↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

236/261

SS 南雲 瀬那:ジャージを貸してください

 それは、愛莉さんのひと言から始まりました。


「瀬那ー、ジャージ持っていない?」


 肌寒くなってきたこの頃、ジャージを忘れてしまうのは致命的ではありませんが、少し困ってしまいます。その困ったことになった愛莉さんが、私にジャージを借りようとクラスまで訪ねてきました。

 手には教科書やノートを持っているので、移動教室の帰りのようです。


「すみません、お貸しするのは全然構わないのですが……残念ながら今日は体育がないので、持ってきていないのです」

「オー! ノー!」


 彼女らしく、わかりやすくオーバーリアクションをしています。

 でも、そもそも……。


「……そもそも、サイズが合わないかもしれませんよ。下はともかく、上は……」

「身長差のこと? 上なら大丈夫でしょ。瀬那、お胸あるし」

「愛莉さん!? な、何を言っているのですか!?」


 へ、変なことを言わないでください!

 教室の前で、恥ずかしいじゃないですか!


「まあまあ、落ち着いて。ってことは、このクラスの人に訊いてもダメってことよねー。どうしようかなー」

「あれ? どうかした、愛莉?」


 廊下を歩いてきたのは朔也くんたち。

 その中にいた前川さんが、愛莉さんがうちのクラスにいるのを不思議に思って声をかけたようです。


「あ、ひろー。ちょうど良いところに! ジャージありがとう!」

「ありがとうって何だよ!?……って、忘れたんか」

「そうそう。いいでしょー?」


 前川さんの手には、畳んだジャージがありました。どうやら、こちらはちょうど体育帰りだったようです。前川さんのサイズなら、大きめなだけなので問題ないはずですね。


「彼ジャージってやつだねー……くんくん……汗臭い!」

「そりゃ、さっきまで使っていたからな! 嫌なら返せよ?」

「嫌じゃないから、返さないよ?」

「そうかよ……」


 彼氏の服が汗臭くても返さない……その気持ちはわかります。

 そのまま皆さんは、それぞれの教室へ戻っていきました。


 ……彼ジャージ……。


 ◇


 別の日。

 時間が空いたので、マンションのジムに行こうと思います。


「朔也くん、ジャージを貸してください」

「……お前、ジャージ持っているだろ?」

「貸してください」

「なんでだよ」


 私が「譲らない」と目で訴えると、朔也くんは渋々といった様子で、部屋からジャージを持ってきてくれました。


「ほれ」

「ありがとうございます……くんくん……朔也くんの匂いがしません!」


 匂ってくるのは、私と同じ柔軟剤の香り。

 気に入っている香りなので、これはこれで嫌いではないのですけどね。


「そりゃ、洗ってから着ていないからな」

「……」


 一緒に洗濯しているので、当たり前といえば当たり前なのですが。

 ……それはそれで、つまらないですね。


 借りるタイミングを間違えました。失敗です。


「えっと……要らないなら返して」

「いえ、お借りします。行きましょうか、ジムに」


 スタスタと玄関へ向かって歩いていきます。

 頭の中は、すでに次に借りるタイミングのことでいっぱいです。


「……あ、俺は何を着ていけばいいんだ?」


 だから、後ろから聞こえた朔也くんの声に何も答えなかったのは、仕方ありません。


 ◇


 別の日。

 今度はタイミングを間違えません。

 朔也くんがジムから戻ってきたところを狙います。


 運動を終えたばかりなので、当然、今着ているジャージは洗濯前。

 今度こそ間違いありません。


「朔也くん、そのジャージを貸してください」

「……今着てたやつ?」


 彼は自分が着ているジャージの裾を軽く引っ張り、「これのことか?」とこちらを見ます。


「はい」

「汗かいてるぞ?」

「構いません」

「俺が構うわ!」


 そう言って、朔也くんはジャージの上を脱ぐと、そのまま洗濯かごへ放り込もうとします。


「ま、待って!」


 インターセプトです!

 放り投げられたジャージをキャッチして、私はホクホクです♪


「……そもそも、お前も一緒に帰ってきたのに、そのジャージをどうするんだよ?」

「あっ……」


 そうでした……。

 私たちは、ジムから帰ってきたばかりです。


「そんな残念そうな顔すんなって。何でそこまで俺のジャージを欲しがるのか知らんけど」

「うぅ……」


 ……また、失敗です。

 次こそは……!


 ◇


 別の日。

 次の時間が体育なのを良いことに、朔也くんのところへ行きました。

 彼が一時間目に体育だったことは確認済みです。


 洗濯前。

 使用直後すぎない。

 そして、私にはこれから使う理由があります。


 ――今度こそ完璧です。


「朔也くん、ジャージを貸してください」

「……だから、お前もジャージ持っているだろ? カバンに入れていたの見てたぞ」

「……貸してください」

「なんでだよ。こないだから何なんだ、そのムーブ」


 ここでも「譲らない」と目で訴えると、朔也くんは呆れた顔でカバンからジャージを取り出しました。


「……ほれ」

「ありがとうございます♪ あ、上だけで大丈夫です」

「なんて器用な忘れ方をするんだ……」

「不思議ですねー」


 とうとう、ゲットです!

 さあ、早く着替えましょうか♪


 ◇


(思ったより……ぶかぶかですね。そういえば、朔也くんは大きめを買ったと言っていたかも)


 いざ着てみると、大きいのはわかっていましたが、予想以上にぶかぶかです。手のひらが半分以上隠れることに加え、裾は膝の真ん中ぐらいまで来ています。袖の中で腕がすかすかと泳ぎ、頼りない浮遊感がありました。


 ……明らかに私のサイズではありません。

 誰が見ても、私のものではないとすぐにわかるくらいです。


(長いパンツで良かったです。ハーフだと隠れてしまったかもしれませんね、これは……)


 ハーフパンツは膝上数センチぐらいの長さです。この調子だと、すべて隠れてしまって、少し恥ずかしかったかもしれません。


 それにしても……。


 くんくん。


(朔也くんの匂いがします)


 袖に鼻先をうずめたまま、しばらく動けませんでした。

 汗の匂いなんて臭いはずなのに……なんだか安心します。

 なんなのでしょう……。

 言葉では言い表せないような……なんと言うか……いい。


「南雲さん……そのジャージ、東條くんのだよね?」

「!? き、木内さん。そうです、ジャージの上を忘れてしまったので……」


 トリップしそうになっていたところを、木内さんに現実へ引き戻してもらった形になりました。

 そして、すぐにバレるという……。


「よく、朔也くんのだとわかりましたね」

「そりゃ……ね。まず、大きさが男子のだと思うし、それなら東條くんしかいないかなって」

「はは……そりゃそうですよね」


 女子ならともかく、私が他の男子から借りるとは思いませんよね。

 自分でもそう思いますし。


 まあ、バレたとしても大した問題ではないので、良しとしましょう!


 ◇◇◇◇◇


 Side:東條 朔也


 ― 少し前、D 組 ―


 俺はジャージを受け取った瀬那が廊下の端まで歩いていくのを確認してから、自分の席へと戻った。

 その様子を俺の席から見ていた浩紀が、首を傾げる。


「ありゃ、南雲さんはどうしたんだ?」

「……最近のあいつのマイブームだな、あれは」

「マイブーム?」


 よくわかっていないといった様子で、浩紀が聞き返してくる。

 そりゃそうだろうよ。俺もよくわかっていないからな。

 ……瀬那もたまに変な行動を取るから困ったものだ。まあ、そういうところも嫌いじゃないんだが。


「……多分、お前の相方がジャージを借りたのを見て、羨ましくなったんだろう」

「……へっ?」


 俺は遠い目をして、無言で返すしかなかった。




 ― 南雲 瀬那:ジャージを貸してください 完 ―



 ただいま SS だと瀬那がアホになる現象が発生しています。お気をつけください。

 あと、公開順がどうなっているかわかりませんが、同時に書いている SS、ほとんど匂いを嗅いでいる……。

 私は匂いフェチではないのですけどー。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。