、俺の斜め後ろ辺りに視線を送る。

 まさか! と思い、後ろをちらっと見ると、瀬那がいることが分かった。友達と一緒に食事してるらしい。

 ……まじか。


「……和人を見ているだけじゃないか」

「俺は話したことないから違うと思うよ」

「で、何かあったのか?」

「……知っていると思うけど、委員会の当番が同じだからな。図書室以外でも少し話すことはあるよ。でも、それだけだ。単純に見知った相手がいるから気になっただけだろ」


 それっぽいことを言って、この話はおしまいだと言わんばかりに、弁当を再開する。

 ……でもな、視線を感じるんだよな。浩紀もチラチラ視線を送っている。俺を見ては、目が「本当にそれだけか?」と物語っている。瀬那はどうしたいんだ……。


 その時、制服のポケットに入れたスマホが小さく震えた。

 画面を見ると、メッセージが届いたようだ。二人に見えないように机の下でこっそり中身を見ると――


『彼女さんにお弁当を作ってもらって、良いですね』


 と、ご丁寧にハートのスタンプ付きで来ていた。

 もちろん送り主は、斜め後ろの席にいる『南雲 瀬那』だ。

 ……おい、お前のことだよ。


 思わず振り向いて文句を言いそうになったが、怪しむ浩紀と和人を前にしてそれすらできない。俺はスマホをしまい、無言のまま残りの弁当をかき込んだ。

 ……今日もいつも通り、美味い。


 ◇


 放課後、すぐに家に帰ろうとしたところ、浩紀に捕まった。どうやら、勉強を教えてほしいらしい。

 瀬那の身の安全のため、帰宅途中に合流する予定だったので断ろうとしたが、家まで押しかける勢いなので諦めた。それを聞いていた和人も、「せっかくだから」と一緒にすることになり、元々予定していたのだろう、愛莉も合流した。

 隙を見て、瀬那に事情説明のメッセージを送っておく。それと『ごめん、待ってて、図書室にでもいてくれ』と。


「わからないところを言ってくれ」

「オッケー!」

「おけ~」


 全員がまとまって勉強できるように、近くの机を借りてくっつける。

 和人の成績は、学年ランキングの上位には載らないが悪いわけではない。総合コースなら上位に入る方だ。そのため、俺が勉強を教える対象は主に浩紀と愛莉のカップルになる。

 入学してまだ間もないが、進学校だけあって、授業の速度は結構早い。二年の二学期には、高校三年間のすべてを網羅するらしい。残りは受験に向けての対策になる。

 そのため、一学期の中間だとしても範囲が広く、授業についていけないヤツも出てくる。


 俺も自分の勉強を始めようと、勉強道具を取り出した時だった。

 足音がこちらに近づくのが聞こえる。

 反対側に座っていた浩紀と愛莉がそちらに向き、目を見開いている。

 疑問に思いそちらに目を向けると――瀬那がいた。


「こんにちは。皆さんはお勉強ですか?」

「あ、ああ。図書室の時と同じで、浩紀たちに頼まれてな。南雲はどうした?」

「帰りがけに皆さんが集まっているのが見えたので。気になってしまって」


 ……嘘だ。いや、正確には気になったのは本当だろうが、帰りがけではなく、わざと教室の前を通ったはずだ。先に帰られるよりは、安心できるからいいけどさ。


「南雲さんも一緒にやってく?」

「せっかくなので、皆さんが良ければ」

「もちもち」


 愛莉がフランクに絡んでいく。何度も話しているためか最初の緊張はなくなっている。

 浩紀もほぼ同じ反応で、和人だけが初対面に近いが、いつもの爽やかな笑顔を向けている。


「初めまして、南雲さん。森田和人です。よろしくね」

「こちらこそ、初めまして。南雲瀬那です。よろしくお願いします。噂はかねがね」

「噂?」


 訝しむ和人に、瀬那は俺をチラッと見た。

 ……待て、何か変なこと言う気じゃないだろうな。俺の嫌な予感は大抵当たるぞ。


「ええ。『爽やか王子』ってお聞きしたことがあります」

「……朔也」

「……ごめん、つい」


 珍しく怒気が孕んだ低い声で和人が言うので、俺は素直に謝る。……瀬那、お前後で覚えてろよ。

 ちなみに、和人は『王子』と言われるのが嫌いらしい。まあ、わからなくもない。そもそもそんなふざけた呼び方をしているのは、俺と浩紀くらいかもしれないが。


 ◇


 瀬那は愛莉の横に座って参加している。

 自意識過剰かもしれないが、俺の横に座ったら、ちょっかいかけてきそうなので助かった。


「南雲さんって、勉強教えるの上手いよね。朔だと、淡々と説明するだけだから、違いがよくわかる!」

「……もう、教えなくていいか?」

「ごめんって、嘘、嘘。淡々とした説明だけど、的確だから困ったことないよ!」

「確かに、さ……東條さんは、勉強のこととなると、淡々と説明されますよね」

「……」

「南雲さんも朔に聞くことあるの?」

「はい、図書室とかで教えてもらいますよ。数学は東條さんの方が理解度高いですし」


 さっきから、微妙に含ませて言うのやめてくれませんか。『さ…』とか『図書室とか』、わざとなのバレバレですよ?


「そうなんだ、南雲さんなら必要ないと思って……『南雲さん』だと硬いね。これからは『セナチー』って呼ぶね!」

「セ、セナチー……?」

「うん、勉強を教えてもらう仲なのに、苗字だと遠いでしょ!」


 変なこと言い出したな。俺は『(さく)』。浩紀は『ひろ』。和人は『(カズ)』と呼ぶのはよくわかる。瀬那を『セナチー』と呼ぶのはどういう基準だ。


 受け入れづらいのか、少し困った顔で俺を見てきた。

 『任せとけ』の意思表示で少し頷いておく。安心したような顔になったので、


「よかったなセナチー」

「!?」

「……」


 とだけ言っておいた。

 机の下で蹴ろうとしたのか、足が動くのがわかったが、配置的に届かなかったようだ。


「よろしくな、セナチー!」

「よろしくね、セナチー」


 浩紀も和人もノってきた。完全に否定しづらい空気になってしまったか。仕方ないなー。


「すまん、ノっておいて悪いが、『セナチー』を南雲本人が許すかどうかは別だろ。どうなんだ?」

「……すみません、『セナチー』はちょっと……。可愛らしいとは思うのですが、恥ずかしさが勝ってしまって……。もしよければ、下の名前で『瀬那』でお願いします」

「おっけ! それなら瀬那って呼ぶようにするね! 私のことも『愛莉』でも『アイリン』でも好きに呼んでいいよ!」

「それでは、愛莉さんと呼びますね」


 浩紀と和人は、今まで通り『南雲さん』でいくらしい。無事に女子同士の呼び方がまとまったようでなによりだ。

 ……だからさ、俺はちゃんと助け舟を出したんだから、さっきのことを根に持って、背後に般若が見えそうな笑顔でこちらを見ないでくれ……。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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