↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

145/280

第120話 文化祭:図書委員の仕事と頼み事

 文化祭は各クラスの他に、部活動でも出し物をするところがある。

 わかりやすいのは文芸部だ。文芸部は、例年通り部誌を発行するらしい。中身は短編小説や詩、エッセイなど、部員それぞれの作品をまとめたものだ。界隈では有名らしい。


(そういえば、麻里ちゃんが言っていたかもしれない)


 学校見学会の時に、うちの学校の文芸部が有名だと聞いた記憶がある。

 そんな折、文芸部の手伝いとして、図書委員も準備に手を貸すのが伝統らしく、今日は委員会で集まっている。


「……ということで、例年通り各クラスの出し物の準備の合間に、文芸部の手伝いをすることになります。とは言っても、設営なり品物を並べたりぐらいなので、前々日ぐらいまでやることはほとんどありませんけどね」


 文芸部には人がそれなりにいるが、女子が大半だ。飾り付けや部誌の整理などは問題ないが、大きなものを移動するには手が足りない。そのため、関係が深い図書委員も手伝うことになる。


 自分のクラスの準備もあるが、すでに各クラスには委員会の手伝いがあると通達されているので、問題はないだろう。


 委員長の短い説明が終わり、当日の予定のプリントが配られた。


「念のため、時間とやることを確認しておいてください。主に男子は力仕事をしてもらうので」


 それぞれが和気あいあいと話しながらプリントを確認している。

 俺も、瀬那と雫、そして早瀬と内容を確認していたが、特に気になる点はないのですぐに興味がなくなった。


「そういや、瀬那のクラスは何をやるんだ?」

「言っていませんでしたっけ? ジェットコースターをやります」

「は?」

「えっ!?」


 図らずも、俺と雫の声が重なった。

 ジェットコースター……だと?


「……どこでやるんだよ」

「多目的室ですよ。調べてみたら、思ったより色んな学校でジェットコースターを自作しているらしいです」

「そうそう! それで、うちのクラスに設計とか工作が得意な奴がいて、そいつの図案と指示で作るんだよ! 水野さんたちも来てみてよ」


 乗るかどうかは置いておいて、ジャンルが違うとはいえ、同じもの作りが趣味な俺としては少し興味がある。


「――って顔していますね。朔也くん」

「勝手に俺の思考を読むなよ」

「ふふっ」


 瀬那は俺の趣味の方向がよくわかっているからな。単純にわかりやすかったのか。


「……本当に二人は付き合っているんだな」

「ええ、そうですよ。クラスでも言いましたが、嘘ではないですよ」

「そう……か……」


 うなだれる早瀬を見て、声をかける気にはなれなかった。


「……それでは、特に問題がなさそうですので、今日のミーティングはおわ――」


 バタン!


「りま……す?」


 俺たち全員が音のした方向……部屋の入り口を見ると、そこには生徒会長の柊先輩が立っていた。


「間に合ったー!」

「勢いよく扉を開けるのはやめなさい、柊さん」

「ごめんなさい、先生。それよりも……」


 謝罪半分に教室を見渡す、柊先輩。

 大げさと言えるような動作で視線をさまよわせて……こちらを見た。

 正確には俺の横……瀬那を。


「あっ! いたいた! 南のお姫様!」

「柊生徒会長……その呼び方は何度もやめてほしいと……」

「ごめん、ごめん、そうだったよ。南のお嬢様だったね。あ、ピアスくんもおひさ! 相変わらず番犬してる?」


 俺と瀬那は揃って顔を引きつらせる。


「その呼び名も大して変わらないですよ……」

「うわぁ……」


 生徒会長……柊先輩は、学校見学会以降、何かと俺たちに絡んでくる。

 何が楽しいかはわからないが、気に入られたようで、瀬那を『南のお姫様』と呼ぶようになった。さすがに瀬那も嫌だったらしく、『南のお嬢様』に変わった。

 俺を『ピアスくん』と呼ぶのはあだ名として理解できるが、瀬那をそう呼ぶのはどういう思考回路なのか、謎である。


「そんなにげんなりしないでよ……あ、図書委員長さん、もう終わった感じだよね?」

「相変わらず行動がおかしい……あぁ、とりあえず終わったよ」

「それならよかった! 南のお嬢様を借りていくけど良いよね?」

「俺に聞くな。南雲本人に訊け」


 委員長は対応するのが面倒になったのだろう。げんなりしながら瀬那に話を振っていた。

 それを聞いた生徒会長は、にっこりした顔で瀬那の方を向く。

 それと同時に、瀬那は俺の袖を掴み、不安そうな顔で俺を見た。


「生徒会長、瀬那に用があるなら番犬らしく、まずは俺を通してください」

「それは番犬ではなく、保護者か秘書ではないかい? まあ、いいわ。とりあえずボクについてきてよー」


 手招きしながら俺と瀬那を呼んで、部屋を出て行った。

 自由奔放という言葉は、この人のために作られたのではないかと思う。

 俺と瀬那は顔を見合わせて、一度ため息をついてから、ついていくのだった。


 ◇


 生徒会長についていくと、場所は文芸部の部室だった。

 変なところではなくて助かったが、ここはここで予想ができない。


「?」


 二人でまたしても顔を見合わせて、お互いに疑問符を浮かべた。

 文芸部の部室に、生徒会長に連れてこられる理由が俺には思いつかない。嫌な予感だけがじわじわと背中を這い上がってくる。


 生徒会長は部室のドアを躊躇なく開けた。


「連れて来たよー! 桔梗(ききょう)!」

「……本当に連れてきたの、あなた」


 中にいたのは、数人の女子と二人の男子だった。

 部室にいるぐらいだから、文芸部員なのだろうな。


「あ、東條くん……」

「?」


 俺の名を呼ぶ女子がいたが、誰だ?

 マジで思い出せない。頼むから、圧をかけないでください、瀬那さん。


「あの……その……前は、本当にごめんなさい」


 女子は小さく頭を下げた。

 その言葉で、ようやく思い出す。


「あー……野外学習の時の」

「はい。あの時、私がちゃんと言えていれば、東條くんが疑われることもなかったのに……」


 彼女は申し訳なさそうに目を伏せた。


「別にいいよ。あの状況なら怖かっただろうしな」

「でも……」

「もう終わった話だ。それに、最終的には俺の無実も証明できた。だから気にするな」


 そう言うと、彼女は少しだけ泣きそうな顔をした。

 ……いや、そこでそんな顔をされると、逆にこっちが困るんだが。


「東條くんって、やっぱり……」

「やっぱり?」

「い、いえ。何でもありません」


 彼女は慌てたように首を振った。

 横を見ると、瀬那がじっとこちらを見ている。

 瀬那の視線には、温度がない。……怒っているわけではないはずだが、これは早めに説明した方が良さそうだ。


「鷹司(たかつかさ)さんは文芸部だったのですね」

「はい、昔から小説が好きだったので」


 鷹司……あー、ランキングでベスト十位までに入っている子か。


「よくわからないけど、もういい?」

「ご、ごめんなさいっ。割り込んでしまって……」


 鷹司は申し訳なさそうに頭を下げていた。


「いいよーいいよー。桔梗、そう言って出て行ったのだから、当たり前でしょ?」

「あなたね……二人もごめんなさいね。この馬鹿に無理矢理連れてこられて大変だったでしょう」

「はは……」

「馬鹿とは何よ、馬鹿とは! これでも生徒会長だぞ!」


 馬鹿と言われ、ブーブー文句を言う生徒会長。

 それを見た桔梗と呼ばれた先輩らしき女性が、生徒会長を一瞥して「はぁ……」と深くため息をついた後、再び俺たちを見た。


「初めまして。文芸部の副部長、二年の楠(くすのき)よ。今回はごめんなさいね」

「いえ、大丈夫です。それで、なぜ瀬那が呼ばれたのでしょうか?」

「菫……あなた、説明も何もしていないの?」

「もちろん!」


 自信満々にサムズアップしている生徒会長。やっぱりこの人、馬鹿だろ……。


「桐生くんがいないと本当に暴走するんだから……」

「そういえば、桐生副会長がいらっしゃいませんね。セットのイメージがあったので意外です」

「別の件で動いているから……桐生くんの一番の仕事は菫の手綱なのに……もう」

「同意見です」

「朔也くん……」


 あ、素直に口から出てしまった。

 生徒会長の傍若無人ぶりを止められるのは、桐生先輩だけなのは確かなので仕方ない。


「まあ、しょうがないわね。せっかく来てもらったのだから、お願いしてみましょうかしら」

「お願いですか?」

「大したことではないのだけど、南雲さんに文化祭の部誌の売り子をやってもらいたいの」

「えっ!?」


 瀬那に売り子を?……なぜ?


「失礼ですが、部誌の販売なら部員でやるべきではないでしょうか?」

「――そう言うわよね。理由は二つよ。一つ目は、売り子ができる部員が少ないの。クラスの出し物で劇をやったり、なぜか調理がその子しかできなかったり……あとは特進だから、当日別のことをやらないといけなかったりね……」

「すみません、東條くんに南雲さん。私ができたらよかったのだけど……」


 鷹司はまた頭を下げていた。この子、さっきから謝ってばかりだな。

 ……野外学習の件といい、根が真面目なのだろうな。


「綾音は本当はやりたかったらしいのだけどね。特進の方でデモンストレーションがあるらしくて、時間が取れないって言われたらしいわ」

「デモンストレーション……文化祭で?」

「えぇ。去年はなかったのだけどね……ちなみに、何をするかはわからないわ」


 赤口が何を企んでいるのかは気になるが、俺に関わってこなければそれでいい。

 ……頼むからフラグにならないでくれ。


「それで、代わりに私をですか?」

「そうそう! 理由の二つ目はね、図書委員の美人さんだし、うちの部にはいない方向の容姿だしで、良い客寄せになるかなって思って、ボクが推薦したんだ!」

「菫、言い方ってものがあるでしょうに……まあ、その通りだから否定できないのだけど」


 瀬那が目立つ容姿だから客寄せになるのはわかる。それに、俺と付き合い始めたとわかった後も、人気が衰えていないみたいだ。目当てでくる奴もいるかもしれない。

 ただ、言い方はどうかと思うが……。

 それよりも聞き逃せないことがある。


「生徒会長って文芸部なのですか!?」

「そうよ! 言っていなかったっけ?」

「いえ、聞いていませんよ。少し予想はしていましたが……マジか。似合わねぇ……」

「キミはキミではっきり言うわね……でもね、菫の作品は人気あるのよ。中学の時も出していたけど、取り合いになったぐらいなんだから」


 俺としては、今学期一番の驚愕の事実。

 中身がすごい特殊な内容なんじゃないか――脳裏に、宇宙人が攻めてきて最後はダンスを踊るシーン、サメが飛び回る中で主人公が天使になるシーンが、なぜか鮮明に浮かんだ。


「ちなみに純文学も人気だったわよ」

「……俺の知っている生徒会長は、実は記憶喪失だったりしますか?」

「私が知る限り無いわね。ちなみに一番売れたのは、日本で封印されていた魔王が復活して、陰陽師が倒す話だったわ」

「……それはなんか納得しますね。でも、鬼じゃなくて魔王なんだ……」

「さっきから、朔也くんは何の話をしているのですか……」


 楠先輩と、正直どうでも良い話をしていると、瀬那に呆れた声でツッコまれた。


「ピアスくんがボクのことをどう思っているか、よくわかったよ」

「理解していただいて、良かったです。たぶん、それを三倍ぐらい面倒な奴って思っています」


 生徒会長はしばらく俺を見て、それから口をへの字に曲げた。


「ぐぬぬ」


 マンガみたいな唸り方をする生徒会長を置いて、俺は瀬那に話しかける。


「で、どうするんだ? 売り子するのか?」

「正直、やりたいって気持ちにはならないですね」


 瀬那の返答は、かなりはっきりしていた。

 まあ、当然だろう。客寄せになるから売り子をしてくれ、なんて言われて喜ぶ奴はそういない。


「だよな。無理にやる必要はないと思うぞ」

「朔也くん……」


 俺がそう言うと、瀬那は少しだけ安心したようにこちらを見た。

 だが、その空気をぶち壊すように、生徒会長がにやりと笑う。


「ふっふっふ。そう言うと思っていたよ、南のお嬢様」

「……何ですか、その顔は」

「では質問を変えよう。ピアスくんと一緒に売り子ができるとしても、嫌かな?」


 ぴくり、と瀬那の肩が小さく揺れた。


「……朔也くんと?」

「そうそう。クラスの出し物だと、二人は別々でしょ? でも文芸部の売り子なら、図書委員の手伝いって名目で担当時間を合わせられるんだよね」

「菫……あなた、東條くんも巻き込むつもり?」

「まあね。というより、この二人は今やセットみたいなもんだしねー」


 楠先輩は否定できないのか、少しだけ苦い顔をした。

 瀬那とセットと思われるのは嫌ではないが、この生徒会長に言われるのは釈然としない。

 瀬那は俺の袖を掴んだまま、ちらりとこちらを見上げてくる。


「朔也くんは……一緒にいてくれるのですか?」

「俺がいていいならな。ただ、俺で客寄せになるかは甚だ疑問だが。逆に減る可能性の方が高いんじゃないかとは思う」

「そんなことは無いと思いますよ。でも、そうですか……」


 瀬那は少しだけ考えるように目を伏せた。

 そして、先ほどよりもずっと柔らかい声で答える。


「それなら、少しだけならお手伝いします」

「やったー! 交渉成立!」


 生徒会長が両手を上げて喜ぶ。

 その様子を見て、俺は嫌な予感を覚えた。


「……ちなみに、今の反応を見る限り、まだ何か隠してますよね」

「さすがピアスくん、鋭いね」

「やっぱりか」


 生徒会長は満面の笑みで、部室の奥に置かれた衣装ケースを指さした。


「売り子をするなら、雰囲気作りも大事でしょ?二人にぴったりのものがあるよ!」

「……衣装?」

「俺の分もあるのかよ」


 俺と瀬那の声が重なった。

 どうやら、ただの売り子では終わらせてくれないらしい。

 ……この生徒会長、最初から全部計算していたんじゃないか。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


もし「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ページ最下部にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして評価していただけると、毎日の執筆の大きなモチベーションになります!


ブックマークへの登録も、ぜひよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。