SS 東條 朔也:ヤ〇デレ瀬那ちゃん再び
前回、ヤンデレ具合が「大したこと無い」とご意見を多数いただいたので、犯罪にならない程度のヤンデレ具合の五割増しぐらいを目標にして書いてみます!
注意点としては SS 時空の話なので、本編とはあまり関係ありません。たぶん。きっと。おそらく。
※ この SS 内だけ、登場人物は皆、成人済みです。
俺は今、両手を手錠でベッドにつながれ、身動きもままならない状態で床に座っている。
ご丁寧に座布団は敷かれているが……。
何故、手錠をされているかって? それは相方である瀬那に手錠をされたからだ。
もちろんおもちゃの手錠なので、頑張れば外せるのだろうけど、瀬那の意図がわからないので甘んじてそのままにしていた。
犯人が瀬那なのは確実なので、身の安全は保証されているしな。
……たぶん。
コツ、コツ、コツ。
瀬那が部屋の外でウロウロしているのが足音でわかる。
普段、スリッパを履いているので、こんな足音は出ない。だから、わざと足音を立てているのがわかるけど……。
ガチャ。
しばらくその状態が続いたと思ったら、何事もなく部屋に入って……。
「えっ!? どうしたんだ、その格好は!」
部屋に入ってきた瀬那はいつもと様子が違った。
どこに隠し持っていたのか知らないが、彼女は作り込まれたゴスロリファッションの姿だった。
頭には大きな黒レースのヘッドドレス、黒を基調としたドレス、フリルもフリフリで、彼女の身長と顔立ち、そして髪色が相まって、まるで飾られた高級な人形だ。
……だが、どうしても俺の視線を奪って離さないポイントがあった。
キュートな袖口からチラリと覗く、手首に巻かれた痛々しい純白の包帯。『可憐』と『病み』が奇跡的なアンバランスさで同居している。普段のほんわかした癒しオーラは微塵もなく、触れたら最後、魂ごと持っていかれそうな危険な香りをバリバリに放っていた。
……それに、めっちゃ目が赤いんだけど!?
「ど、どうしたんだ、瀬那!?」
驚いて立ち上がろうとするが、無情にも手錠の鎖が鳴るだけだ。
俺の問いかけには一切応えず、ハイライトの消えた赤い瞳が、瞬きひとつせずに俺を射抜いている。目は合っているはずなのに、俺という存在の『もっと奥』を見透かされているような、得体の知れない危うさがあった。
「な、何か言って欲しいんだけど……?」
でも、彼女は一言も喋らない。
俺を見下ろし、何も喋らない。
じーっと、ただ単に俺を見ていた。
「……」
その時間が数分、いや、数十分経っただろう。
ガチャ。
踵を返した彼女は、一言もなく部屋を出て行った。
「お、おい、瀬那! これ外してくれよ!」
何度も問いかけたけど、俺の言葉に、何も返してこなかった。
それからしばらく放置はされていた。
ただ、怖いのはドアの前から動いている様子がないことだ。
つまり、扉から出た瀬那はその場でずっと、立ち止まっていることになる。
(マジで何がしたいんだ?)
ケツが痛くなり始めてきたが、どうしようもない。せめてベッドの上に座れたらもう少し、ケツが痛くならないはず。でもそれができないでいる。
やることも無いし、何もできないので瀬那が何を考えているのかを考察してみることにした。
先ほどの彼女は無表情で無感情なイメージだった。
それがどんな状態なのかわからないが、こんなことをしているんだ、仮に怒っているとしよう。
俺が知っている彼女が本気で怒ることと言えば、俺が俺自身のことを大切に扱っていないことと……女性関係だ。
最近は怪我も、怪我をするようなことはしていない。だから前者は違うだろう。
そうなると、後者の女性関係。
「うーん、とは言っても浮気なんてしていないし、学校で雫や愛莉たちと話すぐらいだよなー」
もちろん浮気に間違われるような行動はしていない。
女子と話すとしても、いつものメンツぐらいだし、ボディタッチはあったかもしれないが、それも過度なものはなかったはずだ。
ガチャ。
自分の行いを思い出していると、再び瀬那は入ってきた。
その瞳は先ほどと同じく、ハイライトがない赤い瞳。
「……」
「えっと……どうしたんだ?」
とこ、とこ、とこ……。
目を逸らさず俺をまっすぐに見つめたまま、近づいてくる。
そのまま目の前まで歩いてくると、目を逸らさずにそのまましゃがんだ。
服が服だ。そのまましゃがむと……見える。見えてしまっている!
「瀬那、その状態だと見える……ぞ?」
俺の忠告が聞こえているかどうかわからないが、返答がない。
さすがにこの異質な状態だ。本能をなんとか抑え込み、申し訳ない程度に顔を逸らすと――
ガシ!
――頭を掴まれて、強制的に真っ直ぐにさせられた。
指先の冷たさが、頬に触れた瞬間だけやけに鮮明だった。
「お、おい!」
こんな状態のまま、見るわけにはいかないので目をぎゅっと閉じた。
目をつぶっているのに、目の前の瀬那が俺を見ているとわかるほどの視線を感じた。
「せ、瀬那! いい加減、この状態がなんなのか教えてくれよ!」
「……」
俺の問いに対して、やっぱり全く返してこない。
そのまま、数分経った時だった。
急に瀬那の顔が近づいてきたと思うと――
かぷ。
――俺の左耳を噛んだ。
「痛っ!……えっ? 痛いっ!」
「……」
俺が以前、瀬那にしたような甘噛みではなく、ちゃんとした噛み方。
引きちぎるようなことは無いが、でも、ちゃんと噛んでいる。
耳たぶ、軟骨、ピアスの上から――耳という耳の部位すべてを、歯を立てて噛んでいる。たまに甘噛みもしたり、強弱をつけて、噛み続ける……。
彼女を引き剥がそうにも、両手が使えないので難しい。足で押し出すことはできるが、怪我をさせそうで、そんなことはもちろんできない。
「や……やめ……」
俺が嫌がっているのが嬉しいのか、彼女の口から「ふふっ」と艶美な吐息が漏れた。
いつもの柔らかく澄んだ声ではなく――背筋が粟立つほど、甘く、ねっとりとした声。
れろ。
「うわぁ!」
最後に耳を舐めたと思うと、満足したのか、部屋を出て行った。
「お、おい! 瀬那!……本当にどうしたんだ、あいつ」
心臓がバクバクと五月蝿い。またしばらく放置か……と思っていたら――
ガチャ。
すぐに瀬那は戻ってきた。
その右手には、裁縫で使うような大振りの鋏が握られている。
――チャキン、……ジャキッ、ジャキッ。
冷たい金属音を鳴らしながら、ゆっくりと近づいてくる。
部屋の空気が、一段階冷たくなった気がした。
「……」
「せ、瀬那さん……?」
――ジャキッ、ジャキッ、ジャキッ……。
刃が擦れ合う音が、やけに耳元で響く。無表情のままの彼女に、俺は引きつった声を出した。
「……」
「それをどうするのでしょうか……?」
――チャキン、チャキ、チャキ、チャキン……ジャキン!
「うわー!」
抵抗できない俺から、物理的にも社会的にも、着ていた服が容赦なく剥ぎ取られていった……。
◇◇◇◇◇
「って感じじゃない? 瀬那ならこの展開でしょ」
昼休み。
瀬那と愛莉、エレノア、雫といった、仲が良い女子グループが集まってプチ女子会をしていた。
話題に挙がったのは最近流行っているマンガのことだった。
タイトルは『病んだら監禁まっしぐら♪』。
幾つかのエピソードに分かれていて、どれも女性が彼氏を監禁する話。
話している愛莉は嬉々として、エレノアはワクワクした表情をして、雫は顔を手で隠していた。
主役として祭り上げられた瀬那は呆れた表情で聞いていた。
「愛莉さんは私をどう思っているのですか……朔也くんを監禁したいなんて思ったことないですって」
「本当に?」
「……まったく、ナイデスヨ。そ、それにしても目が朱いってどういうことですか?」
「え? だって何かに合いそうじゃない? 金髪に赤い瞳って」
そんなふざけた言い合いをして昼休みは過ぎていった。
帰り道。
いつも通り、瀬那は朔也と歩いて帰っている。
「愛莉さんには困ったものです」
「はは、流石にそれはねーよな。そもそも、素直に手錠をかけられたりしないって」
「それもそうですね」
昼休みの愛莉の話をかいつまんで朔也に話す瀬那。
朔也は瀬那の性格からそんなことはしないとわかっていたので、軽い感じで聞き流している。
「朔也くん……。朔也くんって監禁願望はあるのですか?」
「はぁ!? いやいや、ないよ!?」
「ソウデシタカ……」
カチャ。
彼女が後ろに回した手には、鈍い銀色をした金属が握られていた。
やみちー要望があったので書いてみたけど……
……なんか違うかも?
ちなみに、耳舐めの件は瀬那が口走ったということにしておきます!




