幕間 文化祭、イベントの裏側で
Side:梅沢 美津
私は文化祭を周りながらも、ここしばらく一つのことを考え続けていた。
東條を和人くんから離したい。
南雲さんにも、少し痛い目を見てほしい。
それは、前から思っていたことだ。
けれど最近は、その考えが妙に具体的な形を持つようになっていた。
『どうやって、東條……いや、南雲を陥れるか』
結局、文化祭は始まってしまったが、特に何も思いつかない。
(なんで、こんなことを考え始めたんだろう……?)
そう考えた瞬間、頭の奥がずきりと痛んだ。
(……違う。考え始めたのは私だ。和人くんのために、東條をどうにかしたいと思ったのは、私の意思のはずだ)
なのに、どうしてだろう。
最近は、その考えの行き先を、誰かに勝手に決められているような気がする。
(南雲さんを、どうにかしないと……)
そう思った瞬間、頭の奥に靄がかかったような痛みが走った。
そんなことを考えつつ、友達とぶらぶら文化祭を周っていた。
「あれ、東條と南雲さんじゃない? なんかトラブル?」
友達の一人が指をさした先には、見たくもない東條と南雲、そして来場者だと思われる女の子がいた。
どう考えても、いい雰囲気ではない。
しばらく観察していると、そのまま三人でどこかへ歩いていった。
これ以上見ていても仕方ない。そう思って、違うところへ向かおうとした――その時だった。
『弱みを見つけるのよ』
不意に、頭の奥で誰かの声がした気がして、一瞬立ち止まる。
その声は、まるで耳元で囁かれたようにはっきりしていた。
……弱み。
その言葉だけが、妙に胸に落ちた。
そうだ。東條を和人くんから離すなら、ただ悪口を言うだけでは駄目だ。
誰が聞いても納得するような、あいつの弱みが必要なのだ。
「みっちゃん? どうしたの?」
友達の声が聞こえた。
けれど私は、返事をしなかった。
今なら、何かが見つかる気がした。
◇
「良いことを聞いた!」
私はテンションが高くなってしまい、小躍りしそうだった。
あの東條がいじめられていたなんて良い情報。
あのピアスも見栄を張るための物なんて――ちょうどいい。
これをどうにか利用できないか。
できれば、これで和人くんから離す方向に持っていけないものか。
「あれ?」
視線の先にいたのは、先ほど東條と南雲と話していた、中学時代の同級生らしい女の子だった。
「くそ……。鳳に会えたのは良いけど、まさかその彼女に言い負かされるなんて、癪よ」
せっかくだから……。
「ねぇ、あなた」
「なに……?」
「あの男のことで話があるの」
私は、たぶん同志になるであろう、その女の子に声をかけた。
その瞬間、頭の奥にかかっていた靄が、少しだけ濃くなった。
けれど、不思議と嫌な感じはしない。
文化祭の楽しそうな喧騒が、なぜだかとても遠くに聞こえた。




