↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学年一の才女を拾ったら癒されました  作者: PPHiT
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

144/280

第119話 文化祭:D組の試作

 文化祭の準備が始まった。

 うちのクラスも放課後、時間がある人から少しずつ参加する形式だ。


 とりあえず、どんなものが作れるか試作から始めている。

 今、教室には俺の他に、龍真と数人の女子だけがいる。名前は知らないが、確か雫や斎藤たちと仲が良かった気がする。つまり、男子は二人。

 ……気まずい。龍真がいなかったら、何かしらの理由をつけて逃げていただろうと思う。


 浩紀は文化祭実行委員会に用事があり、和人や雫は部活でいない。

 ちなみに別のクラスだが、瀬那は今日はバイトなのですでに下校している。ただ、別れ際に「……そうですか、女の子が多いのですね」と言っていた時の、いつもの微笑みが何故か怖かった。


「あとは、固まったパーツ同士をくっつけたり、固まる前にデコレーションしたりして、丸カンとかヒートンっていう金具をつけて出来上がり……こんな感じかな」

「へー、結構簡単に作れるんだね」


 とりあえず、簡単な作り方だけを実演する。

 横で見ていた龍真や女子たちは、物珍しそうにそれを見ていた。


「市販の型を使うなら、こんなもん。自作の型まで作り出すと、もっと時間かかるかな」

「へー」

「朔也はさ、どこで作り方を習ったんだ?」

「うーん、基本はネットだな。あとは独学でトライ・アンド・エラーって感じだ」


 こういうのは、一度こだわり始めると終わらなくなる。どうやって効率化するかとか、キレイにくっつけるとか。……大事なことだ。


「すごいね。私ならまず道具を集める段階で挫折しそうだよ」

「うん、うん」

「今ならスターターキットみたいなのあるから、興味あれば買ってみれば?」

「へー、考えておくー」


 うん、これはやらないな。興味はあるけど、そこまでって感じだろうな。

 でも、そういう人向けがターゲットの店になるのだと俺は考えている。やってみたいが、準備までの敷居が高いので手が出せない、そんな人だ。

 あとは純粋に子供向けになるだろうな。


「この感じだと、固めるのに UV ライトはいくつか必要そうね」

「型もいくつも必要だよね。それは百均で売っているの?」

「レジン用のシリコンモールドなら百均でも買える。星型とか猫型もあるし、初心者でも扱いやすいと思う。特殊な形はネットで探さないと駄目かもだけど、そこまで高くないな」

「へー」


 女子の一人がスマホを取り出し、みんなで集まって調べているようだ。「こういうの可愛くない?」や「思ったより安いんだ」と喋っている。

 その中の一人が何かデザインを始めたが、作りたいものがあるのだろうか。


 必然的にあぶれた男子二人は取り残されていた。龍真もあの中には入りにいかないようだ。


「型……モールドって言ったっけ? さっき、作れるって言っていたけど、朔也も作ったことはあるの?」

「何回かだけ試しに作ってみたよ。ただ、思ったような形にはならなかったな」

「そうなのか、どんなやつ?」

「あぁ……これかな」


 俺はスマホを取り出し、自作したモールドと、それで作ったレジンアクセサリーの写真を龍真に見せた。

 その写真にはデフォルメされたウサギのオブジェが写っている。


「おお! 上手くできてるじゃん。俺からすると何が悪いのかわからないんだけど」

「写真だとわかりづらいけど、微妙に歪んでるんだよ」

「全然、わからん」

「なになにー見せてー」


 俺たちの会話が聞こえていたようで、女子たちが俺の周りに集まってきた。あまり、人だかりの中心にいるのは嫌なんだが、拒否することもできない。

 片手でピアスを触りながら、スマホを机の上の、みんなに見える位置へ置く。


「えーかわいい! なんでウサギなのかはわからないけど、ウケる!」

「こんな風にグラデーションもできるんだ! 思ったより色んなことできるんだね」


 龍真が女子の勢いに押されて、少し離れていた。

 おい! 裏切ったな……


 カシャ!


 不意に、写真が撮られる音がした。

 音の発生源を見ると、そこには浩紀がスマホを構えて立っていた。


「……なんで撮ったんだよ?」

「……南雲さんに送ろうと思いまして」

「なぜ!?」

「『衝撃! 東條朔也の浮気現場!』って」

「……マジ勘弁してくれ」


 瀬那の性格上、絶対に……ぜっっったいに、やきもち妬いて、不機嫌になる。

 浩紀は知らないかもしれないが、あの子は結構嫉妬深いんだからな。


「そうそう、あの南雲さんと付き合い始めたんだよね? いつからなの?」

「私も気になっていたんだよね!?」

「……なんで文化祭の話からそうなるんだよ」

「だって、こっちの方が気になるし」


 話題がアクセサリーから恋バナに移行してしまった。

 これはこれで、勘弁してほしい。


「で、いつからなの?」

「そんなに気になるか?」

「そりゃね。難攻不落とまで言われていた南雲さんが、夏休み明けでいきなり彼氏できてるんだもん、気にならないわけがないでしょ。しかも、ピアスまで開けているし……お揃い?」


 付き合い始めたのはアピールしているから良いとして、ピアスまで気づくのか。……そこまで派手なのは付けていなかったはず。


「お揃いではない。瀬那のはシンプルなものをつけることが多いしな」

「でも、お前が作ったやつだろ、あれ?」

「「「キャー!」」」


 黄色い声が一斉に上がり、俺は思わず眉間を押さえた。


「お前、マジで言わなくて良いことを」

「わりぃ、わりぃ」


 絶対に悪いと思っていない謝罪をされた。

 俺が作ったとはいえ、家に色んな種類のピアスがあるんだ。瀬那もわざわざ買おうとは思わないのだろう。


「ちなみに、どっちから告白したんだ?」

「お前もか龍真……」

「だって気になるしな」


 少し距離を取っていたはずなのに、いつの間にか戻ってきていた。


「もう良いだろう……」

「待って待って! まだ聞きたい! ここに居ないみんなだって、気になっているんだから。とりあえず、いつから付き合い始めたの?」

「……八月の上旬だよ。夏祭りがあった日」

「へー。そういえば、一学期に噂になったよね? 東條くんが南雲さんを襲ったって。あれが誤情報なのはわかっているけど、その頃には仲良かったの?」


 『東條が南雲さんに無理やりアレコレしちゃったんじゃないか疑惑』は、昼食を一緒に取る作戦が功を奏して、無事に誤解だと広まっている。

 この無駄に長いネーミングは誰が付けたのか……


「そうだよ。あの頃には仲良かったさ。そもそも、図書委員で同じ当番だったし、話す機会はたくさんあったしな」

「へー。それなら二人からしたら、いきなりって感じでもないんだね」


 たしかに『いきなり』ではないな。その頃にはすでに同居していたわけだし。

 これはここでは言えないけどな。


「それにしても、東條くんって思っていたよりも話せる……って言っていいのかな。普通に会話できるよね」

「……不愛想で申し訳ない」

「そういう意味じゃないよー。……正直、初対面の印象は悪かったから、どう話しかけて良いかはわからなかったけどね。前川くんたちや雫と話している姿は普通だったし、それに、南雲さんと付き合い始めてから、なんか変わったよね」


 浩紀や和人にも同じようなことを言われた気がする。

 会話をしたことがない女子からもそう感じるのなら、本当に変わったのだろうな。


「もし、そう感じるなら瀬那の影響だろうな」

「ふーん、そういうことをストレートに言える人だったんだ。本当に見る目変わるね。それと……なんかご馳走様って感じ?」

「ほんとそれだよ! いきなり惚気やがって! やれ、龍真!」

「なんで俺なんだよ……でも、良いよね。あんなに可愛い彼女できてさ」


 ……いや、お前はそれを言えなくないか?

 俺としては、お前たち三人の関係の方が気になるんだけど。


「人のことは良いとして、龍真はどうなんだよ? 九重とか二階堂先輩とか」

「由香と真紀ねぇ? うーん、よく言われるのだけど、そういうのじゃないんだよね」

「はぁ?」

「待て、龍真。それは俺もおかしいと思うぞ。どう見てもお前らって……え? マジなの?」

「まあ、良いじゃないか。俺たちは特殊なんだよ」


 俺も人間関係をとやかくは言えないけど、龍真たちの関係って何なんだよ……


「そうだ。兄貴がまた憤慨してたよ。『俺の評判を落としやがって』って怒ってた。話を聞く限り自業自得だけど……いい気味だ」


 最後の言葉に、何か闇を感じた。

 人の良さそうな龍真がそんな毒を吐くとは思いもしなかった。

 そんな、微妙に後味が悪い状態で今日の文化祭の準備は幕を閉じた。


 ちなみにいつも通り、バイト終わりの瀬那を迎えに行ったら、


「前川さんからこんな写真が送られてきたのですが?」


 と、負のオーラを纏った笑顔でスマホを見せてきた。そこには『朔也が女子に囲まれて、うきうきでウサギの写真を見せてる』というメッセージと一緒に、例の写真が添えられていた。


 『ウキウキ』では断じてしていないが、帰ったら久しぶりにパフェを作ることになりました。

 なお、パフェの上には、やたら豪華にホイップとフルーツを盛ることになった。

 ……謝罪の気持ちは、形にするのが大事らしい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。