幕間 勉強会のその裏で
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放課後、夕暮れの空き教室で報告を受けていた。
今はほとんど使われていない一室。念のため電気は点けず、カーテンも閉めている。
「――ということで、計画は順調のようです。あの二人は、ぎくしゃくしているのではないかと」
「本当にこんなことで、南雲を特進に移動させられるのか?」
赤口の報告に、勝田が腕を組む。私はその顔を見てから、ゆっくりと頷いた。
「すぐには難しいでしょうね。ですが、直接勧めても断られるのです。別の方向から働きかけるのも一つかと」
文化祭で大きな失敗をした赤口は、何か別のことで挽回したいらしい。
(南雲を特進に移動させても、こいつの手柄にはならないだろうに)
それでも、何もしないではいられないのだろう。
こちらとしては都合がいい。動く理由まで用意してやる必要がないのだから。
「彼女の方は、引き続き赤口先生にお願いします。南雲が気にしているなら、接触は続けるべきでしょう」
「わかりました。本人にも伝えておきます」
赤口が手元のメモに書き込む。それを待ちきれないように、勝田が口を開いた。
「東條の方はどうなんだ? 勉強のコツはわかったのか?」
「それが、特別なことはしていないそうです。間違えた問題を解き直して、わからないところは教科書に戻ると」
「そんなこと、誰でもやっているだろう」
勝田が鼻を鳴らす。
期待した答えではなかったらしい。私は机に置いていた指先を、そっと引いた。
「南雲から教わっている、という話は?」
「互いに教え合うことはあるようですが……東條が教えることもあるそうです」
なるほど。それでは、南雲を引き離せば成績が落ちる、とも限らないか。
だが、二人の関係が勉強に影響する可能性はある。
「彼女にわからない問題を教わるよう伝えてください。東條なら、頼まれれば断りにくいでしょう」
「それで勉強の時間を削るのか?」
「教えている間、自分の勉強は進みませんからね。南雲も、二人で過ごす時間が減れば気になるでしょう」
勝田の腕がほどけた。
ようやく納得できる役割が見つかった、という顔だ。
「では、赤口先生は南雲の様子を。悩んでいるようなら、特進への移動を勧めてあげてください」
「はい」
まだ何も起きてはいない。それでも、自分が成果を出す場面を想像できれば、人は動く。
「それでは、お二人とも引き続きお願いしますね」
「わかりました」
「あぁ」
二人が廊下へ出た後、私は閉まった扉を見つめた。
足音が遠ざかるまで待ってから、カーテンを少しだけ開く。
順調、という報告を信じるのは早い。
次は、彼女から直接話を聞いておくべきだろう。
それに……彼もまた、焚きつけるべきかもしれない。




