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学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

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第166話 クリスマスイブ①

 終業式の日は、さすがに授業はなく午前中で終わる。

 しかも、無駄に長い校長の話もない。この学園の校長は企業勤めの経験があるためか、無駄を省いているように感じた。


 もしかしたら、そこが見た目はキャリアウーマン風な朱門さんの経営方針とマッチしているのかもしれない。

 年下の理事長と校長の間に確執があるとは聞いたことがないからだ。


 二学期の終わりなので、もちろん成績表も渡される。

 だが、経費削減のためなのか、効率化のためなのかわからないが、アプリ経由だ。俺からしたら、わざわざ親に渡しに行かなくていいので助かる。


 成績についてだが、主要五科目は言うまでもなく問題ない。

 他の科目もテストは問題なかったので、そこそこいい成績だ。


「なかなかいい成績だったぜ! 一学期より良くなっているから、親も文句ないだろ」

「良かったな」

「これも朔也様とせなちー大明神様のおかげだよ!」


 浩紀が「せなちー」と言い始めたのは、ここ最近だ。

 もともとは相方の愛莉が付けたあだ名だが、当時はそこまで仲良くなかったからか、瀬那に対して悪ノリまではしていなかった。

 最近は金森も言い始めたので、それに引っ張られるように浩紀もたまに口にする。

 ただ、瀬那の前では言わないから、本人は知らないかもしれない。


「そういやさ、今日はイブだけど、お前らはどこかに行くのか?」

「俺はランチを予約しているから、一度帰ってから行くよ」

「へー、すげーな。カズエレは?」


 この「カズエレ」の方は、和人が何度文句を言っても浩紀は言い続けている。

 エレノアが気に入っているので、余計に調子に乗っているのだ。


「家でパーティーだよ。エレノアが世話になっているところでね」


 和人は軽くため息をついてから答えた。

 ちなみに、そのエレノアは雫たちと談笑しているので、ここにはいない。


「前から気になってたんだが、エレノアの婚約者宣言って、どこまで本当なんだ?」

「……婚約って、何をもってそうなるのかよくわかっていないけど、俺の親は知っているよ。肯定的な意味で……」


 親公認なら、ほぼ正式なものなのかもな。

 俺も定義はよく知らないが。


「あっちの親は?」

「それがよくわからないんだ。実はこっちに来られることになったらしくて、中三ぶりに今日会うんだよ。……緊張するよね」

「おぉ……マジか」

「どうなるかわからないけどさ……朔也と一緒に骨は拾ってやるよ。……いて!」


 不吉なことを言う浩紀を軽く叩いておく。

 ただ、この間聞いたノルウェーでのクリスマスイブの過ごし方を考えると、そこまで心配する必要もないような気はするが。


 ガララ。


「朔也くん、遅くなりました」

「いや、気にすんな。……じゃあ、俺たちは帰るよ。また明日な」

「ああ、また明日」

「またなー」


 そのまま俺たちは教室を後にした。


「何か森田さんがおかしかったですが、どうかしたのですか?」

「大したことではないよ。どうやら今日これから、エレノアの両親に会うらしい。それで緊張してるんだってさ」

「そういうことですか。それは緊張しますね。……私も朔也くんのご両親に会ってみたいですね」

「うぐっ!」


 先日、三者面談で義父さんが来た時にも「ご挨拶するべきですよね?」と迫ってきたわけだが、俺は断固拒否した。


 もちろん、瀬那を紹介したくないとか、会わせるのが恥ずかしいとかではない。

 ただ単に、どう考えても面倒事になる未来しか見えない。

 ……珍しく、瀬那が面倒事を起こす側としてな。


 単純に彼女宣言をするだけならまだいい。

 エレノアに感化されて婚約者宣言をするぐらいでも……いや、良くはないが、まだマシだろう。


 心配なのは、俺の境遇を知っている彼女なら、俺以上に辛辣なことを言いかねないことだ。

 それも、いい笑顔で。

 ……あれは怖い。


「まあ、いずれ……な」

「本当ですか?」


 ジト目で睨まれるが、できれば会わせたくはない。

 それは、瀬那に会わせたいと思えるような人たちではないからだ。


 詩織はともかく、義父さんは俺の家族の中ではまともな方だと思う。

 実際には踏み込んで話をしたことがないから、本当のところはわからないけど。


 ……一番わからないのは、あの母親と再婚したことなのだが、その理由は訊いていない。類は友を呼ぶとも言うし、不安しかない。


 廊下の向こうから、誰かの笑い声が微かに響いてきた。

 とりあえず誤魔化すように、つないだ手を少し強く握っておいた。


 ◇◇◇◇◇


 Side:南雲 瀬那


 家に帰ってきた私たちは、すぐに着替えて家を出ました。

 朔也くんが予約してくれた時間ぎりぎりだったので、少し早足です。


 今日のために前日から準備をしていたので、着替えるのも早かったです。

 アイボリーのロングコートに合うよう、くすみピンクのニットを中に着て、ベージュ系のフレアスカートを合わせています。

 あとは黒タイツにブラウンのショートブーツを履けば、及第点です。


 本当はもう少しオシャレをしたかったのですが、思ったより学校で時間を使ってしまい、時間が足りませんでした。

 少し残念に思いながら、白いマフラーを巻いて部屋を出ました。


「……いつもより気合い入ってるな。すごく可愛いと思うよ」

「あ、ありがとうございます」


 部屋を出ると、すでに準備を済ませていた朔也くんが私を見て言ってくれました。

 こういう時、するっと言えるのですよね、この人は。

 そのせいで予定していた言葉が全部吹き飛びました。それに、頬にじわりと熱が集まるのがわかります。


「朔也くんもかっこいいですよ」

「……寒くない格好してきただけだ」


 ふふ、少し恥ずかしがってますね。

 これでおあいこです!


 朔也くんは白のタートルネックに黒のパンツを履いています。

 上着はチャコールのチェスターコート。首元には少しくすんだシルバーのネックレスを着けています。

 大人っぽく見えて、いつも以上にかっこいいです……ずるいです!


 そのまま一緒に靴を履いて、玄関を出ました。

 今日行くところは、以前、金沢へ旅行した時に話していたビュッフェ形式のレストラン。

 今日と明日は、クリスマス仕様のメニューになっています。


 朔也くんの株主優待には、またお世話になってしまいますが……抗えません。

 なんて言ったって半額ですよ!


 電車に乗って数十分。

 いつもより都心まで出てきた私たちは、有名らしいホテルへと入りました。

 昨日まで、私たちはこのホテルが有名だとは知りませんでした。


 まあ、普通の高校生がホテルの有名無名なんて知るはずがないですよね。

 ……高校生から逸脱している朔也くんではないのですから!


「ん? どうした、瀬那?」

「いえ、お気になさらずに。ただ、楽しみだなって思いまして」


 少し気持ちが上がってしまったようです。

 こんなことを朔也くんに気づかれるとは、失敗です。


 予約しているので、案内まではスムーズでした。

 通されたのは二人用のテーブルですが、オープンではなく仕切りがある形です。こういうのを半個室と言うのでしょうか。


 さっそく荷物を置いて……。


「……行きましょうか、戦場へ!」

「瀬那、今日は何か変だぞ?」


 私の実家……と言うより、ひいおじいちゃんたちはクリスマスを祝いませんでした。

 年代を考えれば仕方ないのですが、少し残念でしたね。

 その代わりと言ってはなんですが、お正月は盛大でした……。


「人生で初めてのクリスマスイブを、恋人と過ごすのですよ。テンションが上がっちゃダメです……か?」

「いや、そんなことはない。言い方が悪かったな、ごめん。いつもよりテンションが高いから気になっただけで、楽しんでいるなら問題ないよ」

「それならいいですっ」


 朔也くんも納得してくれたことで、私たちは食事を取りに行こうと足を向けると――


「あ、瀬那。スイーツはあまり取らないでおいてな」

「? わかりました」


 ――理由はわかりませんが、朔也くんが何か企んでいることだけはわかりました。

 こういう顔をする時の朔也くんは、大抵ろくでもない……いえ、素敵なことを考えている時です。


 これもまた、楽しみにしておきましょう♪


婚約については、二人の合意があれば成立し得るものなので、カズエレがどこまで「正式」なのかは和人の返事次第です。

……たぶん。きっと。

特に伏線ではないので、聞き流しても大丈夫な補足でした。<(_ _)>

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