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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

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第169話 クリスマスパーティー①

 次の日は、俺の家でクリスマスパーティーだ。

 気心の知れたメンバーばかりなので、緊張するようなことはない。エレノアだけは、何か変なことを言い出さないか少し心配だが。


 昼食を兼ねて始めるので、昨日のうちにある程度の仕込みは済ませてある。

 ……そういえば、昨日のあの後は大変だった。


 不意打ちでキスをしたうえ、それが衆人環視の中だったものだから、瀬那はプンプン怒っていた。

 マンガなら『プンスコ、プンスコ』と擬音が出ていただろうな。


『キスは嫌じゃないですよ! でも、場所です! 恥ずかしいじゃないですか!……しかも、写真まで!』


 だけどな、俺は知っているんだ。

 俺が一応送ったその写真を、瀬那がちゃんと保存していることを。


 なんだかんだ、良い意味でも恥ずかしいという意味でも、初めてのクリスマスの記念にはなったんじゃなかろうか。

 ……今思い出すと、俺も恥ずかしかったりするが。


 そんな昨日のことを思い出しながら、俺はダイニングテーブルの上を見る。


 大皿の上には、一羽丸ごと焼き上げたターキーが鎮座していた。

 胴体も脚もそのままの姿は存在感抜群で、いかにもクリスマスらしい。


 オーブンから出してしばらく経っているが、香ばしい肉と香草の匂いがまだ部屋に残っている。


 せっかくのクリスマスなので、ターキーを焼いてみた。

 エレノアにも、日本でよくイメージされる『ザ・クリスマスパーティー』を味わってもらうためだ。それに、瀬那にとって初めてのクリスマスパーティーでもある。少しくらい、印象に残るインパクトがあってもいいだろう。


 ターキーの横には、『リッベ』と呼ばれる豚の骨付きばら肉のローストも置いてある。ノルウェー、特に東部などでは定番のクリスマス料理らしい。


 統一感があるのかと言われると微妙だが、エレノアもいるんだ。

 多国籍なメニューになっても、それはそれでパーティーらしくていいだろう。


 あとはフライドポテトも用意してある。

 瀬那はサラダを作り終えたあと、今度はピザを生地から作っていた。


 彼女は彼女で、ずいぶん手の込んだことをしているな。


「後は皆さんが来てから焼くだけですね」

「そうだな。問題は、これで足りるかどうかだな」

「大丈夫だと思いますよ。男子が三人いるとはいえ、女性陣はそこまで……食べない……はず?」

「やっぱり疑問になるよな」


 瀬那が食べる量はだいたい把握している。

 男子連中はともかく、他の女子がどれだけ食べるかだが……エレノアが思った以上に食べるんだよな。

 あれにはびっくりした。


「まあ、ケーキもあるし、これで足りないってことはないだろ。もし足りなくなったら、ポップコーンでも作るさ」

「そうですね」


 いつものケーキ屋で、クリスマスケーキも注文済み。

 和人が受け取ってから来る予定だ。


 そんなことを考えていると――。


 ピンポーン♪


 チャイムが鳴った。

 インターホンの映像を確認すると、画面いっぱいに浩紀の顔が映っている。


「……お帰りください」

『なんでよ!?』


 そう言いたくもなるさ。

 そのままオートロックを解除し、上がってくるよう伝えた。


 少しして、四人を迎えるために玄関へ向かう。

 ドアを開けようとしたところで、廊下から話し声が聞こえてきた。


「――おともだちなの?」

「そうよ。ベストフレンドと言ってもいいわ」

「そそ、親友、親友!」


 恵麻ちゃんの声だ。

 それに余計なことを言っているのは、エレノアと浩紀か。


 ガチャ。

 玄関先には、廊下の明かりを背に、見知った顔ぶれが並んでいた。


「あ、朔也おにーちゃん!」

「こんにちは、恵麻ちゃん。お二人も、こんにちは」


 ドアを開けると、予想通り、舘山親子と四人が話していた。


「こんにちは、朔也くん。お友達がきているわよ」

「ええ。友達と言えなくはないですね」

「ひでぇ!」


 浩紀の反応は無視して、俺は恵麻ちゃんのご両親へと視線を向ける。


「……申し訳ないですが、これから家でパーティーをするので、少しうるさくなるかもしれません」


 鉄筋コンクリートで、壁も薄くはないので大丈夫だと思うが、もしかしたら声が聞こえるかもしれない。

 一応、先に断っておいた方がいいだろう。


「気にしなくていいわよ。お昼だし、それに私たちもこれから出かけるから大丈夫。楽しんでね」

「ありがとうございます」


 軽く頭を下げておく。

 この間柄ならそこまで気にしないだろうとは思うが、そこは礼儀だ。


「いいなー! パーティーだ!」

「また今度、機会があったらうちでもやろうか。恵麻ちゃんはお出かけ?」


 恵麻ちゃんが両手を広げて、待ちきれないというように体を揺らす。


「うん♪ 水族館行くのー!」

「少し遅くなったけどね。……旦那が二日酔いでやられてなければ、もっと早く出られたんだけど」


 恵美さんの視線が、じわじわと隣に向き、ジロッと隣の旦那さんを睨んだ。


「……うっ」


 ……やらかしたんですね。

 ご愁傷様です。


「今から行っても、十分楽しめますよ」

「そうそう! 恵麻ちゃんも、ママとパパと一緒で楽しみだよね!」

「うん!」


 すかさず和人と愛莉が助け舟を出した。

 ナイスフォローだ!


「……そうね。じゃあ、行きましょう。みんなも楽しんでね」

「ありがとうございます!」


 三人を見送る。

 恵麻ちゃんのお父さん、今日中にちゃんと挽回するんですよ……。


 俺たちもいつまでも廊下にいるわけにはいかないので、そのまま四人をリビングへ通した。


「そうだ! これ、うちの両親と愛莉の両親から!」

「ありがとう。……なんだ?」


 リビングに入るなり、浩紀が半透明のビニール袋をこちらに差し出してきた。

 受け取ると、そこそこ重い。


「……いつも勉強教えてくれるからってさ。パーティーやるなら食べてって。 C⚪︎stco で買ったサーモンとシュリンプカクテル」

「 C⚪︎stco か。……浩紀も行ったことあるのか?」


 袋の中を確認しながら、傷まないようにそのままキッチンへ運ぶ。


 俺は C⚪︎stco みたいな会員制の大型倉庫店には行ったことがない。

 高校生だけでふらっと行くような場所でもないし、そもそも近場に店舗がないからだ。


「もち、あるぞ。めちゃくちゃ広くて、ほとんどの品がでかい! このサーモンだって、うちの家族だけじゃ一食で食べきれない時もある!」

「確かに大きいな。すげーよ」

「朔也は行ったことないのか?」

「それがないんだよ。……このために原付買おうかと思ったくらいだし」


 もちろん免許も必要になるが、普通二輪よりは気軽だと考えていた。


「そこまでして行きたいのかよ」

「ああ」

「朔也くん! 行くなら私も行きたいです!」


 リビングから瀬那の声が飛んできた。

 瀬那も行きたかったのか。


「よし。それなら今度、免許を――」

「朔ー。そもそも今の私らじゃ、会員になれないよー。十八歳以上じゃないと駄目だから」

「えっ!?……マジか……本当だ」


 スマホで確認して、俺は膝をつきそうになった。隣を見ると、瀬那も同じタイミングで肩をがくりと落としていた。

 ……無念。


「それに、二人じゃ食べきれなくて腐らせるんじゃないかな」

「……その可能性はあるな。俺たちはしばらく、イ〇アでこの気持ちを晴らすよ」

「……そうですね」


 俺も瀬那も、残念な気持ちを隠し切れない。


「それとは別に、近いうちに普通二輪の免許は取りたいけどな」

「……朔也くん、バイクは危ないですよ?」

「バイクに乗りたいっていうより、自動車の免許を取る時に少しでも楽にしたいだけなんだよ」

「あー、そういうことですか」


 普通自動車の免許を取れるようになるのは受験の年だ。

 その年に免許なんか取りに行くなよって話だが、もしかしたら取得する必要が出てくるかもしれない。


 そのことを考えたら、先にできることは済ませておきたい。


「……話が逸れたな。とりあえず、荷物置いてくつろいでろ」

「いや、お前が逸らしたんだろ!」

「サクヤ、それはボージャクブジンよ」


 これに関しては自覚があった。

 ……ごめん。


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