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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

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202/258

第167話 クリスマスイブ②

 Side:南雲 瀬那


「ふぅー、もう満足です」


 約一時間。

 小分けに取ってきては、ゆっくり食べるのを繰り返していました。

 クリスマスらしく、七面鳥の丸焼きまであったのには驚きましたが、美味しかったので良しとしましょう。もちろん、丸々一羽食べたのではなく、切り分けられたものです。


「思ったより、食べたな」

「昨日からセーブしてましたからね」

「まじかよ!?」

「冗談ですよ。品数は多いですが、量はそこまでですよ」


 どうしても目移りしてしまうため、少量をたくさん取ってきたので、朔也くんには多く見えたのかもしれませんね。

 いろんな味を楽しめたので、とても満足です。


「朔也くんは、同じ品を何度も取ってきていましたね」

「あぁ、俺ってこういう時、気に入ったものを何度も取るタイプらしいな」

「らしいなって、ご自分のことでしょう?」

「ビュッフェ自体、数えるくらいしか来たことないからな。特に何も考えずに取りに行ってたら、こんな感じだったんだよなー」


 こういうところは、私にはまだ読み切れない、朔也くんです。

 たまに変……面白い行動をとります。自分を実験台にしているようなことをするので、意図がわからないのですよね。

 ……そういうところも嫌いじゃないですが。


「あとはスイーツですが……取ってきてもいいのですか?」

「あー、少し待って……ちょうどいいな」

「?」


 すると、私からは死角になっていたところから店員さんが現れ、その手には……ケーキプレートがありました。

 一つはチョコレートをメインにしたもの。もう一つはフルーツをメインにしたものです。

 プレートには、チョコペンで「 Merry Christmas 」と書かれています。


「わぁ、可愛いですね」

「そうだな。どっちがいい? どっちも好きそうだったからさ、両方頼んだんだ。ささやかなクリスマスプレゼントってとこだ」

「……お互い、買わない約束でしたよね?」


 諸事情により、お互いにプレゼントは用意しないことにしていました。

 ただ、それには理由があります。

 初めてのクリスマスだからこそ、プレゼントとして用意するものを、あらかじめ二人で決めていたのです。


「買ってない。頼んだだけだ」

「それ、言い換えただけですよね?」

「そうとも言う」

「もう……ありがとうございます。それでしたら、フルーツの方にしますね」


 私の前に、フルーツを主役にしたタルトのプレートが置かれます。

 マスカット、イチゴ、キウイなど、たくさんの種類の果物が乗っています。

 タルトだけではなく、横には少し小さめのプディングがあり、これも可愛いです。


 朔也くんの前には、二層のチョコレートケーキ。

 下はしっかりとした生地のスポンジで、その上にムースが乗った直方体のケーキです。

 横にはプディングではなく、丸いアイスクリームがありますが……白ではありませんし、チョコレートの色でもありません。


「そちら、何のアイスクリームでしょうか?」

「えっと……紅茶みたいだ。初めて食べたな」

「美味しそうです……ね?」


 彼は意図を汲み取ってくれて、アイスを一口くれました。

 我ながら、あざとい声を出しましたね。でも、恋人相手なら普通です、普通。


「……もぐ……美味しいですね! 私も初めてです」

「ケーキが甘いから、中和というか、お口直しに用意したんだろうな。アイスはそこまで甘くないし」

「そうだと思います。――はい、朔也くん。こちらのプディングも美味しいですよ」

「はむ……うん、いいな、これ。卵の濃厚な味はあるけど、甘すぎず、ほろ苦いカラメルがいいアクセントだな」


 チョコレートケーキに比べれば、果物の甘さが中心とはいえ、こちらのタルトも甘いものです。

 それと一緒に食べるのにちょうどいい、甘さ控えめのプディングです。


 時間はまだあるので、ゆっくりとケーキを食べます。

 飲み物は好きなだけ飲めるので、私も朔也くんも、今はカプチーノを飲んでいます。


「ふぅー、まだ時間はあるけど、いい感じに落ち着いたな」

「はい」

「……なら、そろそろ出すか。せっかくなら、この後はつけて歩きたいしな」

「はい!」


 朔也くんは鞄から直方体の箱――蓋を開けば二つの指輪が並ぶ、小さなリングケースを取り出しました。

 並んでいるリングは、少しくすんだシルバーとピンクゴールドの二つです。


 そう。今年のクリスマスプレゼントを、お互いに『なし』にしたのはこれのためです。


「どうだ? デザイン通りにできているか?」

「……」


 私はリングをケースから取り出さず、ケースごと動かして確認します。

 だって、せっかくなら……ね。


(朔也くんの方のリング、片側の側面が内側に少しだけ凹んでいる?)


「さすがですね、朔也くん。デザイン通りです!」


 お守りのピンキーリングをいただいた時に、「お互いに意見を出して作ろう」と少しだけ話したことを思い出して、私はクリスマスプレゼントに指輪をねだりました。

 初めてのクリスマスプレゼントとはいえ、少しわがままを言った自覚はあります。


 朔也くんは一瞬、驚いた表情をしましたが、すぐに笑いかけてくれて、一緒にどういうものにするか意見を出し合いました。

 ……時折、魔改造しそうな勢いだったのを止めるのは大変でしたが。


「それは良かったけど、ケースから取り出さなくてもいいのか?」

「……」


 もう! こういうところは、まだ私の乙女心がわかっていないのですよね。

 いつもは呆れるほど察しがいいのに。


 私は右手を彼の前に差し出しました。

 これで、察してくれるといいのですが……。


 彼はその手を見たあと、少し考えてからケースに入っていた私のリングを取り出し、私の右手にそっと手を添えました。

 触れ合った二人の手が、わずかに震えているのがわかります。


 不思議と、会場のざわめきも、流れているBGMも、その瞬間だけは遠くに聞こえました。


 そのまま、ゆっくりと薬指にリングをはめてくれました。

 その瞬間、胸の中に温かいものが広がっていくのがわかります。

 薬指に触れる金属は少し冷たいのに、胸の奥だけは妙に熱くなっていきます。


 ……うん。

 言い表せないくらい……嬉しい。


「サイズは大丈夫そうか?」

「……はい。大丈夫です。それにしても、見事にデザイン通りです。いい感じですね」


 デザインで描いた通り、表面には彫り模様が刻まれています。

 私の方は『月』をモチーフにしたもので、朔也くんの方には『川』をモチーフにした彫り。

 ……我ながら独占欲が強いですが、後悔はしていません!


 あれ?……反対側の表面にも彫りがあります。

 先ほどはケースにはまっていたので見逃していましたが。


「朔也くん、こちらの彫りは何でしょうか?」


 鳥のような彫りがあります。

 ですが、少しだけ形が歪(いびつ)に見えます。


「実はな!」


 私は思わずリングを両手で持ち直し、彫りに顔を近づけました。


「ま、まさか、魔改造したのですか!?」

「失礼だな……魔改造ってほどではないぞ。せっかくはめたのに悪いが、貸してくれ」


 私は一度リングを朔也くんに渡しました。

 彼もケースから自分のリングを取り出し、二つのリングの側面を合わせます。

 パズルのピースをはめるように位置を合わせ、そのまま軽く動かすと、小さく「カチッ」と音がしました。


「ほら。……これでっと」


 二つのリングは、それぞれ単体でも成立するデザインになっていました。ですが側面の一部には、互いに噛み合うような浅い溝と出っ張りがあったようです。

 合わせると、私のリングが朔也くんのリングへ、ほんの少しだけ入り込むようになっています。

 先ほど凹んでいた部分は、ちょうど私のリングがはまるようになっていたようです。


 寄り添うように、わずかに重なる二つのリング。

 まるで、最初からそうなるために作られていたように。


 そして二つがその位置に収まった時、それぞれのリングに途中まで刻まれていた彫り模様が、一つにつながります。


 浮かび上がるのは、翼を並べて飛ぶ二羽の鳥――比翼をイメージしたのだと、すぐにわかりました。


 一つだけでは、片翼。

 二つ並んで初めて、一対の翼になる。


「普段はそれぞれ別々の指にはめてるけど、こうして重ね合わせた時だけ、一つの意味を持つように作ってみたんだ」

「鳥だとは思っていましたが、そういう意味があったのですね」

「魔改造ってほどではないだろ? まあ……俺一人じゃ、まだ飛べそうにないからな。瀬那に寄り添ってもらって、やっと飛べるって意味もある」

「……それは、お互い様ですよ。ありがとうございます。すごくいいと思います」


 私は嬉しいですが――朔也くんも案外、想いが重いですよね。

 私は心地いいですけどね、その重みは。


 私はリングをはめ直し、その指を眺めて……にやけてしまいます。

 もちろん、ひいおじいちゃんたちからプレゼントをもらったことはあります。

 ですが、クリスマスプレゼントは初めてです。


 大事にしたいですね。


「うふふ……」

「喜んでいただけたようで良かったよ」


 それは嬉しいに決まっています! 意図はどうであれ、ピンキーリングの方をいただいた時だって、嬉しかったのですから……あ。


「……そういえばですが、こちらのリングにも、このお守りリングみたいに何か……付与? みたいなことをしているのですか?」


 私は小声で朔也くんに問いかけます。

 ここまで来たら、このピンキーリングの仕掛けが、魔法や魔術に由来するものだと言い始めても驚きはしません。


 ……いや、驚きはします。

 ですが、私の瞳のこともあるので、そういったものがあると聞けば、納得できる気がします……たぶんですが。


「……そこに気づいたか。でも、こっちはそこまでだよ。不壊(ふえ)ってほどではないけど、壊れにくくしたような感じかな。……俺たち以外が壊そうとしたなら、相当な衝撃が必要になるはず」

「……朔也くん、隠さなくなってきましたね」

「もう、今更だろ。いつか、効果自体も見せるよ」

「それは、見てみたい気持ちがあります」


 予想はしていたので、衝撃というほどではありませんが……朔也くんの言葉を使うなら、『摩訶不思議』な何かがこの世にはあるのですね。


 ……非常に気になります。

 朔也くんは何も言わず、ただ悪戯っぽく笑って、私の頭をぽんと撫でました。


プロットの段階でわかっていたけど……お互いの気持ちが重いw


2026.08.21 15:00 ごろ、追加補足

コメントで「婚約!」って皆さんが反応しているから補足を……。

右手なのでただのペアリングです……ごめんなさい。 


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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