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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第四章

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第196話 三が日の来訪者

 旅行から帰ってきた次の日は、まったりと過ごしていた。まだ三が日ということで、瀬那もバイトを休みにしている。おかげで、二人してのんびりだ。

 とはいっても、旅行の後片付けとして、軽く掃除と洗濯は済ませた。そこまで時間のかかることではないし、特に掃除はしておかないといけない理由があったのだ。


 そして、並んで座って正月特番を見ながら、一息ついている時だった――


 ピンポーン♪


 ――チャイムが鳴った。


 この家を訪ねてくる人間は少ない。さらにいえば、まだ三が日だ。

 ……そんな年始早々にやってくる連中となれば、見当はつく。


 インターホンの画面を見ると、そこに映っていたのは……案の定、浩紀と愛莉だった。

 こんなこと、前にもあったな……と思いつつ、応答ボタンを押す。


 ポチッ。


「お前ら……来るの明日じゃなかったか?」

『しょうがないだろ! 暇だったんだから!』

『あと、課題が終わらない問題!』

「……まじかー」


 呆れるしかないが、そのままにしておいても仕方ないので、部屋に上げることにした。

 正月って思ったより暇なのはわかるから、気軽に遊びに来られる俺たちの家を選ぶのは理解できるのだが……。


 玄関で俺と瀬那が並んで出迎えると、二人はいつもの笑みを浮かべて入ってきた。

 ……もう少し、申し訳なさそうにしてくれませんかね?


「そう睨むなって……ごめんってば」

「明日のつもりだったんだけどさ。瀬那、明日はバイトだって言うでしょ。せっかくなら二人から話を聞きたいからね!」

「後で和人たちも来るって言ってたぞ!」

「知ってる。少し前に和人から連絡があったからな!」


 急に今日来ることにした二人は、まず和人とエレノアに連絡を取ったのだ。グループで確認すればいいのに、わざわざ個人宛てにな。

 不審に思った和人が俺に連絡をくれたんだ。やっぱりあいつは気遣いができる。おかげで、慌てずに掃除を済ませる時間も取れたわけだ。


「あちゃー、バレてたかー」


 浩紀はおでこに手を当てて天を仰いでいた。

 リアクションが古いのは置いておくが、顔がニヤついているので、わかっていたのかもしれないな。


「あのなー、和人が普通だからな?」

「わかってるってー。オレたちの仲だろ?」

「はぁ……」


 愛莉はすでに瀬那と何かを話していた……が、急にその周りを回り始めた。前後左右、三百六十度、瀬那の姿をまじまじと眺めている。


 ……何しているんだ?

 俺は首を傾げながら、二人のやり取りを遠目に眺めることしかできなかった。


「何でしょうか……?」


 瀬那も不思議に思ったようで、首を傾げていた。

 ただ、愛莉は「いやいや、気にしないでー」と、何やらニヤニヤしている。

 ……なんだ?


 とりあえず、いつも通りにリビングへ通した。瀬那がお茶を用意している間に、二人は珍しくさっさと課題を取り出した。


「……どうした? 正月に変なものを食べたのか?」

「朔! それは失礼! 私はともかく、浩紀はいつも変でしょ!」

「愛莉さん、それはひどいっす!」

「はぁ……」


 大きめにため息をついて、浩紀たちの課題を確認してみる。


「……あれ? もうほとんど終わっているじゃねーか」


 ざっと見たところ、出された課題の九割は終わっていた。

 残っているのは比較的難しいところだけ。


「そりゃな、さすがにやってるって。……お前らと違って、暇だったし!」

「含みのある言い方だな」


 散々メッセージで『スノボーいいなー』と送ってきたことを考えれば、言いたいことはわかる。今度行くなら声をかけてもいいかもしれないが、金は貯めとけと言っておかないといけないだろう。


「うちらじゃわからないところだけ残っちゃったんだよねー。仕方ないじゃん」

「そうそう、仕方ない!」

「はい、お茶です。……これぐらいなら、すぐに終わりそうですね」

「でしょ? 私たちも頑張ったんだよー。エレノアと和はもう終わってるって言うからさ。二人が来る前に終わらせようと思って、早めに来たんだよね」


 人のことを考えているといえば、そうなるのか……なるのか? そもそも、俺たちのことを考えていたら、こうはならないのでは?


「……まあ、いいか。そういうことなら、さっさと取りかかるか」

「オッケー!」


 思ったよりやる気があるみたいでよかった。

 浩紀と愛莉が並び、テーブルを挟んで俺と瀬那が座る形になった。

 ……これなら一時間ぐらいだろう。


 ◇


 あれから二人とも集中して勉強をしてくれたおかげで、一時間もかからず、まず浩紀の課題がすべて片付いた。


「ふぃー、疲れた……終わった……」

「無事に終わって何よりだな」


 なんだかんだ基礎はできているからか、応用問題も少し説明を加えるぐらいで済んだ。

 一方、愛莉の方は、まだ瀬那とノートを覗き込んでいる。


「うーん……こう?」

「それでも大丈夫ですけど……こっちの考え方の方が楽ですよ」


 愛莉もほとんど終わっていて、残るは最後の一問だけのようだった。

 こっちは、数学にもう少し慣れが必要って感じかな。


 時計を見ると、もうすぐ十二時になるところだ。そろそろ昼飯を作り始めた方がよさそうだ。


「浩紀、お前らも昼飯食べるだろ?」

「食べるけど、今日は持ってきたから大丈夫。さすがに急に来て、作ってもらおうとまでは考えてないって」

「この際どっちでも構わないが……わかった」


 和人とエレノアは、昼を食べてから来る予定らしい。

 さて、何を作るかな。とりあえず、キッチンの横にかけてあるエプロンをつける。


「終わったー!」

「お疲れ様です」

「……ねぇねぇ、瀬那さー」

「はい、何でしょうか?」


 視界の端で、愛莉に呼ばれた瀬那が顔を寄せるのが見えた。

 とりあえず、俺は冷蔵庫を開けて食材を確認する。


 さて、何を作ろうかと考えながら、冷蔵庫の取っ手に手をかける。

 ガチャ。

 冷や飯とネギと卵と――


「ふへぇ!? な、なんでわかるのですか!」

「ふっふふー。この愛莉ちゃんをなめてもらっては困りますなー」

「あわわわわ……」


 瀬那の情けない声が聞こえてそちらを向くと、愛莉が勝ち誇った顔で瀬那を見ていた。当の瀬那は、両手で顔を覆っていた。


 ……なんだ?

 愛莉のことだから、酷いことはしていないだろうけど……。


「どうした?」

「い、いえ! 朔也くんはお気になさらずに!」

「……え?」


 瀬那が慌てていることだけはわかるが……なんだ?

 愛莉はドヤ顔のまま俺を見て、口を開く。


「まあ、あれよ。あんたらもちゃんと進んでるってことよね!」

「……はぁ?」


 言っている意味がわからないが、それを聞いた瀬那は、顔を覆う手の隙間から見える耳まで赤くしていた。つまり、瀬那にとって恥ずかしい話……か。


「……ああ、そういうことか。あんま瀬那をからかうなよ」

「えー! 朔は平気なの?」

「俺は別に。お前らに言われてもなんとも思わんよ」

「つまんなーい!」


 つまらないと言われても、こっちが困る。

 この手の話を振られるたびに照れていたら、こいつらの相手なんてしていられないだろうに。


「じゃあ、そういうことで。……瀬那、昼はチャーハンでいいか?」

「……あぁぁぁぁ」

「……まだ恥ずかしがってんのかよ。チャーハンでいいや」


 冷や飯をレンジに入れて、食材を切り始める。

 顔を赤くしたままテーブルに突っ伏す瀬那の姿に、愛莉がまた笑い声を上げていた。

 結局、瀬那はチャーハンが出来上がるまで悶えていた。



浩紀は空気を読んで無に徹しています。


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